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1 未来のあなた
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「は……?」
どこか誇らしげに宣言したセミの人と、意味が分からず、けげんな顔のわたし。
わたしは頭の中で「この人なに言うとりまんねん!」とツッコミをいれた。
「からかうの、や、やめてください」
やっぱり関わっちゃだめな人だ。
少しでも話を聞こうとした自分に後悔しながら、わたしはバスが早く来ないかと交差点の向こうにしきりに目を凝らす。
「俺の名前は浅井唯。未来から来ました。よろしくね」
わたしの関わりたくないオーラなどまったく気づいていないようで、セミの人の声色はどこか弾んでいる。
さっきまでは逃げるわたしに焦った様子だったのに、今はわたしの反応を楽しんでいるような。
「え、浅井唯……って……?」
「そう。はるかちゃんと同じクラスの浅井唯。の、二年後、高三になった姿が俺。そして、未来のはるかちゃんの恋人」
どういうこと?
突然出た名前に、わたしの頭は混乱する。
だけど、こんな怪しい人の言っていることなんて理解しなくていい。
「……あ、やっとバス来たっ」
ブロロロと得意げに音をあげているバスに、わたしはもう遅いよぉーーと心の中で嘆きながら逃げるように乗った。
セミの人も乗り込んできたら運転手さんに言いつけようと身構えたけど、彼は片手を軽く振ってわたしを見送った。
一つだけ空いていた席に座ると深いため息が出る。
わたし、いつも変な妄想ばかりしてるから、変な人が寄ってきやすいのかもしれない。
しばらく窓から見える空を見上げてもんもんと考えていたけれど、ふと目線を戻すとわたしの席の前におばあさんが立っていた。
「はっ! どうぞ、座ってください」
「あらあら。ありがとうねぇ」
急いで立ち上がると、おばあさんは優しく笑って席に座った。
気づかないほどに考え込んでいた自分が情けなくなる。
「すみません、もっと早くに気がつかなくて」
「いいんだよ、ありがとう。おや、あなた......もしかして少し前に泣いている赤ちゃんを一生懸命あやしていた子じゃないかい?」
「え? あ......はい、たぶんわたしだと思います......」
少し恥ずかしくて苦笑いのわたしとは対照的に、おばあさんはホホホと上品に口に手を当てて、どこか嬉しそうだ。
「やっぱり。あの時は、とぉっても想像力豊かな子だねぇって思わず笑ってしまって。それに孫と同じ高校の制服を着ているから印象に残ってねぇ」
一ヵ月ほど前に、隣の席で急に泣き出してしまった赤ちゃんのために手でキツネの形を作って即興で物語を話してあげたことがあった。
懸命にあやしているお母さんを見ていたら、声をかけずにはいられなくて。
そういえば、周りの乗客はわたしの破天荒な物語に微かに笑っていたような気がする。
目の前の赤ちゃんを笑わせたい一心で、そのときは恥ずかしさなんて感じなかったけれど、今となっては恥ずかしい。
たまにあるんだ。
人と話すのは得意ではないのに、頭で考えるより前に体が動いてしまうこと。
「あなたは、おもしろくて優しいわね」
「え......へへ。そんなことないです......あれ!? 降りなくちゃ」
いつの間にか映画館のバス停を過ぎて、わたしの家の近くのバス停だ。
「ほほ、気をつけてねぇ」
わたしはペコリと頭を下げて急いでバスを降りた。
映画、観そびれてしまった。
でもたぶん、映画館に行ったとしても集中できなかったはずだから大人しく家に帰るのが正解かもしれない。
セミの人が言ったことどういうことだろう。
またわたしの頭が考え込み始める。
「浅井唯って......」
口に出した独り言が思いの外、誰もいない道路に響いた気がした。
どこか誇らしげに宣言したセミの人と、意味が分からず、けげんな顔のわたし。
わたしは頭の中で「この人なに言うとりまんねん!」とツッコミをいれた。
「からかうの、や、やめてください」
やっぱり関わっちゃだめな人だ。
少しでも話を聞こうとした自分に後悔しながら、わたしはバスが早く来ないかと交差点の向こうにしきりに目を凝らす。
「俺の名前は浅井唯。未来から来ました。よろしくね」
わたしの関わりたくないオーラなどまったく気づいていないようで、セミの人の声色はどこか弾んでいる。
さっきまでは逃げるわたしに焦った様子だったのに、今はわたしの反応を楽しんでいるような。
「え、浅井唯……って……?」
「そう。はるかちゃんと同じクラスの浅井唯。の、二年後、高三になった姿が俺。そして、未来のはるかちゃんの恋人」
どういうこと?
突然出た名前に、わたしの頭は混乱する。
だけど、こんな怪しい人の言っていることなんて理解しなくていい。
「……あ、やっとバス来たっ」
ブロロロと得意げに音をあげているバスに、わたしはもう遅いよぉーーと心の中で嘆きながら逃げるように乗った。
セミの人も乗り込んできたら運転手さんに言いつけようと身構えたけど、彼は片手を軽く振ってわたしを見送った。
一つだけ空いていた席に座ると深いため息が出る。
わたし、いつも変な妄想ばかりしてるから、変な人が寄ってきやすいのかもしれない。
しばらく窓から見える空を見上げてもんもんと考えていたけれど、ふと目線を戻すとわたしの席の前におばあさんが立っていた。
「はっ! どうぞ、座ってください」
「あらあら。ありがとうねぇ」
急いで立ち上がると、おばあさんは優しく笑って席に座った。
気づかないほどに考え込んでいた自分が情けなくなる。
「すみません、もっと早くに気がつかなくて」
「いいんだよ、ありがとう。おや、あなた......もしかして少し前に泣いている赤ちゃんを一生懸命あやしていた子じゃないかい?」
「え? あ......はい、たぶんわたしだと思います......」
少し恥ずかしくて苦笑いのわたしとは対照的に、おばあさんはホホホと上品に口に手を当てて、どこか嬉しそうだ。
「やっぱり。あの時は、とぉっても想像力豊かな子だねぇって思わず笑ってしまって。それに孫と同じ高校の制服を着ているから印象に残ってねぇ」
一ヵ月ほど前に、隣の席で急に泣き出してしまった赤ちゃんのために手でキツネの形を作って即興で物語を話してあげたことがあった。
懸命にあやしているお母さんを見ていたら、声をかけずにはいられなくて。
そういえば、周りの乗客はわたしの破天荒な物語に微かに笑っていたような気がする。
目の前の赤ちゃんを笑わせたい一心で、そのときは恥ずかしさなんて感じなかったけれど、今となっては恥ずかしい。
たまにあるんだ。
人と話すのは得意ではないのに、頭で考えるより前に体が動いてしまうこと。
「あなたは、おもしろくて優しいわね」
「え......へへ。そんなことないです......あれ!? 降りなくちゃ」
いつの間にか映画館のバス停を過ぎて、わたしの家の近くのバス停だ。
「ほほ、気をつけてねぇ」
わたしはペコリと頭を下げて急いでバスを降りた。
映画、観そびれてしまった。
でもたぶん、映画館に行ったとしても集中できなかったはずだから大人しく家に帰るのが正解かもしれない。
セミの人が言ったことどういうことだろう。
またわたしの頭が考え込み始める。
「浅井唯って......」
口に出した独り言が思いの外、誰もいない道路に響いた気がした。
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