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第1章 呪われた村
15 エルフの少女マキナ1
しおりを挟む「私はいつかSSSランクの冒険者になるのが目標。強い相手との戦いは、そのための試練であり鍛錬」
ちょこんと正座したまま、マキナが宣言する。
ちなみに彼女はAランク上位だそうだ。
ジェイムズも同じくAランク上位で、他の二人がAランク中位なんだとか。
「早く強くなりたい。おじいちゃん──いえ、森の長老はすごく厳しい。人間界で成果を上げないと、絶対に帰還を認めてくれない」
「あなたにはあなたの事情があるんだね……」
ノエルが同情したようにつぶやく。
「切実」
正座のまま、マキナがうなずいた。
「それで修業か」
「お願いします」
上目遣いに俺を見上げるマキナ。
「でも、俺は魔法使いじゃなくて戦士なんだ」
「強ければ、割となんでもいい」
「意外とアバウトだな」
「ねえ、どんな修業をするつもりなの?」
ノエルがたずねた。
「ひたすら戦う」
と、マキナ。
「エルフの森ではそればっかりやってた。毎日模擬戦」
魔法使いの修業って、そういうものなんだ。
魔法書を研究したり、実験したり──そういうイメージだったんだが。
「せめて、あなたがヘルギガントを一瞬で倒したという技を見せてほしい」
「あー……あれは、そうそう出せないんだ」
消費ポイント50000だし。
「むむ……秘伝の技」
なんか、かなり誤解があるらしい。
「とにかく……せっかく来てくれて悪いんだけど、俺は他にやることもあるし。強い相手と修業したいんなら、ギルドの高ランク冒険者を当たるなりしてくれ。ごめん」
「……残念」
マキナがしょぼくれた。
うっ、ちょっと罪悪感。
「こちらこそ、突然押しかけてごめんなさい。謝罪」
ぺこり、と頭を下げたマキナは去っていった。
俺じゃ力になれなかったけど、いい修業相手が見つかるといいな。
彼女の後ろ姿に、そっと声をかける。
その後、俺は地道に村のゴミ拾いや、村の人たちのちょっとした手伝いなどを続けた。
一回一回の獲得ポイントは数百程度。
だけど重ねれば、意外と大きな数字になってくる。
夕方になり、異変が起きた。
「モンスターが出たぞー!」
村人の一人が走ってくる。
「……!」
俺は表情を引き締めた。
邪神の手下か、それとも野良モンスターか。
「いや、待て! 死んでるみたいだぞ!」
さらに別の村人が走ってきて叫んだ。
ん?
もしかして、魔導砲塔が撃退してくれたのかな。
村外れまで行ってみると巨大なサイが倒れていた。
全部で五体。
いずれも胴体に大穴が空いている。
やっぱり魔導砲塔が倒してくれたみたいだ。
頼りになる。
「やっぱり作って正解だったかな」
俺は小さく笑う。
「『リトルベフィモス』ですね」
ノエルが死体を見て言った。
「ときどき村を襲う邪神の手下です。凶暴性が高くて、出てくるたびに村の色々な場所を壊されていました。その修繕が大変で……」
「村に入る前に撃破できてよかった」
確認すると、ポイントが25000入っていた。
前回のヘルギガントが3000だったから、かなり多いな。
「あ、もしかして……魔物の数に応じて増えるのか?」
念じてみたけど、その辺の内訳は表示されなかった。
なんでもかんでも教えてくれるわけじゃないらしい。
じゃあ、推測するしかないか。
仮に倒した魔物の数だけポイントが増えるとする。
リトルベフィモス一体につき5000ポイント×五体で25000ポイント──うん、なんかそれっぽい数字だ。
まだデータが不十分だから、とりあえず今はこれくらいの検証しかできないな。
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