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幕間2-カオス劇場・童話「茨姫」(後編)
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茨に取り囲まれた城は気が遠くなるほどの時間、眠り続けます。そんなある日、近くの国の王子が通りかかりました。
「なんだ? ずいぶんと年季の入った城だな」
王子は \ぎゃあああルカ様ぁぁぁあ!!/\こっち向いてぇぇ/\キャアアア/\素敵ぃぃ/\私にもキスしてぇぇぇ!/ 『ルカ様』の演技が見たいのなら今すぐその口を閉じろ。
……よし。王子は城の近くに住む農夫を捕まえるとこう尋ねました。
「少し尋ねてもいいか、あの城はどうして茨に覆われているんだ?」
「あの城にはネー、呪いを掛けられタそれはそれは綺麗なお姫様ガ眠ってるんだってサー、あーどっこらどっこら。ところでお兄サン、ちょっと良いクスリあるんだけド」
「ありがとう、それだけ聞けば十分だ」
「あァん、殺生なァ」
うさん臭さ爆発の農夫を捨て置き、ルカ王子は噂の姫の姿を一目見てみようと城へと足を運ぶことにしました。ふぁ……
「百年眠り続けるという姫に一目逢わせてくれ!」
……茨が絡みつく門扉の前に王子が立つと、スルスルとほどけるように茨は道を開けます。腰につけた剣を油断なく抜き去った彼は、……油断なく城の中を進んでいきました。やがて尖塔のてっぺんにたどり着くと、…………静かに横たわり眠り続ける姫を、見つけました。
「なんて美しい姫なんだ。流れる髪は夜の紗のよう、透き通る肌は白雪のよう、まだあどけなさを残しながらもなんと高貴な顔立ちか」
「……」
(おい! ルカの野郎マジでやるつもりじゃないだろうな!)
(舞台袖から出ちゃダメだって~)
「その瞳に私を映して欲しいと思うのは過ぎたる願いだろうか。いいや、たとえ神が引き留めようとも、俺は貴女が欲しい」
(ルカ、振りだからね! する振りだけだからね!?)
(さて、どうしましょうか。やるからには何事も本気で取り組んだ方が良いと私は思うのですが)
(!! グリ、ナレーション!! 早く展開――)
zzz
(ここに来てかぁぁー!)
(神(ナレーション)が放棄したという事は、ここから先は演者のアドリブということですよね、お姫様)
(ちょっ、待)
「貴女は誰より美しい。誓おう、真実の愛をここに」
「……っ」
「ちょっと待ったぁぁぁ!!」
zzz…… え、あ、なにごと。
「何者だ」
「え、えっと、それはこっちのセリフだ! そいつはオレ様が小さい頃から目をつけてたんだ!」
(何この展開!? みんな自由にやりすぎだって!)
んー? 何という事でしょう、悪の妖精ラプラプは百年間見守り続ける内にあきら姫に恋をしてしまったのです。
「ぶっ! 違うっ、オレはただ、そのっ、百年もかけた復讐をこんな形で邪魔されたくなかっただけだ!」
ちょうどその時です。カチリ、と時計の針が重なったような音が響き、百年の時が終わりを告げました。深い深い眠りからようやく目を覚ましましたあきら姫はゆっくりと身体を起こし口を開きます。
(何を言えって言うのよ!? 台本にないじゃないそんなのっ)
(主様、何でもいいです、舞台の流れを止めないようなセリフを)
(セリフ……セリフって言っても……。――考えろ、眠りから覚めたばかりの『あきら姫』はこの状況で何を思う?)
「、百年の復讐とは、どういうことですか?」
「え」
「知らぬうちに私があなたに何かしてしまったと言うのなら謝罪します。どうかわけを聞かせて頂けませんか。どんな悪事にも必ず理由がある、私はそう考えます」
……姫のまっすぐな問いかけに、ラプラプはポツリポツリと打ち明け始めました。姫が生まれた時に一人だけ仲間外れにされたこと、それに腹を立てて呪いをかけてしまったことを。
「なるほど、私の両親があなたにした仕打ちはわかりました、あなたのプライドを傷つけてしまったことは確かです。彼らに代わりこの場で謝罪いたしましょう」
「いや……オレも百年かけてようやく目が覚めた。無視されたからって呪い殺そうだなんてやりすぎだよな、しかもお前は関係ないのに八つ当たりだ」
「では百年の眠りで相殺ということで過去は水に流しましょう、その上で一つ提案します」
「?」
「私とお友達になりませんか」
「!」
「そちらの金髪の方も、妖精さんも、私にとってはこの場で初めてお会いする方です。私はまだあなた方の事を何も知らない、心の内に秘めている事もあるでしょう、ここからお互いに少しずつ歩み寄っていけたらと思うのです」
王子と妖精はしばらく考えた後、差し出された手を取りました。
「あきらと申します、これからよろしくお願いいたします」
そうして眠りから覚めた城を舞台として、王女は王子と妖精のイケメンサンドイッチで末永く幸せに暮らしましたとさ。めでたし めでたし
「ちょっと! 良い話っぽくまとめようとしたのに台無し!!」
パチパチパチ……
*終幕*
「ルカ」
「お疲れ様でした、いいアドリブだったと思いますよ。原作からはだいぶ逸れてしまいましたが、平和的なハッピーエンドになったと思いますし」
「あの時、どうしてほっぺにしたの?」
「口の方がよろしかったですか?」
「じゃなくてっ、だって―― っ!」
「主様に嫌われては叶いませんからね。『ここ』のお許しが出るまでは、頬や髪で我慢します」
「~~~っ」
「その衣装、よくお似合いですよ。では」
「……………………あんな仕草がサマになるんだから、ずるい、よなぁ」
*
「グリ兄ぃさ、ホントは起きてたでしょ」
「なんのはなし?」
「ボク知ってるんだからね、ねぇなんで?」
「……ぷー君の性格考えたら後先考えずに飛び出しただろうし、ルカなら口にはしないって分かってたから、少なくとも今は」
「それで、成り行きに任せたわけだ」
「あらかじめ決められたシナリオより、そっちのがおもしろいでしょ?」
*
「はぁぁ~……なぁ、ドクター」
「ゲコ?」
「やっぱオレ、どっか悪いのかな」
(いくら医者でも、恋の病は治せないゲロ)
『ドク殿~! ドク殿~!! 我が輩の演技もなかなかの物だったであろう!!!』
+++
【今回の配役表】
ナレーション:グリ
茨姫:あきら
王子:ルカ
良い妖精:ライム
悪い妖精:ラスプ
王様:フルアーマー
お后様:ドク先生
農夫:ペロ
「なんだ? ずいぶんと年季の入った城だな」
王子は \ぎゃあああルカ様ぁぁぁあ!!/\こっち向いてぇぇ/\キャアアア/\素敵ぃぃ/\私にもキスしてぇぇぇ!/ 『ルカ様』の演技が見たいのなら今すぐその口を閉じろ。
……よし。王子は城の近くに住む農夫を捕まえるとこう尋ねました。
「少し尋ねてもいいか、あの城はどうして茨に覆われているんだ?」
「あの城にはネー、呪いを掛けられタそれはそれは綺麗なお姫様ガ眠ってるんだってサー、あーどっこらどっこら。ところでお兄サン、ちょっと良いクスリあるんだけド」
「ありがとう、それだけ聞けば十分だ」
「あァん、殺生なァ」
うさん臭さ爆発の農夫を捨て置き、ルカ王子は噂の姫の姿を一目見てみようと城へと足を運ぶことにしました。ふぁ……
「百年眠り続けるという姫に一目逢わせてくれ!」
……茨が絡みつく門扉の前に王子が立つと、スルスルとほどけるように茨は道を開けます。腰につけた剣を油断なく抜き去った彼は、……油断なく城の中を進んでいきました。やがて尖塔のてっぺんにたどり着くと、…………静かに横たわり眠り続ける姫を、見つけました。
「なんて美しい姫なんだ。流れる髪は夜の紗のよう、透き通る肌は白雪のよう、まだあどけなさを残しながらもなんと高貴な顔立ちか」
「……」
(おい! ルカの野郎マジでやるつもりじゃないだろうな!)
(舞台袖から出ちゃダメだって~)
「その瞳に私を映して欲しいと思うのは過ぎたる願いだろうか。いいや、たとえ神が引き留めようとも、俺は貴女が欲しい」
(ルカ、振りだからね! する振りだけだからね!?)
(さて、どうしましょうか。やるからには何事も本気で取り組んだ方が良いと私は思うのですが)
(!! グリ、ナレーション!! 早く展開――)
zzz
(ここに来てかぁぁー!)
(神(ナレーション)が放棄したという事は、ここから先は演者のアドリブということですよね、お姫様)
(ちょっ、待)
「貴女は誰より美しい。誓おう、真実の愛をここに」
「……っ」
「ちょっと待ったぁぁぁ!!」
zzz…… え、あ、なにごと。
「何者だ」
「え、えっと、それはこっちのセリフだ! そいつはオレ様が小さい頃から目をつけてたんだ!」
(何この展開!? みんな自由にやりすぎだって!)
んー? 何という事でしょう、悪の妖精ラプラプは百年間見守り続ける内にあきら姫に恋をしてしまったのです。
「ぶっ! 違うっ、オレはただ、そのっ、百年もかけた復讐をこんな形で邪魔されたくなかっただけだ!」
ちょうどその時です。カチリ、と時計の針が重なったような音が響き、百年の時が終わりを告げました。深い深い眠りからようやく目を覚ましましたあきら姫はゆっくりと身体を起こし口を開きます。
(何を言えって言うのよ!? 台本にないじゃないそんなのっ)
(主様、何でもいいです、舞台の流れを止めないようなセリフを)
(セリフ……セリフって言っても……。――考えろ、眠りから覚めたばかりの『あきら姫』はこの状況で何を思う?)
「、百年の復讐とは、どういうことですか?」
「え」
「知らぬうちに私があなたに何かしてしまったと言うのなら謝罪します。どうかわけを聞かせて頂けませんか。どんな悪事にも必ず理由がある、私はそう考えます」
……姫のまっすぐな問いかけに、ラプラプはポツリポツリと打ち明け始めました。姫が生まれた時に一人だけ仲間外れにされたこと、それに腹を立てて呪いをかけてしまったことを。
「なるほど、私の両親があなたにした仕打ちはわかりました、あなたのプライドを傷つけてしまったことは確かです。彼らに代わりこの場で謝罪いたしましょう」
「いや……オレも百年かけてようやく目が覚めた。無視されたからって呪い殺そうだなんてやりすぎだよな、しかもお前は関係ないのに八つ当たりだ」
「では百年の眠りで相殺ということで過去は水に流しましょう、その上で一つ提案します」
「?」
「私とお友達になりませんか」
「!」
「そちらの金髪の方も、妖精さんも、私にとってはこの場で初めてお会いする方です。私はまだあなた方の事を何も知らない、心の内に秘めている事もあるでしょう、ここからお互いに少しずつ歩み寄っていけたらと思うのです」
王子と妖精はしばらく考えた後、差し出された手を取りました。
「あきらと申します、これからよろしくお願いいたします」
そうして眠りから覚めた城を舞台として、王女は王子と妖精のイケメンサンドイッチで末永く幸せに暮らしましたとさ。めでたし めでたし
「ちょっと! 良い話っぽくまとめようとしたのに台無し!!」
パチパチパチ……
*終幕*
「ルカ」
「お疲れ様でした、いいアドリブだったと思いますよ。原作からはだいぶ逸れてしまいましたが、平和的なハッピーエンドになったと思いますし」
「あの時、どうしてほっぺにしたの?」
「口の方がよろしかったですか?」
「じゃなくてっ、だって―― っ!」
「主様に嫌われては叶いませんからね。『ここ』のお許しが出るまでは、頬や髪で我慢します」
「~~~っ」
「その衣装、よくお似合いですよ。では」
「……………………あんな仕草がサマになるんだから、ずるい、よなぁ」
*
「グリ兄ぃさ、ホントは起きてたでしょ」
「なんのはなし?」
「ボク知ってるんだからね、ねぇなんで?」
「……ぷー君の性格考えたら後先考えずに飛び出しただろうし、ルカなら口にはしないって分かってたから、少なくとも今は」
「それで、成り行きに任せたわけだ」
「あらかじめ決められたシナリオより、そっちのがおもしろいでしょ?」
*
「はぁぁ~……なぁ、ドクター」
「ゲコ?」
「やっぱオレ、どっか悪いのかな」
(いくら医者でも、恋の病は治せないゲロ)
『ドク殿~! ドク殿~!! 我が輩の演技もなかなかの物だったであろう!!!』
+++
【今回の配役表】
ナレーション:グリ
茨姫:あきら
王子:ルカ
良い妖精:ライム
悪い妖精:ラスプ
王様:フルアーマー
お后様:ドク先生
農夫:ペロ
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