冒険者パーティから追放された俺、万物創生スキルをもらい、楽園でスローライフを送る

六志麻あさ

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第3章 俺たちの楽園

1 難攻不落

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 ボコッ……ボコッ……!

 土くれを噴き出すようにして、地面から無数の影が出現する。
 闇夜の中、月明かりに照らし出されたそれらは、骸骨兵士の群れだった。

 全部で五十体ほどだろうか。

「いく……ぞ……!」

 先頭に立つリーダー格が、軋んだ声を上げる。

「ジュデッカ村の……連中を全滅……させ……封印を……破る」

 それが彼らに与えられた、邪神の命令だ。

 村の外縁に巨大な砲塔が見えた。
 と、

「──!?」

 きらっと光ったかと思うと、放たれた光線が骸骨兵士を一体吹き飛ばす。

 さらに二発、三発。
 骸骨たちが次々と撃破されていく。

「魔導砲塔か……だが……」

 リーダー格が剣を振り上げた。

 その剣がボウッと魔力の輝きをまとう。
 彼だけは、他の兵士よりもワンランク上の力を持っていた。

「はあっ!」

 放った魔力刃が魔導砲塔の砲門を見事に切り裂いた。

 敵砲、沈黙。

 リーダー格は満足げにうなずき、ふたたび前進する。
 生き残った四十体ほどの部下もそれに続いた。

「侵入者発見。侵入者発見」

 ふいに、声がどこからともなく響く。

「なんだ……?」

 見回すと、夜空に溶けこむように黒い眼球が浮かんでいた。
 どうやら侵入者を監視するための魔導装置らしい。

「迎撃部隊に通報。迎撃部隊に通報」

 声とともに、前方からキラキラと輝く何かが近づいてくる。

「今度はなんだ──」

 リーダー格は剣を構え直した。

 現れたのは銀色に輝くゴーレムの集団だった。
 この村の防衛部隊だろうか。

「ゴーレムごときが!」

 リーダー格は先ほどの魔力剣を発動し、斬りかかった。
 鋼鉄をもバターのように切り裂く魔の刃が、先頭のゴーレムに叩きつけられる。

 パキィン……。

 乾いた音とともに砕け折れたのは……リーダー格の魔力剣だった。

「こ、これは……!?」

 リーダー格はあらためてゴーレムを見つめ、悟った。

 銀ではない。
 ゴーレムの体を構成する金属の正体は。

「まさか、神聖鋼オリハルコン──!?」

 神の世界の金属であり、あらゆる魔力を遮断する奇蹟の金属。
 このゴーレムたちはいずれもオリハルコンで作られているのだ。

 オリハルコンゴーレムたちが太い両腕を振り上げる。

「くっ、おのれ……」

 切り札の魔力剣すら通じない兵団に、骸骨剣士たちは抵抗の手立てがなかった──。



 数日後。

「ここがジュデッカ村か」

 ずしん、ずしん、と地響きを立てて進みながら、その魔獣はうなった。

 全長は二十メートルを超えているだろうか。
 全身が岩できた、巨大な魔獣──アークベフィモス。

「先日向かった骸骨兵士軍団はあえなく全滅したと言っていたな……ふん、ひ弱な連中よ」

 嘲笑をもらす。

「チンケな罠など、この俺が突破してくれよう」

 かつては瘴気に覆われていた『呪われた村』が、今では牧歌的とすらいえる光景だ。
 そこに住む人々の楽しげな雰囲気、平和な気配。

 いずれも魔獣であるアークベフィモスには虫唾が走るものだった。

「すべて叩き壊してやる」

 全身から噴き上がる破壊衝動のまま、彼は地響きを立てて進み出す。
 と──、

「あ、あああああああなた様はぁっ!?」

 突然、前方に巨大な影が出現する。

 黒いオーラに包まれた、人型の影。
 背から広がる十二枚の翼。
 そして神々しさと禍々しさが混じり合った、不可思議な気配。

「邪神様……!」
「ここで何をしている、アークベフィモス」

 重々しい声が響いた。

「この村に手出しをしてはならぬ」
「は、はい? ですが、ジュデッカ村を滅ぼせと、邪神様の最優先命令で──」
「去れ!」
「ひ、ひいっ。分かりましたぁっ」

 叱責を受け、アークベフィモスは慌てて逃げ出した。

 何がどうなっているかは分からないが、とにかく邪神の言葉には逆らえない。

 とにかく走る。
 地響きを立て、必死に走り、逃げる。
 と、

「──いや、おかしい」

 数キロ走ったところで、アークベフィモスは足を止めた。

「邪神様がここにいるはずがない」

 あまりの恐怖と畏怖に思考が止まっていたが、さすがに妙だと気づいた。

「まさか、幻影か」

 振り返ると、巨大な邪神の姿は数キロ離れた先からでも確認できた。

 圧倒的な威圧感は、やはり本物に思えた。
 だが、邪神が人間界まで出てこられるなら、そもそも村一つを躍起になって滅ぼす必要などない。

「偽物だ……偽物に決まってる」

 自分自身に言い聞かせ、近づく。

 とはいえ、その歩調はおっかなびっくりという感じだ。
 どうしても、『もし本物だったらどうしよう』という不安が消えない。

 仮に本物だとしたら、命に背いてこの場から去らないのは、それだけで誅殺されるだけの理由になる。

「に、にににに偽物だ……だまされんからな……」

 震えながら、アークベフィモスはさらに進む。
 やがて邪神の前までやって来た。

「なぜ戻ってきた」
「い、いえ、その……」

 やはり怖い──。
 そんな恐怖心が、彼の反応を鈍らせた。

 ヒュンッ……!

 高速で何かが飛来する音。
 邪神の体を突き抜け、何かが迫ってくる。

 ──いや、邪神はやはり幻影だったのだろう、その姿が煙のように消えた。

 そして飛んできたそれ──雷をまとった刃は、アークベフィモスを貫いた。

「が……はっ……!?」

 前方には尖塔にも似た砲塔がそびえている。

 邪神の幻影によって隠れていた砲塔が。
 最初から幻影をカモフラージュにして敵をおびき寄せ、砲塔で敵を仕留める──という仕組みだったようだ。

 今まで村を襲った邪神軍からは、こんな罠の報告はなかった。

 一体、いくつの防衛兵器を仕込んでいるのか。
 まさしく、難攻不落のジュデッカ村──。

 アークベフィモスはそんなことを考えながら、倒れた。
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