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49.行商人ペロ
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「にハハ、話が通じるコで良かっタ。門前払いされタらここまで来て無駄ボネになるところだったヨー」
結局、話くらいは聞いてみるかと判断を下した私は、スライムたちに跳ね橋を下ろすよう指示を出す。
号外を出して数時間も経たないうちにやって来るなんて、この人見かけによらず切れ者なのかもしれない。リカルドもそうだったけど、こういった新しい事態に対して即座に行動できる人は頭の回転が早いタイプが多い。
それに、行商人に友好的に接するのは悪い話じゃない。『あの新生国は商売にオープンだ』とウワサを広めてくれるなら宣伝になる。とは言え、悪い人じゃないともまだ言い切れないから慎重に対応しなきゃ。
そうこうしている内に、鎖で吊られた跳ね橋がゆっくりと降りてきた。警戒するこちらの様子などお構いなしに、行商人(?)は軽い足取りで橋を渡ってこちらへやってくる。最後の一歩をまるで子供のように両足揃えてポンと着地すると、おどけたように手のひらを顔の側でパッと広げて見せた。
「どもども、お招きアリガトデス」
「いいえ、有益な物は積極的に取り入れていきたいと思ってるので」
スライム達が不安そうに周りを取り囲む中、私はポケットの中でビー玉ぐらいの球をギュッと握りしめる。護衛はいないけど、いざと言うときはこれを……それにしてもこの人大きいなぁ、グリと同じくらいあるんじゃ?
威圧されそうになっていると、行商人は笑顔のまま手を差し出して握手を求めてきた。一瞬ためらったけどミニ魔導球を後ろ手で右に受け渡し、左手で握り返す。え、バレてる? それとも単に左利きなだけ?
「ペロだヨ。えっと、マオー様とか呼ばれてタ?」
「!」
握った手をブンブンと上下に揺さぶられながら、ドキッと鼓動が跳ねる。
ま、まずい。私が魔王なことはまだ非公開なんだ。スライム達にも呼び方を改めさせなきゃいけないというかその前にこの場をどうにか収めなきゃ。
「そ、そう! 私の名前マオって言うの!」
苦し紛れに言い放った言葉が関所に響き渡る。しばらく首をかしげていたペロと言うらしい行商人はポンと手を打ち合わせたあと、こちらを指さした。
「マオちゃん」
「いえす、私マオちゃん! ここの関所の責任者やってます!」
よし、なんとかごまかせた? 深くツッコまれない内に話題を変えなきゃ。
「それで、どんな商品を取り扱ってるの? 個人的にも買い取るし、良さそうな物だったら国王様に伝えてあげてもいいよ」
「よくゾ聞いてくれまシた!」
まるで頭に花でも咲いたんじゃないかってくらい雰囲気を明るくしたペロは、しゃがんでリュックを下ろしゴソゴソと漁りだした。
「僕も今朝の号外みたヨー。ハーツイーズはこれからヒトいっぱい来るよネ。そんな時やっぱり問題になるのハ食料?」
「それそれ、何はともあれご飯が大事なんだけど、何かいい種とかない? できれば成長が早くて丈夫な品種があると嬉しいんだけど」
「あるヨー、お客サン運がいいネ! はるか遠くの島国で仕入れてきタ、ぴたーり条件ノ合うとっても珍しい種が、こちラ!」
ズッ、と引きずりだされた『それ』と目が合い、私は瞬間凍結でもされかたのようにピタリを動きを止めた。
『……』
「……」
植物と目が合った。これは何かの比喩とかじゃなくて、マジに目がついている。
見た目だけなら茶色い大根?のような物なのだけど、足が二股に分かれていて手らしき物もついている。さらに言うと頭頂部には緑のふさふさした草が生えていて、先ほども述べた通り顔がついている。顔文字でいえば( ゜Д゜)に近い。
「『マンドラゴルァ』っていウ、お芋だヨー」
「芋!? これ芋なの!?」
『ゴルァァァ……』
「うぎゃあああ!! 喋ったあああ!!」
色々ツッコミどころは満載だけど、反射的に悲鳴を上げて二歩下がる。こわっ!こっわ!!
ビームでも出すんじゃないかとビクビクしていた私を見てペロは軽く笑う。そのまま膝でその謎物体をポキンと折ると断面図を見せてくれた。
さぞグロいだろうとパッと目をつぶった私は、おそるおそる目を開けて予想外の中身に拍子抜けする。
「あれ? 中は普通にお芋っぽい……」
「ふかして食べると甘いヨー」
「へぇ」
サツマイモに似てるってことは、あんまり栄養のない痩せた地でも簡単に育つのが期待できる?
スイートポテト、コロッケ、豚汁、天ぷらなんかが脳裏をよぎる中、気づけばマンドラゴルァの蔓の束を一ダース購入していた。
はっ、いつのまに!? でもこういうのはチャレンジしてみるのが大事だからね、うん。後で畑の隅を借りて植えてみよう。それと私の実験ファームにも何本か、土属性魔法で試してみたいことがあるんだよね。
その後も、ハーツイーズの地に適しそうな種類の種をいろいろと紹介してもらい、いくつか購入に至る。良い取引ができたと上機嫌のペロはリュックから何かを取り出してきた。
「毎度ありィ~! そうダ、オマケでこれもあげちゃウ。ジョウロとスコップのセット」
「あはは、可愛い。ありがとう」
「それとウィッチ商会の特製香油」
「わ、いい匂い!」
「それからリヒター王からノ書簡もドウゾ」
「え~、そこまで気を使われると困っちゃうな~」
「そウ? じゃあこれは要らないト」
ん? りひたーおう? しょかん?
「わああああ!!? 待って待って待って嘘! 要ります!!! 見せて!」
さらりと出された封筒にニワトリが首を絞められたような声が出てしまう。
だ、だって、この封蝋、書物で見たメルスランド国の正式な印じゃない!?
「どうしてこれをあなたが!? 本物!?」
結局、話くらいは聞いてみるかと判断を下した私は、スライムたちに跳ね橋を下ろすよう指示を出す。
号外を出して数時間も経たないうちにやって来るなんて、この人見かけによらず切れ者なのかもしれない。リカルドもそうだったけど、こういった新しい事態に対して即座に行動できる人は頭の回転が早いタイプが多い。
それに、行商人に友好的に接するのは悪い話じゃない。『あの新生国は商売にオープンだ』とウワサを広めてくれるなら宣伝になる。とは言え、悪い人じゃないともまだ言い切れないから慎重に対応しなきゃ。
そうこうしている内に、鎖で吊られた跳ね橋がゆっくりと降りてきた。警戒するこちらの様子などお構いなしに、行商人(?)は軽い足取りで橋を渡ってこちらへやってくる。最後の一歩をまるで子供のように両足揃えてポンと着地すると、おどけたように手のひらを顔の側でパッと広げて見せた。
「どもども、お招きアリガトデス」
「いいえ、有益な物は積極的に取り入れていきたいと思ってるので」
スライム達が不安そうに周りを取り囲む中、私はポケットの中でビー玉ぐらいの球をギュッと握りしめる。護衛はいないけど、いざと言うときはこれを……それにしてもこの人大きいなぁ、グリと同じくらいあるんじゃ?
威圧されそうになっていると、行商人は笑顔のまま手を差し出して握手を求めてきた。一瞬ためらったけどミニ魔導球を後ろ手で右に受け渡し、左手で握り返す。え、バレてる? それとも単に左利きなだけ?
「ペロだヨ。えっと、マオー様とか呼ばれてタ?」
「!」
握った手をブンブンと上下に揺さぶられながら、ドキッと鼓動が跳ねる。
ま、まずい。私が魔王なことはまだ非公開なんだ。スライム達にも呼び方を改めさせなきゃいけないというかその前にこの場をどうにか収めなきゃ。
「そ、そう! 私の名前マオって言うの!」
苦し紛れに言い放った言葉が関所に響き渡る。しばらく首をかしげていたペロと言うらしい行商人はポンと手を打ち合わせたあと、こちらを指さした。
「マオちゃん」
「いえす、私マオちゃん! ここの関所の責任者やってます!」
よし、なんとかごまかせた? 深くツッコまれない内に話題を変えなきゃ。
「それで、どんな商品を取り扱ってるの? 個人的にも買い取るし、良さそうな物だったら国王様に伝えてあげてもいいよ」
「よくゾ聞いてくれまシた!」
まるで頭に花でも咲いたんじゃないかってくらい雰囲気を明るくしたペロは、しゃがんでリュックを下ろしゴソゴソと漁りだした。
「僕も今朝の号外みたヨー。ハーツイーズはこれからヒトいっぱい来るよネ。そんな時やっぱり問題になるのハ食料?」
「それそれ、何はともあれご飯が大事なんだけど、何かいい種とかない? できれば成長が早くて丈夫な品種があると嬉しいんだけど」
「あるヨー、お客サン運がいいネ! はるか遠くの島国で仕入れてきタ、ぴたーり条件ノ合うとっても珍しい種が、こちラ!」
ズッ、と引きずりだされた『それ』と目が合い、私は瞬間凍結でもされかたのようにピタリを動きを止めた。
『……』
「……」
植物と目が合った。これは何かの比喩とかじゃなくて、マジに目がついている。
見た目だけなら茶色い大根?のような物なのだけど、足が二股に分かれていて手らしき物もついている。さらに言うと頭頂部には緑のふさふさした草が生えていて、先ほども述べた通り顔がついている。顔文字でいえば( ゜Д゜)に近い。
「『マンドラゴルァ』っていウ、お芋だヨー」
「芋!? これ芋なの!?」
『ゴルァァァ……』
「うぎゃあああ!! 喋ったあああ!!」
色々ツッコミどころは満載だけど、反射的に悲鳴を上げて二歩下がる。こわっ!こっわ!!
ビームでも出すんじゃないかとビクビクしていた私を見てペロは軽く笑う。そのまま膝でその謎物体をポキンと折ると断面図を見せてくれた。
さぞグロいだろうとパッと目をつぶった私は、おそるおそる目を開けて予想外の中身に拍子抜けする。
「あれ? 中は普通にお芋っぽい……」
「ふかして食べると甘いヨー」
「へぇ」
サツマイモに似てるってことは、あんまり栄養のない痩せた地でも簡単に育つのが期待できる?
スイートポテト、コロッケ、豚汁、天ぷらなんかが脳裏をよぎる中、気づけばマンドラゴルァの蔓の束を一ダース購入していた。
はっ、いつのまに!? でもこういうのはチャレンジしてみるのが大事だからね、うん。後で畑の隅を借りて植えてみよう。それと私の実験ファームにも何本か、土属性魔法で試してみたいことがあるんだよね。
その後も、ハーツイーズの地に適しそうな種類の種をいろいろと紹介してもらい、いくつか購入に至る。良い取引ができたと上機嫌のペロはリュックから何かを取り出してきた。
「毎度ありィ~! そうダ、オマケでこれもあげちゃウ。ジョウロとスコップのセット」
「あはは、可愛い。ありがとう」
「それとウィッチ商会の特製香油」
「わ、いい匂い!」
「それからリヒター王からノ書簡もドウゾ」
「え~、そこまで気を使われると困っちゃうな~」
「そウ? じゃあこれは要らないト」
ん? りひたーおう? しょかん?
「わああああ!!? 待って待って待って嘘! 要ります!!! 見せて!」
さらりと出された封筒にニワトリが首を絞められたような声が出てしまう。
だ、だって、この封蝋、書物で見たメルスランド国の正式な印じゃない!?
「どうしてこれをあなたが!? 本物!?」
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