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第6話
叩きのめす1
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俺は上着の内側をあさって、いくつかの魔法陣をはずした。それをルシアンにジャラリと渡す。
「水と木な。一応、防御系。効果はドバーとかドーンって感じで立ち塞がるやつ。詳しくは陣を読み解いてくれ」
魔法は一時にいくつも扱えない。詠唱が必要ない俺たちでも、それは変わらない。注意を向け、魔力を注いでいる魔法しか作動させられないからだ。
その欠点を補えるのが魔法陣だ。魔力を集めつつ収斂させるタイプ(たとえば多人数で行使する大魔法)は別だが、必要な魔力も閉じ込めてあるものは、起動してやるだけで発動する。
俺たちは、それぞれ自分の得意な系統とは反対のもので名を売っている。俺は火だし、ルシアンは水と木だ。
防御はルシアンの自前の魔法でやってもらうことになるだろうが、魔法陣を隠れ蓑にすれば、俺たちの能力を明かさずにすむ。
俺も火系の魔法陣を拳にはめた鉄甲に仕込んだ。これで炎をまとわせて目くらまし代わりだ。他にも、風系をベルトのあたりに移動させておく。
「用意はいいか?」
「いつでもどうぞ」
緊張感の欠片もないやりとりの末に、俺たちは可及的すみやかに大地に降り立った。
地面に足が着く。と同時に、足元から光が立ちのぼった。砂の下に魔法陣が刻まれていたのだろう。それが発動したのだ。
即座に、俺のまわりを優しい風が包み込んだ。これはルシアンの守りの魔法だろう。
俺は何の心配もせずに、ジスカールの傍らに膝をついた。手を伸ばし、喉元に触れる。まだ、あたたかい。肌の張りも、死人のそれとは違う。それにもしやと思い、念入りにさぐると、弱々しいが脈が感じられた。
切り裂かれた服をめくってみれば、下には包帯が巻いてあった。もちろんこれは、奴らの温情なんかじゃない。死ぬ一歩手前の状態を保たせてあるだけだ。
囮が死んでいなければ、それも動かせない状態ならばよけいに、それは抱え込んだ者の足手まといになるからだ。
「生きてたの?」
「ああ。助かるかわからないけどな」
俺は立ち上がって、光の帯を見ながら聞いた。
「ところで、これは何をしてるんだ?」
「空気を抜いてるようだね。つまり、息ができなくなる予定だったみたい」
「くそったれが」
俺は思わず吐き捨てた。ふつり、と頭の中で何かが切れる音がする。一瞬、目の前が真っ白になり、連絡玉が届いた時から、腹の中でぐるぐるととぐろを巻いていたものが、とうとう解けて噴出してきた。
強烈な怒り。それが、体のすみずみまでいき渡る。
やっぱり、奴らにジスカールたちを生かすつもりなんてなかったのだ。そんなことをされれば、弱りきった体が耐えられるわけがないのだから。
ふざけやがって。俺を殺したいなら、直接やりにくればいいだろう。まわりくどいことして、人のもんに手ぇ出しやがって。
こんな、人を人とも思わねえような、罠仕掛けやがってっ。
奴ら全員、絶対這い蹲らせる。
俺は鉄甲の中の魔法陣を発動させた。両手に炎をまとわせ、魔法陣の外に出る。
なにやら詠唱が響き、狙われているみたいだが、俺はそれに、いっさい注意を払わなかった。防御はルシアンに任せてある。攻撃だけに集中すればいい。
俺は手を前に突き出し、炎の出力を上げた。火炎が勢いよく一直線に伸びた。前方を焼き払う。
というのは虚仮脅しで、これにそれほどの温度はない。まあ、触れたら火傷はするだろうが、その程度だ。
それに重ね合わせて、俺は土の魔法を放っていた。炎の触れた一帯の岩を、すべて砕くために。
ドドドドドドと地鳴りと共に連続音が響き、次々に岩が破裂していく。少し岩の温度を上げておくことも忘れない。熱で弾けた設定だ。
岩の中から、男たちが転げ出てきた。顔を覆ってのた打ち回っているのもいる。岩の礫に打たれたのだろう。
俺が魔法陣のまわりを一周したころには、あたり一面もうもうと砂埃が舞い、負傷した男たちが呻いて転がっていた。
どいつもぺリウィンクルの甲冑を身に着けている。正規軍が商隊襲って、護衛を拉致か。武王め、舐めたマネをしてくれたな。
「水と木な。一応、防御系。効果はドバーとかドーンって感じで立ち塞がるやつ。詳しくは陣を読み解いてくれ」
魔法は一時にいくつも扱えない。詠唱が必要ない俺たちでも、それは変わらない。注意を向け、魔力を注いでいる魔法しか作動させられないからだ。
その欠点を補えるのが魔法陣だ。魔力を集めつつ収斂させるタイプ(たとえば多人数で行使する大魔法)は別だが、必要な魔力も閉じ込めてあるものは、起動してやるだけで発動する。
俺たちは、それぞれ自分の得意な系統とは反対のもので名を売っている。俺は火だし、ルシアンは水と木だ。
防御はルシアンの自前の魔法でやってもらうことになるだろうが、魔法陣を隠れ蓑にすれば、俺たちの能力を明かさずにすむ。
俺も火系の魔法陣を拳にはめた鉄甲に仕込んだ。これで炎をまとわせて目くらまし代わりだ。他にも、風系をベルトのあたりに移動させておく。
「用意はいいか?」
「いつでもどうぞ」
緊張感の欠片もないやりとりの末に、俺たちは可及的すみやかに大地に降り立った。
地面に足が着く。と同時に、足元から光が立ちのぼった。砂の下に魔法陣が刻まれていたのだろう。それが発動したのだ。
即座に、俺のまわりを優しい風が包み込んだ。これはルシアンの守りの魔法だろう。
俺は何の心配もせずに、ジスカールの傍らに膝をついた。手を伸ばし、喉元に触れる。まだ、あたたかい。肌の張りも、死人のそれとは違う。それにもしやと思い、念入りにさぐると、弱々しいが脈が感じられた。
切り裂かれた服をめくってみれば、下には包帯が巻いてあった。もちろんこれは、奴らの温情なんかじゃない。死ぬ一歩手前の状態を保たせてあるだけだ。
囮が死んでいなければ、それも動かせない状態ならばよけいに、それは抱え込んだ者の足手まといになるからだ。
「生きてたの?」
「ああ。助かるかわからないけどな」
俺は立ち上がって、光の帯を見ながら聞いた。
「ところで、これは何をしてるんだ?」
「空気を抜いてるようだね。つまり、息ができなくなる予定だったみたい」
「くそったれが」
俺は思わず吐き捨てた。ふつり、と頭の中で何かが切れる音がする。一瞬、目の前が真っ白になり、連絡玉が届いた時から、腹の中でぐるぐるととぐろを巻いていたものが、とうとう解けて噴出してきた。
強烈な怒り。それが、体のすみずみまでいき渡る。
やっぱり、奴らにジスカールたちを生かすつもりなんてなかったのだ。そんなことをされれば、弱りきった体が耐えられるわけがないのだから。
ふざけやがって。俺を殺したいなら、直接やりにくればいいだろう。まわりくどいことして、人のもんに手ぇ出しやがって。
こんな、人を人とも思わねえような、罠仕掛けやがってっ。
奴ら全員、絶対這い蹲らせる。
俺は鉄甲の中の魔法陣を発動させた。両手に炎をまとわせ、魔法陣の外に出る。
なにやら詠唱が響き、狙われているみたいだが、俺はそれに、いっさい注意を払わなかった。防御はルシアンに任せてある。攻撃だけに集中すればいい。
俺は手を前に突き出し、炎の出力を上げた。火炎が勢いよく一直線に伸びた。前方を焼き払う。
というのは虚仮脅しで、これにそれほどの温度はない。まあ、触れたら火傷はするだろうが、その程度だ。
それに重ね合わせて、俺は土の魔法を放っていた。炎の触れた一帯の岩を、すべて砕くために。
ドドドドドドと地鳴りと共に連続音が響き、次々に岩が破裂していく。少し岩の温度を上げておくことも忘れない。熱で弾けた設定だ。
岩の中から、男たちが転げ出てきた。顔を覆ってのた打ち回っているのもいる。岩の礫に打たれたのだろう。
俺が魔法陣のまわりを一周したころには、あたり一面もうもうと砂埃が舞い、負傷した男たちが呻いて転がっていた。
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