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11-リビングデッド・ハート
124.少女、リンクする。
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その言葉は少女の琴線を乱暴に弾いた。爪弾かれた不協和音が記憶の小箱を共鳴させる。
――誰が産んでやったと思ってんのよ!
「っ、ちがう! 子供が親の所有物だなんてそんなこと絶対にない!」
「いいや物さ。親は絶対的な主君、逆らうことは許されぬ」
「そんなの嘘!」
ほぼ叫んでかぶりをふったニチカの瞳にじわりと涙がにじむ。
「嘘だ……」
そんな様子を気にもかけずに白魔は瞳を紫に輝かせながら語りだした。
「ハハハハハ! 今こそ我が白の国が世界を掌握する時! かつて私に屈辱を与えてくれた『赤の国』の末裔を途絶えさせねば!」
まさに傲慢そのもの発言にもニチカは顔を上げない。そちらをチラリとみた当主はフンと鼻を鳴らした。
「力量の差に戦意も失せたか。まぁそれなりには楽しめたぞ?」
まっすぐに構えた右手の中に青い光が宿る。
一本だけ形成された矢が放たれた。
「死ね」
「!」
ザシュッと言う音が響き少女の首筋から鮮血が吹き出る。
「う、ぁぁ……」
なんとか喉に突き刺さる事だけは回避したが切り裂かれた箇所からダクダクと血が出てくる。不思議と痛みはなかった。陶酔状態になり感覚がおかしくなっているのかもしれない。
(どうしたら……どうしたら!)
血を流しすぎたのか考えがまとまらない。
その時目の前に何かがトスッと落ちてきて雪に埋もれた。
拾い上げると僅かな雪明かりを反射して鈍く光る。胸元に下げていたはずの青い指輪だった。今の一撃でチェーンがちぎれ吹き飛んだらしい。
――その指輪、カットして性能を上げたと言っただろ、やろうとすれば俺とお前はかなり深い意識レベルでリンクできるんだ
(そうだ!)
一縷の望みをかけてそれを左の中指にすべらせる。祈るようにぎゅっと握り締めるとふわりと魔導風が発生した。
(師匠、師匠! オズワルド!)
だが呼びかけは届かない。何かに遮断されているかのように引っかかりを感じてしまう。その妨害をしているであろう白魔は冷めた目を向けた。
「何をしてるかと思えば。無駄だと言ったはずだ、もはやこの男の意識は消えかけている」
(お願い……反応して!)
少女の願いは届かず深々と降り積もる雪に吸い込まれていく。
無力な自分にあの暗い湖面の心象世界を思い出し胸のあたりがじぐじぐと痛む。
悲しかった。空しかった。
やはり自分には無理なのかと諦めそうになったその時だった
「見……っつけたぞおおお火のっ娘!! わらわを放置するとは何事じゃっ!!」
「!?」
可愛らしい声がすぐ間近で金切り声を上げる。驚いて視線を上げると空中に青い女の子が浮かんでいた。眉をつり上げている幼女は腰に手をあててぷんぷんと怒っている。瞳を潤ませてなぜか半泣きだ。
「あの流れは追いかけて来る流れじゃろうが! 放置プレイされたわらわはどーすればよいのだっ」
「る、ルゥリア様?」
「ひどいではないか! ひどいではないか!! わらわは、わらわはぁぁ……」
すっかり忘れてました。
とは言えないくらいの剣幕だ。
どうやらヘソを曲げた彼女は一言いうためにわざわざ追いかけてきたらしい。
ぐすっと涙を拭っていた水の精霊は場の惨状に気づいたのか雪原を見渡した。
「なんじゃー? そういえばさっきからマナたちがやけに騒がしかったの」
そこで少し離れたところに立つ男と目があったらしい。眉をひそめた精霊はその正体を一発で見抜いた。
「おぬしなんだか先ほどまでと雰囲気が違うの。その魂魄――もしや『白』か?」
「ハク?」
うむ。と頷いた彼女はふよふよと浮きながらその正体を明かした。
「精霊戦争時代この白の国を治めていた頂点じゃ。ここに住まう一族の始祖でわらわを捕らえていた張本人でもある」
「えっ!?」
そんな昔から代々の息子に乗り移って生き永らえて来たと言うのか。執念深いにもほどがある。
そう感じたのはルゥリアも同じだったのか半目で足を組みながら彼女は言った。
「ユーナにぼっこぼこにされたと言うのにまだ現世にしがみついておったかーしぶといのー」
呆れたような口調で言われても始祖は無表情だった。無言で手を構え氷の魔導を撃ち込んできた。
「っ!!」
だがそれらは全て着弾する寸前で青い光になってパッと散った。得意げに笑った水の精霊がチチチと指を振る。
「忘れたか? 水の元締めであるわらわに水属性は効かぬよ。さぁ皆おいで」
サァァァ……
彼女が優しく呼び寄せると辺りにただよっていた青いマナたちが一斉にこちらへと移動しだした。
だが始祖はそれでも抵抗しようと何かブツブツつぶやきだした。橙色の光がその手に宿る。
「むぅ、まだやるつもりか」
「あ、あのっ、まずいんです! あの身体ムリに魔法を使おうとすると負担がすごいらしくて」
「ふむ、どうやらそのようじゃの」
もはやオズワルドの身体は限界に近いように見えた。青ざめた顔は悲壮感がただよい、それでも爛々と光る紫の目は諦めてはいない。その口からまた新たな血がごふっと吐き出された。
「この男の命が惜しければそれ以上近寄るな!」
自害する勢いの始祖にルゥリアはハァっとため息をついた。チョイチョイとニチカを呼び寄せる。
「仕方なかろ。どれ娘、ニチカとか言ったか? 魔導球を貸してみぃ」
返事をする前に杖の先端に手をかざした精霊は意識を集中させる。
すぐに青い光がその手に宿りすぅっと魔導球に吸い込まれていった。
「おぬしは火属性じゃからのぅ、これでだいぶマシになったはず。あの水属性の男に呼びかけるのが容易くなったはずじゃ」
「あ、ありがとうございますっ」
「よい、その代わりあの『白』をどうにかせい。わらわもあヤツには莫大な借りがある。礼はあの亡霊を確実に仕留めてからじゃ」
それだけ言い残し水の精霊はふわっと『白』の方に寄っていく。
慌てた男は標的をそちらに変えた。だがそれもいつ気が変わるか分からない。
いつ、始祖の気まぐれで氷の矢が飛んできてグサリと刺さるかもしれない恐怖をなんとか押し殺しニチカは雪の上に膝立ちになった。
杖を戻して腰のベルトにつけると祈るように指輪を包み込む。そしてそっと目を閉ざした。途端にルゥリアと亡霊が衝突する音が遠ざかっていった。
しん……とした暗闇の中で、青い雫が一つ落ちる。
――ピチョン
落ちた箇所から波紋が広がる。
少女はゆっくりと意識を広げていった……
***
一面に広がるまっさらな世界を男は歩く。
鉛色の空から落ちてくる雪が肩に積もるが少しも冷たさは感じなかった。
それはそうかと鼻で笑う。
これはおそらく夢。過去の忌まわしい思い出したくもない記憶の再現。
立ち止まっていても仕方ないので足を動かす。
どこまで歩いても誰も居ない。
そこは孤独な白の世界だった。
やがて無心で歩いていた男の行く手に何かが現れた。
雪の中に埋もれるようにして華が咲いている。
それは透き通るような銀の髪を散らした一人の女だった。
仰向けになり両手を胸の上で組みまるで眠っているだけのように見える。
だが生気も何も感じられない、それがただの幻影であることを男は知っていた。
「リッカ」
かつての自分の拠りどころ、依存し合うことで互いを支えてきた相手。
何よりも愛しかった自分の映し鏡。
再度その名を呼ぶが反応はなかった。
青白い顔で横たわり貫かれた胸から赤い命を流し続けている。
やがてそこだけ赤い華が咲いたかのごとく白い雪は血で染まった。
寄り沿うでもなく触れるでもなく、男はただその死体を見下ろしていた。
「どうして俺を恨まなかった」
そこで初めて声にわずかな感情が滲んだ。
目元に浮かぶ色は後悔ではなく純粋な哀しみと疑問だった。
「俺にだけは『本当の自分』で居てくれるんじゃなかったのか」
返事はなかった。あるはずも無かった。
女の死体はいつの間にか雪に融けていた。
馬鹿馬鹿しい、人体が雪と同化するわけないのに
どこか冷静な頭がそう呟く。
やはりこれは夢なのだ。
全身の力を抜いた男は雪の中へうつぶせに倒れこむ。
白銀の髪に雪が降り積もる。
次第に自分と雪との境い目がわからなくなっていく。
もう身体を起こせないほど重く雪が圧し掛かっていた。
同化する
のみこまれていく
結局はここに還っていくしかないのだろう。
包み込まれるような雪のベールが降りそそぐ。
もう考えることすら億劫になっていた
深々
しんしん
…………。
ふと暖かいものが手を伸ばして来たような気がした。
柔らかい陽の光のように少しずつ手を伸ばしてくる何か。
それは男にとってひどく嫌悪すると共に焦がれて止まないものだった。
凍りついた心を融かされてしまいそうな、心の奥底まで照らし透かす春の陽光が近づいてくる。
そして無音だった世界にザクザクと無遠慮な音が響いた。
――誰が産んでやったと思ってんのよ!
「っ、ちがう! 子供が親の所有物だなんてそんなこと絶対にない!」
「いいや物さ。親は絶対的な主君、逆らうことは許されぬ」
「そんなの嘘!」
ほぼ叫んでかぶりをふったニチカの瞳にじわりと涙がにじむ。
「嘘だ……」
そんな様子を気にもかけずに白魔は瞳を紫に輝かせながら語りだした。
「ハハハハハ! 今こそ我が白の国が世界を掌握する時! かつて私に屈辱を与えてくれた『赤の国』の末裔を途絶えさせねば!」
まさに傲慢そのもの発言にもニチカは顔を上げない。そちらをチラリとみた当主はフンと鼻を鳴らした。
「力量の差に戦意も失せたか。まぁそれなりには楽しめたぞ?」
まっすぐに構えた右手の中に青い光が宿る。
一本だけ形成された矢が放たれた。
「死ね」
「!」
ザシュッと言う音が響き少女の首筋から鮮血が吹き出る。
「う、ぁぁ……」
なんとか喉に突き刺さる事だけは回避したが切り裂かれた箇所からダクダクと血が出てくる。不思議と痛みはなかった。陶酔状態になり感覚がおかしくなっているのかもしれない。
(どうしたら……どうしたら!)
血を流しすぎたのか考えがまとまらない。
その時目の前に何かがトスッと落ちてきて雪に埋もれた。
拾い上げると僅かな雪明かりを反射して鈍く光る。胸元に下げていたはずの青い指輪だった。今の一撃でチェーンがちぎれ吹き飛んだらしい。
――その指輪、カットして性能を上げたと言っただろ、やろうとすれば俺とお前はかなり深い意識レベルでリンクできるんだ
(そうだ!)
一縷の望みをかけてそれを左の中指にすべらせる。祈るようにぎゅっと握り締めるとふわりと魔導風が発生した。
(師匠、師匠! オズワルド!)
だが呼びかけは届かない。何かに遮断されているかのように引っかかりを感じてしまう。その妨害をしているであろう白魔は冷めた目を向けた。
「何をしてるかと思えば。無駄だと言ったはずだ、もはやこの男の意識は消えかけている」
(お願い……反応して!)
少女の願いは届かず深々と降り積もる雪に吸い込まれていく。
無力な自分にあの暗い湖面の心象世界を思い出し胸のあたりがじぐじぐと痛む。
悲しかった。空しかった。
やはり自分には無理なのかと諦めそうになったその時だった
「見……っつけたぞおおお火のっ娘!! わらわを放置するとは何事じゃっ!!」
「!?」
可愛らしい声がすぐ間近で金切り声を上げる。驚いて視線を上げると空中に青い女の子が浮かんでいた。眉をつり上げている幼女は腰に手をあててぷんぷんと怒っている。瞳を潤ませてなぜか半泣きだ。
「あの流れは追いかけて来る流れじゃろうが! 放置プレイされたわらわはどーすればよいのだっ」
「る、ルゥリア様?」
「ひどいではないか! ひどいではないか!! わらわは、わらわはぁぁ……」
すっかり忘れてました。
とは言えないくらいの剣幕だ。
どうやらヘソを曲げた彼女は一言いうためにわざわざ追いかけてきたらしい。
ぐすっと涙を拭っていた水の精霊は場の惨状に気づいたのか雪原を見渡した。
「なんじゃー? そういえばさっきからマナたちがやけに騒がしかったの」
そこで少し離れたところに立つ男と目があったらしい。眉をひそめた精霊はその正体を一発で見抜いた。
「おぬしなんだか先ほどまでと雰囲気が違うの。その魂魄――もしや『白』か?」
「ハク?」
うむ。と頷いた彼女はふよふよと浮きながらその正体を明かした。
「精霊戦争時代この白の国を治めていた頂点じゃ。ここに住まう一族の始祖でわらわを捕らえていた張本人でもある」
「えっ!?」
そんな昔から代々の息子に乗り移って生き永らえて来たと言うのか。執念深いにもほどがある。
そう感じたのはルゥリアも同じだったのか半目で足を組みながら彼女は言った。
「ユーナにぼっこぼこにされたと言うのにまだ現世にしがみついておったかーしぶといのー」
呆れたような口調で言われても始祖は無表情だった。無言で手を構え氷の魔導を撃ち込んできた。
「っ!!」
だがそれらは全て着弾する寸前で青い光になってパッと散った。得意げに笑った水の精霊がチチチと指を振る。
「忘れたか? 水の元締めであるわらわに水属性は効かぬよ。さぁ皆おいで」
サァァァ……
彼女が優しく呼び寄せると辺りにただよっていた青いマナたちが一斉にこちらへと移動しだした。
だが始祖はそれでも抵抗しようと何かブツブツつぶやきだした。橙色の光がその手に宿る。
「むぅ、まだやるつもりか」
「あ、あのっ、まずいんです! あの身体ムリに魔法を使おうとすると負担がすごいらしくて」
「ふむ、どうやらそのようじゃの」
もはやオズワルドの身体は限界に近いように見えた。青ざめた顔は悲壮感がただよい、それでも爛々と光る紫の目は諦めてはいない。その口からまた新たな血がごふっと吐き出された。
「この男の命が惜しければそれ以上近寄るな!」
自害する勢いの始祖にルゥリアはハァっとため息をついた。チョイチョイとニチカを呼び寄せる。
「仕方なかろ。どれ娘、ニチカとか言ったか? 魔導球を貸してみぃ」
返事をする前に杖の先端に手をかざした精霊は意識を集中させる。
すぐに青い光がその手に宿りすぅっと魔導球に吸い込まれていった。
「おぬしは火属性じゃからのぅ、これでだいぶマシになったはず。あの水属性の男に呼びかけるのが容易くなったはずじゃ」
「あ、ありがとうございますっ」
「よい、その代わりあの『白』をどうにかせい。わらわもあヤツには莫大な借りがある。礼はあの亡霊を確実に仕留めてからじゃ」
それだけ言い残し水の精霊はふわっと『白』の方に寄っていく。
慌てた男は標的をそちらに変えた。だがそれもいつ気が変わるか分からない。
いつ、始祖の気まぐれで氷の矢が飛んできてグサリと刺さるかもしれない恐怖をなんとか押し殺しニチカは雪の上に膝立ちになった。
杖を戻して腰のベルトにつけると祈るように指輪を包み込む。そしてそっと目を閉ざした。途端にルゥリアと亡霊が衝突する音が遠ざかっていった。
しん……とした暗闇の中で、青い雫が一つ落ちる。
――ピチョン
落ちた箇所から波紋が広がる。
少女はゆっくりと意識を広げていった……
***
一面に広がるまっさらな世界を男は歩く。
鉛色の空から落ちてくる雪が肩に積もるが少しも冷たさは感じなかった。
それはそうかと鼻で笑う。
これはおそらく夢。過去の忌まわしい思い出したくもない記憶の再現。
立ち止まっていても仕方ないので足を動かす。
どこまで歩いても誰も居ない。
そこは孤独な白の世界だった。
やがて無心で歩いていた男の行く手に何かが現れた。
雪の中に埋もれるようにして華が咲いている。
それは透き通るような銀の髪を散らした一人の女だった。
仰向けになり両手を胸の上で組みまるで眠っているだけのように見える。
だが生気も何も感じられない、それがただの幻影であることを男は知っていた。
「リッカ」
かつての自分の拠りどころ、依存し合うことで互いを支えてきた相手。
何よりも愛しかった自分の映し鏡。
再度その名を呼ぶが反応はなかった。
青白い顔で横たわり貫かれた胸から赤い命を流し続けている。
やがてそこだけ赤い華が咲いたかのごとく白い雪は血で染まった。
寄り沿うでもなく触れるでもなく、男はただその死体を見下ろしていた。
「どうして俺を恨まなかった」
そこで初めて声にわずかな感情が滲んだ。
目元に浮かぶ色は後悔ではなく純粋な哀しみと疑問だった。
「俺にだけは『本当の自分』で居てくれるんじゃなかったのか」
返事はなかった。あるはずも無かった。
女の死体はいつの間にか雪に融けていた。
馬鹿馬鹿しい、人体が雪と同化するわけないのに
どこか冷静な頭がそう呟く。
やはりこれは夢なのだ。
全身の力を抜いた男は雪の中へうつぶせに倒れこむ。
白銀の髪に雪が降り積もる。
次第に自分と雪との境い目がわからなくなっていく。
もう身体を起こせないほど重く雪が圧し掛かっていた。
同化する
のみこまれていく
結局はここに還っていくしかないのだろう。
包み込まれるような雪のベールが降りそそぐ。
もう考えることすら億劫になっていた
深々
しんしん
…………。
ふと暖かいものが手を伸ばして来たような気がした。
柔らかい陽の光のように少しずつ手を伸ばしてくる何か。
それは男にとってひどく嫌悪すると共に焦がれて止まないものだった。
凍りついた心を融かされてしまいそうな、心の奥底まで照らし透かす春の陽光が近づいてくる。
そして無音だった世界にザクザクと無遠慮な音が響いた。
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