召しませ我らが魔王様~魔王軍とか正直知らんけど死にたくないのでこの国を改革しようと思います!~

紗雪ロカ@失格聖女コミカライズ

文字の大きさ
58 / 216

49.行商人ペロ

しおりを挟む
「にハハ、話が通じるコで良かっタ。門前払いされタらここまで来て無駄ボネになるところだったヨー」

 結局、話くらいは聞いてみるかと判断を下した私は、スライムたちに跳ね橋を下ろすよう指示を出す。

 号外を出して数時間も経たないうちにやって来るなんて、この人見かけによらず切れ者なのかもしれない。リカルドもそうだったけど、こういった新しい事態に対して即座に行動できる人は頭の回転が早いタイプが多い。

 それに、行商人に友好的に接するのは悪い話じゃない。『あの新生国は商売にオープンだ』とウワサを広めてくれるなら宣伝になる。とは言え、悪い人じゃないともまだ言い切れないから慎重に対応しなきゃ。

 そうこうしている内に、鎖で吊られた跳ね橋がゆっくりと降りてきた。警戒するこちらの様子などお構いなしに、行商人(?)は軽い足取りで橋を渡ってこちらへやってくる。最後の一歩をまるで子供のように両足揃えてポンと着地すると、おどけたように手のひらを顔の側でパッと広げて見せた。

「どもども、お招きアリガトデス」
「いいえ、有益な物は積極的に取り入れていきたいと思ってるので」

 スライム達が不安そうに周りを取り囲む中、私はポケットの中でビー玉ぐらいの球をギュッと握りしめる。護衛はいないけど、いざと言うときはこれを……それにしてもこの人大きいなぁ、グリと同じくらいあるんじゃ?

 威圧されそうになっていると、行商人は笑顔のまま手を差し出して握手を求めてきた。一瞬ためらったけどミニ魔導球を後ろ手で右に受け渡し、左手で握り返す。え、バレてる? それとも単に左利きなだけ?

「ペロだヨ。えっと、マオー様とか呼ばれてタ?」
「!」

 握った手をブンブンと上下に揺さぶられながら、ドキッと鼓動が跳ねる。

 ま、まずい。私が魔王なことはまだ非公開なんだ。スライム達にも呼び方を改めさせなきゃいけないというかその前にこの場をどうにか収めなきゃ。

「そ、そう! 私の名前マオって言うの!」

 苦し紛れに言い放った言葉が関所に響き渡る。しばらく首をかしげていたペロと言うらしい行商人はポンと手を打ち合わせたあと、こちらを指さした。

「マオちゃん」
「いえす、私マオちゃん! ここの関所の責任者やってます!」

 よし、なんとかごまかせた? 深くツッコまれない内に話題を変えなきゃ。

「それで、どんな商品を取り扱ってるの? 個人的にも買い取るし、良さそうな物だったら国王様に伝えてあげてもいいよ」
「よくゾ聞いてくれまシた!」

 まるで頭に花でも咲いたんじゃないかってくらい雰囲気を明るくしたペロは、しゃがんでリュックを下ろしゴソゴソと漁りだした。

「僕も今朝の号外みたヨー。ハーツイーズはこれからヒトいっぱい来るよネ。そんな時やっぱり問題になるのハ食料?」
「それそれ、何はともあれご飯が大事なんだけど、何かいい種とかない? できれば成長が早くて丈夫な品種があると嬉しいんだけど」
「あるヨー、お客サン運がいいネ! はるか遠くの島国で仕入れてきタ、ぴたーり条件ノ合うとっても珍しい種が、こちラ!」

 ズッ、と引きずりだされた『それ』と目が合い、私は瞬間凍結でもされかたのようにピタリを動きを止めた。

『……』
「……」

 植物と目が合った。これは何かの比喩とかじゃなくて、マジに目がついている。

 見た目だけなら茶色い大根?のような物なのだけど、足が二股に分かれていて手らしき物もついている。さらに言うと頭頂部には緑のふさふさした草が生えていて、先ほども述べた通り顔がついている。顔文字でいえば( ゜Д゜)に近い。

「『マンドラゴルァ』っていウ、お芋だヨー」
「芋!? これ芋なの!?」
『ゴルァァァ……』
「うぎゃあああ!! 喋ったあああ!!」

 色々ツッコミどころは満載だけど、反射的に悲鳴を上げて二歩下がる。こわっ!こっわ!!

 ビームでも出すんじゃないかとビクビクしていた私を見てペロは軽く笑う。そのまま膝でその謎物体をポキンと折ると断面図を見せてくれた。

 さぞグロいだろうとパッと目をつぶった私は、おそるおそる目を開けて予想外の中身に拍子抜けする。

「あれ? 中は普通にお芋っぽい……」
「ふかして食べると甘いヨー」
「へぇ」

 サツマイモに似てるってことは、あんまり栄養のない痩せた地でも簡単に育つのが期待できる?

 スイートポテト、コロッケ、豚汁、天ぷらなんかが脳裏をよぎる中、気づけばマンドラゴルァの蔓の束を一ダース購入していた。

 はっ、いつのまに!? でもこういうのはチャレンジしてみるのが大事だからね、うん。後で畑の隅を借りて植えてみよう。それと私の実験ファームにも何本か、土属性魔法で試してみたいことがあるんだよね。


 その後も、ハーツイーズの地に適しそうな種類の種をいろいろと紹介してもらい、いくつか購入に至る。良い取引ができたと上機嫌のペロはリュックから何かを取り出してきた。

「毎度ありィ~! そうダ、オマケでこれもあげちゃウ。ジョウロとスコップのセット」
「あはは、可愛い。ありがとう」
「それとウィッチ商会の特製香油」
「わ、いい匂い!」
「それからリヒター王からノ書簡もドウゾ」
「え~、そこまで気を使われると困っちゃうな~」
「そウ? じゃあこれは要らないト」

 ん? りひたーおう? しょかん?

「わああああ!!? 待って待って待って嘘! 要ります!!! 見せて!」

 さらりと出された封筒にニワトリが首を絞められたような声が出てしまう。

 だ、だって、この封蝋、書物で見たメルスランド国の正式な印じゃない!?

「どうしてこれをあなたが!? 本物!?」
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

処理中です...