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モブと美形
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王都で一番の蔵書を誇る「アリスリオ王立図書館」
膨大な敷地面積を誇り、壁と本棚を彩る書籍は圧巻で、美しい。
本来であればそちらに赴きたいが、ここ第七王城管轄病棟から近道しても40分ほどの距離がある。
仮に辿り着けたとしても、俺の体力は底をついて、テーブルで居眠りをしてしまいそうだ。
王立騎士団最下位ランク「White」のイニシャル呼び、
いくら武術の才能が他とは劣っているとはいえ、騎士たる姿勢だけは、何としても貫きたいのだ。
仕方ない、部屋にあるジョサンの戦術書記と王立研究所発行の薬草論文を読んで、実践したい部分と感想をまとめて、疑問点と更に調べたいことを洗い出して・・
「『K』お疲れ。もうすぐで夜明けも近い。交代だ。」
振り向くと、白いマントに白の騎士服を見にまっとった少年が敬礼をしている。
「はっ。異常なし。『L』少し止まって。」
見ると、やはり「L」のマントの裾が少し黒ずんでいた。
「なっ!ありがとう『K』!白のマントは汚れが目立って困るが、自戒にもなるな。であればこそ、最下位騎士団「White」なんだろう。しかし、困ったな、今日は聖女様の視察がある。休憩時間に宿舎に戻っても間に合うかどうか。その前に上騎士に見つかったら殺される」
「僕のマント貸すよ。昨日洗濯したから仮眠室に予備がいくつか残っているんだ。」
「悪い。恩にきる。」
「この仮は、アップルパイでどうだ?」
「なんだよそれ(笑)『K』は本当に甘いのが好きだな。」
「同室のLと一緒に食べるお茶菓子の時間が好きなんだ。それに鍛錬後に食べるのは至福だろう?」
「L」は面白そうに笑うと、自分を落ち着かせるように岩壁に手をつく。
「同意。いいぜ。この間、師団交流会で美味しい菓子屋を教えてもらったんだ。真っ先にお前の顔が思い浮かんだよ。くっ、お前、なかなかの美形だよな。俺もつい見惚れてしまうぞ。」
顔がいい。昔から言われてきたことだ。客観的に見ても、漫画の主人公と間違えてしまったような端正な顔立ち。でも、俺はもちろん主人公ではないし、それに及ぶようなスペックの持ち主ではない。
今までも、この顔に期待され、そして俺は期待を裏切り、目の当たりにする人間の表情を散々見てきた。
それでも、こうして「自分」を取り戻せたのは、まだ名も知らぬ『L」のおかげだ。
「冗談はよせよ。楽しみにしている。」
膨大な敷地面積を誇り、壁と本棚を彩る書籍は圧巻で、美しい。
本来であればそちらに赴きたいが、ここ第七王城管轄病棟から近道しても40分ほどの距離がある。
仮に辿り着けたとしても、俺の体力は底をついて、テーブルで居眠りをしてしまいそうだ。
王立騎士団最下位ランク「White」のイニシャル呼び、
いくら武術の才能が他とは劣っているとはいえ、騎士たる姿勢だけは、何としても貫きたいのだ。
仕方ない、部屋にあるジョサンの戦術書記と王立研究所発行の薬草論文を読んで、実践したい部分と感想をまとめて、疑問点と更に調べたいことを洗い出して・・
「『K』お疲れ。もうすぐで夜明けも近い。交代だ。」
振り向くと、白いマントに白の騎士服を見にまっとった少年が敬礼をしている。
「はっ。異常なし。『L』少し止まって。」
見ると、やはり「L」のマントの裾が少し黒ずんでいた。
「なっ!ありがとう『K』!白のマントは汚れが目立って困るが、自戒にもなるな。であればこそ、最下位騎士団「White」なんだろう。しかし、困ったな、今日は聖女様の視察がある。休憩時間に宿舎に戻っても間に合うかどうか。その前に上騎士に見つかったら殺される」
「僕のマント貸すよ。昨日洗濯したから仮眠室に予備がいくつか残っているんだ。」
「悪い。恩にきる。」
「この仮は、アップルパイでどうだ?」
「なんだよそれ(笑)『K』は本当に甘いのが好きだな。」
「同室のLと一緒に食べるお茶菓子の時間が好きなんだ。それに鍛錬後に食べるのは至福だろう?」
「L」は面白そうに笑うと、自分を落ち着かせるように岩壁に手をつく。
「同意。いいぜ。この間、師団交流会で美味しい菓子屋を教えてもらったんだ。真っ先にお前の顔が思い浮かんだよ。くっ、お前、なかなかの美形だよな。俺もつい見惚れてしまうぞ。」
顔がいい。昔から言われてきたことだ。客観的に見ても、漫画の主人公と間違えてしまったような端正な顔立ち。でも、俺はもちろん主人公ではないし、それに及ぶようなスペックの持ち主ではない。
今までも、この顔に期待され、そして俺は期待を裏切り、目の当たりにする人間の表情を散々見てきた。
それでも、こうして「自分」を取り戻せたのは、まだ名も知らぬ『L」のおかげだ。
「冗談はよせよ。楽しみにしている。」
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