冒険者パーティから追放された俺、万物創生スキルをもらい、楽園でスローライフを送る

六志麻あさ

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第3章 俺たちの楽園

8 SSS冒険者の力

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 村に、何かが近づいている。
 強大なパワーを持つ何者かが。

「あれは──村の南側だね。来て、バルデ!」

 サーシャは上空に向かって呼びかけた。
 ほどなくして青い竜バルデが飛んでくる。

 彼女のクラス──竜騎士とは、竜神ヴィレーザに選ばれ、竜と魂レベルでの絆を結んだ存在だ。
 心の中で呼びかけるだけで乗騎である竜と意志疎通し、いつでも呼び出すことができた。

「私、先に行って様子を見てくるね」
「気を付けてくださいね、サーシャさん。あたしたちもすぐに行きます」

 と、魔法使いのマルティナが言った。

 うなずいて、サーシャは竜にまたがった。
 他のSSS冒険者たちも一緒に連れていきたいところだが、竜が乗せてくれるのは選ばれた竜騎士だけだ。

「いくよ、バルデ」

 彼女の声に応え、青竜は弾かれたように飛び出した。

 風を切り、亜音速で飛翔する。
 数分と経たずに、村はずれまで到着した。

「──あいつか」

 眼下には、四体のモンスターがいる。
 いずれも黄金の甲冑をまとい、身の丈を超える大剣をかまえた戦士型のモンスターだ。

 銀色に輝く自動歩兵──オリハルコンゴーレムが迎撃に出てくるが、彼らの剣があっさりと両断する。
 さらに魔導砲塔の迎撃をものともせずに進み、村全体を覆う二種の障壁も大剣でやすやすと切り裂いてしまう。

「……いつものモンスターより強そうだね」

 サーシャは表情を引き締めた。

 カイルの話では、村の防衛システムはSSランクまでのモンスターなら問題にしないほど強固だという。
 SSSランクモンスターも下位の者なら軽々と撃退できる。

 つまり、あの四体はそれ以上の脅威ということだ。

「これ以上は進ませない──バルデ!」

 サーシャは竜を急降下させた。
 その落下加速度も加え、必殺の一撃を放つ体勢へと移る。

「愛と正義の竜騎士、サーシャが天に代わって──って、もう射程距離に入ってた!? とりあえず『竜咆斬ヴィレーザソード』!」

 振り下ろした剣から光の刃が放たれた。

「っ!?」

 四体のうちの一体がそれを食らい、吹っ飛ぶ。
 だが、

「おいおい、不意打ちかよ」

 鎧に大きな亀裂が走っているものの、さしたるダメージも感じさせず、そいつは立ち上がった。

「硬い──」

 なおもサーシャは光刃を二度、三度と放った。

 が、剣士たちも大剣を構え、それを弾き飛ばす。
 防御だけでなく、パワーも一級品のようだ。

 ただ正面から技を撃つだけでは打ち破れない──。

「てごわいね。なかなか」

 サーシャは舌で己の唇を舐めた。

「だけど、そんな程度で私の愛と正義は阻めないっ」

 剣を手にポーズをつける。
 数日前から考えていた、新たな戦闘ポーズである。
『愛と正義の竜騎士』を自認する彼女にとって、戦いにおいては単なる勝利だけでなく見栄えも重要だった。

(今のポーズは決まった……うふふ、鏡の前で三百回くらい練習したからね。かっこいいぞ、私……っ!)

 興奮でゾクゾクした。
 と、

「サーシャさん!」

 マルティナたち三人がやって来た。

「ほう、強そうじゃねーか」

 ドノバンがどう猛に笑う。

「並のモンスターじゃなさそうですね」

 警戒心をあらわにするアルフレッド。

雷鳴剣士ライトニングブレイダー──ですね」

 マルティナがつぶやいた。

「邪神の眷属です。名前の通り雷属性の魔法を併用した剣を操る──ランクは最低でもSSS。上位の種族ならそれ以上の個体もいます」
「SSS以上が四体か」

 ドノバンがうなる。

「こちらも四人。まるで数を合わせたようですね」

 と、アルフレッド。

「案外、合わせてくれたのかもね。チーム戦といこっか」

 サーシャが爽やかに微笑み、剣を抜いた。

「SSS冒険者四人の連携なんて豪華じゃねーか」

 ドノバンがその隣に並び、大剣を構える。
 すでにフルフェイスの兜をかぶり、完全に戦闘態勢だ。

「では、後衛はあたしたちで。いけますか、アルフレッド?」
「みなさんの戦闘データはすべて私の頭に入っています。完璧にサポートしてみせますよ」

 眼鏡のブリッジを指でくいっと押し上げ、うなずくアルフレッド。
 SSSランク冒険者と、異形の剣士たちが対峙した。



「人間どもがゾロゾロと出てきやがったな」
「俺たちを舐めるなよ」
「俺たち雷鳴剣士の眷属は、パワーだけなら、あの最上位配下の『煉獄騎士れんごくきし』様に匹敵する」
「テメェら人間ごときが何人集まろうが敵じゃねぇ」

 四体の雷鳴剣士が吠える。

「へえ……じゃあ、その『人間ごとき』の力を見せてあげよっかな」

 サーシャが不敵に言いかえした。
 地面から数メートルの地点で竜をホバリングさせ、黒騎士に視線を向ける。

「私は右、ドノバンは左。いける?」
「誰に言っている……!」

 ドノバンが犬歯を剥き出して吠えた。

 巨体を生かしたパワーと、巨体に似合わぬスピード。
 それらを最大限に生かした突進力は、冒険者の中で最強の物理攻撃力を誇る。

「上等。それじゃ、いこっか」
「応!」

 目くばせと同時に、サーシャは竜に乗ったまま突き進む。
 ドノバンも重いフルプレートアーマーを着ているとは信じられないほどのスピードで地を駆ける。

「速い──!?」

 雷鳴剣士たちの、驚愕の声。
 それを置き去りに、サーシャもドノバンもさらに加速する。

「『シールドダウン』!」

 タイミングを合わせ、後衛のアルフレッドが呪文を唱えた。
 対象の防御力を一時的に三分の一に下げる弱体化魔法。

 今だ──。
 二人の前進軌道が交差し、鮮血が派手にしぶいた。

「がっ……!?」

 二体の雷鳴剣士が両断され、倒れ伏す。

「お、おのれっ……!」

 残り二体は跳び下がり、体勢を立て直そうとした。

「遅いですよ、『ホーリーバインド』!」

 アルフレッドの呪文が、その二体をまとめて拘束した。

「『マグナファイア』!」

 マルティナが最上級の火炎呪文を放つ。
 爆音とともに、残った二体も爆散した。

「愛と正義の大勝利、だねっ」

 サーシャはにっこり笑って剣を鞘に納めた。

「ちっ、もうちょっとやってくれると思ったのによ」

 ドノバンは不満げだ。

「いや、彼らの戦闘能力は侮れないレベルだったはずです」

 と、アルフレッド。

「私たちが一瞬で最大攻撃力を叩きこんだから、労せず撃破できましたが──長期戦になっていれば、展開は違っていたでしょう」

「確かに……ね」

 サーシャがつぶやいた。
 最初に仕掛けたとき、必殺の『竜咆斬ヴィレーザソード』は雷鳴剣士に通じなかった。

 あらためて、SSS冒険者たちの──仲間の頼もしさを感じる。

「パワーはともかく、スピードはそれほどでもなかったですからね。やられるまえにやる──お手本通り、という感じで戦えました」

 マルティナが微笑んだ。
 と、

「──ほう、人間どもの中にも骨のある者がいるな」

 まばゆい黄金の輝きとともに、前方に雷が落ちた。

「えっ……!?」

 新たな雷鳴剣士か──と身構えたサーシャの視界に、異形のシルエットが飛びこんでくる。

 うねる三つの首。
 山のような体躯たいく
 漆黒の鱗。
 皮膜状の翼。
 鋭い爪、牙。

 全長五十メートルはあろうかという、巨大な竜だ。

「こいつは……!」

 サーシャがうめいた。
 他の三人も息を飲む。

 こいつこそが──。
 村に近づいてくるすさまじいプレッシャーの主は、雷鳴剣士などではなかった。

 この竜が、放っていたものだったのだ。

「露払いもできんとは。雷鳴剣士どもも役に立たんな」

 告げた竜の声は突風を伴い、周囲に吹き荒れた。
 地面が爆裂するように吹き飛び、クレーターが生じる。

「俺は冥王竜ドゥーガル。邪神様の最上位配下、その筆頭だ」

    ※

 俺とノエルは地下通路の奥で、謎の石碑を発見した。

 その石碑がまばゆい光を放つ。

 次の瞬間、俺は黄白色の輝きに包まれた、不思議な空間にいた。

「ここは……?」

 ノエルの姿はない。
 ここにいるのは俺だけなのか。

「やっと会えたな、神の力を持つ者よ」

 声とともに、前方に何かが現れる。

 黄金に光り輝く、有翼人だ。
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