自白魔法の暴走?!えっちな本音を隠せません!

向水白音

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6.魔法の効果は抜群だ!

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 カイザが扉を閉じてからふー、と息が漏れた。

「向かい合っても分かるよい筋肉だった……」

 暗殺で(というか魔法の使いすぎによる魔力枯渇で)死にかけた時、ぼんやりとしか覚えていないけれどムキムキな人が助けてくれた。
 騎士団の制服も着ていた。
 お礼を言いたくて探したけれど見つからず、騎士団員を見つけると目で追うのが私の癖になっていた。
 そうするうちに、ムキムキな筋肉が私の性癖になっていた。

「ネチネチクソ野郎だと思ったけど、やっぱいい奴だな、カイザ。筋肉もすごいし」

 あの身体に抱き着いたらどれだけ心強いんだろう。
 ヤバい、ムラムラしてきた。

「酔っぱらってんのかな?! 仕事も進んでないのにこんなこと考えてる暇ないでしょ!」

 自分に喝を入れ、机に散らばっていた書類を集め、魔法開発の仕事に戻った。
 気を緩めすぎた。

「ん? 気を緩める……酒に酔ったような状態にさせればもしかして自白も簡単にできるのでは?」

 急にひらめいた。
 思いつく呪文を書きだし、魔法として成立するように組み合わせ……。

「これでイケるのでは? ちょっと使ってみようかな」

 こういう魔法のテストをしたいときに使っているものがある。
 魔術式ぬいぐるみモルモット君だ。
 これに魔法をかけ、何らかの反応を示せば成功だ。
 燃やす呪文や髪の毛を伸ばす呪文などであれば目に見えて効果が分かるが、自白魔法はどう作用するのだか。

「ま、やってみるか」

 棚からモルモット君第408号を取り出し、思いついた魔法を反芻した。
 気を緩める感じで、それでいて色々と話せてしまう感じで。
 カイザと話しているときはついつい話しすぎちゃったからあの感じがいいな。
 というかやっぱカイザの筋肉はすごく良かった。
 あの身体に抱かれてみたい……いやいや、だから今は魔法のことを考えないと。

「ん? 成功、なのか?」

 魔力の消費量からして、魔法が成功したことは分かる。
ただ、モルモット君に反応がない。

「うーん……明日、室長に試してみようかな」

 室長なら私より強いから死ぬことは無いだろう。

「ふふ……まさかこんなあっさり思いつくなんて。カイザが聞いたら驚くだろうな。ざまあみろ! 私だってできるんだぞ!」

 とか言っていたからだろうか。

「エニーさん、すみません。バスケットを置いてきちゃいましたので回収しますね」

 ガチャっと入って来たのはカイザだ。
 ざまあみろって言っちゃったよ。聞こえたかな。

「それと、もしかして魔法の開発に成功したのですか? ざまあみろって聞こえましたよ」

 聞こえてたか。
 でも悪い知らせではないから許してもらおう。

「成功したのかまでは分からないや。明日、室長で試してみる」
「そうですか。でも、一歩進んだのでしたら良かったです。今日はしっかり休んでください」

 やっぱり優しい筋肉バカだ。
 何度見ても、

「見事な筋肉だね」
「え?」
「あ、いや、ジャケットを脱いでいるから立派な胸筋も背筋もしっかり見えて、それに腕まくりなんてしてるから腕の筋肉もよく分かって……え? あれ?」

 酔いすぎたか?
 ペラペラと言葉が口から出て来る。
 カイザも怪訝な顔をしている。

「ごめん。言わないようにしていたけど、カイザの身体がすごく好みで、そのムキムキな身体で抱きしめてもらえたらどんなにいいんだろうって思っちゃうほどで……何言ってんの、私?!」

 酒の飲みすぎだ。
 唐突に性癖を暴露するってどういう酔い方だ。何上戸だ。性癖暴露上戸?

「ちょっと酔ってるみたい。悪いけど出て行ってもらえる? そうじゃないと今すぐ抱き着いてその分厚い胸に顔を寄せちゃうよ。ああっ違うの! これは、その、酔っぱらってるの!」

 まるでもう一人の自分が口を乗っ取っているみたいだ。
 一人で自爆して焦る私にカイザが眉を寄せた。

「もしや、自分に自白魔法をかけていますか?」
「え? ま、まさか……だとしたら、私、いま自分の心を全部言ってるってこと? 確かにカイザの筋肉はめちゃくちゃ好みだし、抱きしめて欲しいって思ってるのは本当だけど、ああああ! もう! 黙ってよ私!」
「そんなにお好みな身体でしたか。言ってくれればよかったのに」
「カイザ! ダメだって!」

 後ずさる私を彼は簡単に捕まえ、抱きしめてしまった。
 ああ、

「やっぱりすごい筋肉……かっこいい」

 おしゃべりな口が勝手に動く。
 カイザは面白そうな生き物を見る目をしている。

「エニーさんは筋肉フェチでしたか。そんな素振りも見せないから気づきませんでしたよ。騎士を目で追っているから騎士団員がお好きだとは思っていましたが」
「確かにどの騎士もいい筋肉だからつい見ちゃっていたけど……え?! 知ってたの?!」
「ええ。安心してください。気づいているのは俺だけですよ」

 そう言って私の頭を押さえ、胸に顔を埋めさせてくれた。
 さりげなく、一人称が「俺」に変わっている。
 でも、

「俺って言い方もワイルドでかっこいい」
「そうでしたか。じゃあエニーって呼んでもいいですよね?」
「嬉しいけど、ドキドキしちゃう。だって彼女みたいだもん……いや、私はそんな勘違いしないからね」
「自白魔法の割には本音を取り繕うこともできるんですね。効きが甘いのでは?」
「それはこれから確認するよ。だからカイザ、帰って。このままだと私、そのシャツの下も見たいなんて言っちゃうから……わーわーわー!!!」

 もういっそ殺してくれ!
 なんという恐ろしい魔法を作ってしまったんだ!
 自白魔法ってこういうのだっけ?
 一人で暴露して発狂する私をカイザはニヤニヤと見下ろしている。

「こんな情熱的な言葉が聞けるなら自白魔法も悪くありませんね。エニー、俺の裸が見たいの?」
「見たい。今だってこの分厚い身体でドキドキしているんだもの。生で見たらもっとドキドキしちゃう……しないから! ドキドキしないから! 本当はするけど!」
「アハハ! 素直な人は好きですよ。でも、ここで脱ぐのはちょっとなぁ……」
「ならベッドに行こう。お風呂ってもう入っちゃった? どうせなら汗だくの筋肉と匂いを堪能したか……行かない! ベッドもお風呂も行かない! いますぐ帰って!」
「本当は?」
「帰らないで……ぐわーーーー!!!」

 さすが私。
 効果抜群の自白魔法だ。
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