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第一章
14:半年後
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翠の離宮に移ってから半年が過ぎた。結局辺境伯家からはあの招待状以降何の音沙汰もなかった。此方が返事を返す事もなく無視をした事で何かしら思うところがあったのか、関わりを持ちたくなくなったのか。それは一切わからない。
離宮での生活は王城での生活とは比べようもない程に豊かな生活だった。勿論、贅沢な生活と言う意味ではない。心落ち着ける豊かな生活と言う意味で。
この離宮には僕を害そうとする者も居ない。使用人が少ない分、皆が足りない部分を補い助け合う生活をしている。だからだろうか?恐らく団結力なら王宮の近衛騎士にも負けないぐらいだと言っても過言ではないだろう。
そして僕の予想した通り、王宮からの僕への予算金はほぼ届かなくなった。大方王妃手動でどこかの部署で横領しているのだろう。
「バカだなぁ…....バレないとでも本気で思ってるなら行政官は辞めるべきだよね」
まぁその辺りも何れ盛大に面に出して恥をかかせてやるつもりだから今は楽しませてやれば良い。
「王妃は今頃僕が生活に苦しんでいると想像してさぞ楽しそうにしてるだろうね。アニー」
「そうですね。ですけど実際はアルファルド様が手掛けている魔道具事業で王国の一年間の予算をゆうに超えてますから生活に苦しむなど有り得ない事です」
魔道具師シェダルの魔道具商会は魔道具師ハリスとの共同開発で鰻登りでその地位を確率させた。それはシェダルは元々お金儲けよりも魔道具の性能を重視し量よりも質を重んじる職人タイプだ。その為には過度な納期注文は受けず、逆に受けた注文は必ず最高の品質で守ると言う事で逆に顧客から信頼を得て商会の知名度にも繋がった。
僕達が創る特殊な魔道具は一般の魔道具より価格を高く設定している。けれどその品質の良さに皆が注文をしてくれるのだ。
逆に一般の平民が良く使う魔道具は安価に。使い勝手と性能が良く、それなのに一般の平民が買える価格帯となれば皆が購入してくれる。今では僕達が創った魔道具を持っていない平民は居ないのではないかと言われるぐらいだ。
そして一番重要なのがシェダルの商会は貴族と一切直接の取引はしないとしている。貴族家から注文の際は必ず別の商人か、商業ギルドを通す事をルールとしている。直接の取引になれば、必ず貴族と言う事を縦に無理難題を押し付けてくるのは目に見えている。それを阻止する為に商業ギルドにお願いをし、貴族からの注文の窓口になって貰ったのだ。
「いくら有名になったとしても小さな商会の名など王妃には興味がないのだろうね」
「ですがアルファルド様、もし王宮からの注文が入った場合はどうされるのです?」
「ん?勿論優遇はしないよ。順番を守れない顧客にはシェダルの商会は一切魔道具は売らない。それが我らの商会長の信条だからね」
ニッコリと笑みを浮かべてマリーを見る。
「....ですがそれで王宮が黙っていますでしょうか?」
「まぁ黙ってないだろうね。ならこの国から出ていけば良いだけだよ。魔道具を必要としているのはこの国だけじゃない。それに、そんな事になったら商業ギルドが王宮に対して黙っていないよ....流石に王妃と言えど商業ギルドを敵に回すのは愚かな事だ」
「.....アルファルド様はそこまでお考えで!」
「ふふふ、当然だよ。だからマリーは心配しなくても大丈夫だよ。魔道具師ハリスが僕だって事にも気がついてないしね」
シェダルの商会や商業ギルドに行く時には髪と目の色を変え変装をした上で更に外では認識阻害の魔法を自身に掛けて、魔道具師ハリスが第三王子アルファルドと同一人物だとは解らないようにしている。この術を見破れる者はこの王国内には居ないだろう。
「.....生活が安定してきたならそろそろ次の段階に移す頃かな」
「アルファルド様.....」
「ねぇ、マリー。今からでもマリーは僕から離れても構わないよ?ここから先は僕の復讐の為の舞台だ。僕達母子にずっと優しくしてくれた君達には幸せになって貰いたいと思ってるんだ」
この復讐をやり遂げられるかどうかは正直五分五分だろう。途中で何かしら問題が起こるかも知れない。自ら自分を危険に晒す必要はマリー達親子にはないのだ。
「.....アルファルド様.....マリーは母からアルファルド様を任された護衛兼侍女です。その任に就いた時から、私はアルファルド様をお守りする為にご一緒にいるのです。それは今後も変わりません」
口には出さずとも2度と聞くな、とマリーの声は僕に訴えかけていた。
「....そうか、うん....ありがとう....マリー」
「いいえ」
マリーの見せるその微笑みにマリーの決意を見て僕は小さく頷いた。
離宮での生活は王城での生活とは比べようもない程に豊かな生活だった。勿論、贅沢な生活と言う意味ではない。心落ち着ける豊かな生活と言う意味で。
この離宮には僕を害そうとする者も居ない。使用人が少ない分、皆が足りない部分を補い助け合う生活をしている。だからだろうか?恐らく団結力なら王宮の近衛騎士にも負けないぐらいだと言っても過言ではないだろう。
そして僕の予想した通り、王宮からの僕への予算金はほぼ届かなくなった。大方王妃手動でどこかの部署で横領しているのだろう。
「バカだなぁ…....バレないとでも本気で思ってるなら行政官は辞めるべきだよね」
まぁその辺りも何れ盛大に面に出して恥をかかせてやるつもりだから今は楽しませてやれば良い。
「王妃は今頃僕が生活に苦しんでいると想像してさぞ楽しそうにしてるだろうね。アニー」
「そうですね。ですけど実際はアルファルド様が手掛けている魔道具事業で王国の一年間の予算をゆうに超えてますから生活に苦しむなど有り得ない事です」
魔道具師シェダルの魔道具商会は魔道具師ハリスとの共同開発で鰻登りでその地位を確率させた。それはシェダルは元々お金儲けよりも魔道具の性能を重視し量よりも質を重んじる職人タイプだ。その為には過度な納期注文は受けず、逆に受けた注文は必ず最高の品質で守ると言う事で逆に顧客から信頼を得て商会の知名度にも繋がった。
僕達が創る特殊な魔道具は一般の魔道具より価格を高く設定している。けれどその品質の良さに皆が注文をしてくれるのだ。
逆に一般の平民が良く使う魔道具は安価に。使い勝手と性能が良く、それなのに一般の平民が買える価格帯となれば皆が購入してくれる。今では僕達が創った魔道具を持っていない平民は居ないのではないかと言われるぐらいだ。
そして一番重要なのがシェダルの商会は貴族と一切直接の取引はしないとしている。貴族家から注文の際は必ず別の商人か、商業ギルドを通す事をルールとしている。直接の取引になれば、必ず貴族と言う事を縦に無理難題を押し付けてくるのは目に見えている。それを阻止する為に商業ギルドにお願いをし、貴族からの注文の窓口になって貰ったのだ。
「いくら有名になったとしても小さな商会の名など王妃には興味がないのだろうね」
「ですがアルファルド様、もし王宮からの注文が入った場合はどうされるのです?」
「ん?勿論優遇はしないよ。順番を守れない顧客にはシェダルの商会は一切魔道具は売らない。それが我らの商会長の信条だからね」
ニッコリと笑みを浮かべてマリーを見る。
「....ですがそれで王宮が黙っていますでしょうか?」
「まぁ黙ってないだろうね。ならこの国から出ていけば良いだけだよ。魔道具を必要としているのはこの国だけじゃない。それに、そんな事になったら商業ギルドが王宮に対して黙っていないよ....流石に王妃と言えど商業ギルドを敵に回すのは愚かな事だ」
「.....アルファルド様はそこまでお考えで!」
「ふふふ、当然だよ。だからマリーは心配しなくても大丈夫だよ。魔道具師ハリスが僕だって事にも気がついてないしね」
シェダルの商会や商業ギルドに行く時には髪と目の色を変え変装をした上で更に外では認識阻害の魔法を自身に掛けて、魔道具師ハリスが第三王子アルファルドと同一人物だとは解らないようにしている。この術を見破れる者はこの王国内には居ないだろう。
「.....生活が安定してきたならそろそろ次の段階に移す頃かな」
「アルファルド様.....」
「ねぇ、マリー。今からでもマリーは僕から離れても構わないよ?ここから先は僕の復讐の為の舞台だ。僕達母子にずっと優しくしてくれた君達には幸せになって貰いたいと思ってるんだ」
この復讐をやり遂げられるかどうかは正直五分五分だろう。途中で何かしら問題が起こるかも知れない。自ら自分を危険に晒す必要はマリー達親子にはないのだ。
「.....アルファルド様.....マリーは母からアルファルド様を任された護衛兼侍女です。その任に就いた時から、私はアルファルド様をお守りする為にご一緒にいるのです。それは今後も変わりません」
口には出さずとも2度と聞くな、とマリーの声は僕に訴えかけていた。
「....そうか、うん....ありがとう....マリー」
「いいえ」
マリーの見せるその微笑みにマリーの決意を見て僕は小さく頷いた。
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