不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ

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第4章 勇者の日常

13 VS中位魔族1

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「な……!?」

 ギシュリが驚いたようにうめいた。

「てめぇ、相手は人間だぞ? 躊躇なく殺しやがって……」
「当てが外れたか? 残念だったな」

 俺は冷然と魔族を、そして元はチャラ男だった魔物たちを見回した。
 あいにく『一周目』でこういうシチュエーションはいくらでも経験してきたんだ。

「こうなったら、元には戻せない。せめて殺すのが供養だ」

 もちろん、完全に気持ちが割り切れるわけじゃない。
 相手が元人間だってことは分かっている。

 ……だけど、やるべきことはやらなきゃいけないんだ。
 放置すれば、こいつらは地上に出て、多くの人間を殺すかもしれない。

「だから──」

 俺は地を蹴り、突進した。

 正面の魔物に一撃。
 心臓部を貫き、さらに左右の魔物たちを蹴り飛ばす。

 頭部を、胸部を──生命維持に必要な器官を破壊していき、瞬く間にすべての魔物が動きを止めた。

「せめて、安らかに眠れよ」

 俺は物言わぬむくろとなった魔物たちに語りかける。
 それから、魔族に向き直った。

「あとはお前だけだ。ギシュリ」
「人間ごときが……」

 ギシュリは不快げに吐き捨てた。

 一方の俺も、緊張気味に身構える。

 今の俺のステータスでこいつに対抗できるか?

 中位魔族といっても、その強さにはかなりのバラつきがある。
 平均的なレベルなら問題ないだろうが、もし高位魔族に近い強さなら──。

 かなり厳しい戦いになるだろう。

「魔王様の復活は近い。その前に、障害になるであろう勇者候補は始末する」

 告げるギシュリ。

 俺の中で緊張感がさらに高まった。
『一周目』の世界では、こんな展開はなかった。
 魔族や異世界の人間がこっちに来る、なんて展開は。

 俺が勇者の役割を放棄したことで、本来たどるはずだった歴史が狂い、ズレてしまっているのか。
 いずれは、もっと他にも魔族が訪れるのか。

 あるいは、魔王までが。

「お前の他にも、魔族が来ているのか?」

 俺はギシュリにたずねた。
 不吉な予感が湧き上がる。

「いや、来たのは俺だけだ。そもそも、この扉の規模じゃ中位魔族までしか通れない上に、通路も不安定すぎるからな」

 無視されるかと思いきや、ちゃんと俺の質問に答えてくれるギシュリ。

「親切にどうも」

 俺は少しだけ気持ちが軽くなるのを感じた。
 高位魔族が来ないなら、少しは安心だ。

「……言っておくが、てめーごときは俺一人で十分なんだよ。さあ、選べ。死ぬか、魔物となるか──」

 ギシュリの両腕がねじれながら鞭のように伸びてくる。

 俺は【近接格闘】のスキルを全開にして、それらをかいくぐった。

 ぐん、と身を沈め、爆発的なダッシュで間合いを詰める。
 さらに迫る触手を避け、あるいは払いのけ、

「はあっ!」

 渾身の一撃をギシュリの腹部に叩きこむ。

「ぐ……ぉっ……」

 苦鳴とともに中位魔族は吹き飛んだ。

 俺は地を蹴り、追撃。

「おおおおおおっ!」

 倒れたギシュリに、さらにパンチとキックの雨を降らせる。
 立ち上がる暇も、反撃の隙も与えない。

 どうやら、ギシュリは中位魔族としては平均的な強さのようだ。

 なら、確実に勝てる。
 このまま押し切ってやる──。
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