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1 未来のあなた
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「なんだか寝不足……」
翌日浮かない顔で登校したわたしが教室に入るなり、
「はるかおはよーーっ! あれ、今日髪手抜きー?」
美咲がわたしの首に手を回して勢いよく抱きつきながら、変にハネてしまった毛先をつついてくる。
やっぱバレるよね……。
結局家に帰ってからもベッドに入ってからも気になって気になって、なかなか眠れなかった。
あげく寝坊してバタバタと焦って適当に巻いた髪は、ところどころ変な方向にハネてしまった。
ハネた髪に困りながら手でなでつけていると、
「疲れた顔。大丈夫?」
美咲の後からゆっくり歩いてきたチカが、わたしの肩に手をおいて心配顔を向けた。
「ちょっと考え事してたら昨日眠れなくて」
「えーっ、なになにっ? 考え事って。恋愛系? ねぇねぇ、恋愛系でしょー?」
美咲がわたしにくっついたまま、ねぇねぇねぇとジャンプするから頭が振り回されてクラクラする。
「まぁまぁ、美咲落ち着いて」
チカがやんわり美咲を引きはがしてから、
「で? 恋愛系なの?」
やっぱりチカも気になるらしく、二人して両脇からわたしの肩に手を回し頬がつくほど顔を寄せてきた。
「実は……」
おっと、危ない危ない。
うっかり昨日ことを話しかけてやめた。
二人の大好物、恋バナ。
わたしたちの会話は、いつも恋バナかおしゃれのことばっかり。
今まで好きな人さえできたことがないわたしは、もっぱら聞き役。
三人の中でめったに会話の中心にならないわたしが、寝不足の原因が昨日知らない男の人に声をかけられたせい、だなんて言ったものなら面白がって根掘り葉掘り聞いてくるに違いない。
そんな掘り下げられて上手く答えられるほど、わたしの頭の中は整理されていない。
「いやいや、なんでもないの! それより美咲のネイルかわいいねー」
「でしょでしょー?」
わたしが適当に笑ってごまかすと、美咲は指先を高く掲げて上機嫌に自慢を始めた。
「ほんとだ、いいね。その色」
チカの興味も美咲に逸れて、ほっと胸を撫で下ろしたとき、
「おい、邪魔」
背後から低い声がした。
「わっ」
振り返って声の主に気づいた瞬間、思わず大きく飛びのいてしまった。
そこには前髪が目にかかるほど伸び、うつむく男子。
脳内で、昨日のセミの人の言葉がぐるぐると駆けめぐる。
ーー「俺の名前は浅井唯。
はるかちゃんと同じクラスの浅井唯。の、二年後、高三になった姿が俺。
そして、未来のはるかちゃんの恋人」ーー
実はこの地味な男子が浅井唯。
浅井くんはわたしの反応なんて気にもとめていない様子で、ズカズカと歩き自分の席へと向かってしまった。
彼はいつもうつむいていて、周囲に関わるなと無言の圧をかけているように感じる……挨拶でさえも寄せ付けないような。
浅井くんの後ろ姿から目が離せずにいたら、
「浅井のやつ、ほんと感じ悪いね」
「相変わらず暗いやつー」
チカと美咲の声に、はっと我に返った。
黙ったままのわたしに二人が、ねぇ?と同意を求めてくる。
「う、うーんん……」
歯切れの悪い愛想笑いにチカと美咲は不思議そうに首をかしげて、わたしを見た。
何か、話題そらさなきゃ。
えーっと……。
翌日浮かない顔で登校したわたしが教室に入るなり、
「はるかおはよーーっ! あれ、今日髪手抜きー?」
美咲がわたしの首に手を回して勢いよく抱きつきながら、変にハネてしまった毛先をつついてくる。
やっぱバレるよね……。
結局家に帰ってからもベッドに入ってからも気になって気になって、なかなか眠れなかった。
あげく寝坊してバタバタと焦って適当に巻いた髪は、ところどころ変な方向にハネてしまった。
ハネた髪に困りながら手でなでつけていると、
「疲れた顔。大丈夫?」
美咲の後からゆっくり歩いてきたチカが、わたしの肩に手をおいて心配顔を向けた。
「ちょっと考え事してたら昨日眠れなくて」
「えーっ、なになにっ? 考え事って。恋愛系? ねぇねぇ、恋愛系でしょー?」
美咲がわたしにくっついたまま、ねぇねぇねぇとジャンプするから頭が振り回されてクラクラする。
「まぁまぁ、美咲落ち着いて」
チカがやんわり美咲を引きはがしてから、
「で? 恋愛系なの?」
やっぱりチカも気になるらしく、二人して両脇からわたしの肩に手を回し頬がつくほど顔を寄せてきた。
「実は……」
おっと、危ない危ない。
うっかり昨日ことを話しかけてやめた。
二人の大好物、恋バナ。
わたしたちの会話は、いつも恋バナかおしゃれのことばっかり。
今まで好きな人さえできたことがないわたしは、もっぱら聞き役。
三人の中でめったに会話の中心にならないわたしが、寝不足の原因が昨日知らない男の人に声をかけられたせい、だなんて言ったものなら面白がって根掘り葉掘り聞いてくるに違いない。
そんな掘り下げられて上手く答えられるほど、わたしの頭の中は整理されていない。
「いやいや、なんでもないの! それより美咲のネイルかわいいねー」
「でしょでしょー?」
わたしが適当に笑ってごまかすと、美咲は指先を高く掲げて上機嫌に自慢を始めた。
「ほんとだ、いいね。その色」
チカの興味も美咲に逸れて、ほっと胸を撫で下ろしたとき、
「おい、邪魔」
背後から低い声がした。
「わっ」
振り返って声の主に気づいた瞬間、思わず大きく飛びのいてしまった。
そこには前髪が目にかかるほど伸び、うつむく男子。
脳内で、昨日のセミの人の言葉がぐるぐると駆けめぐる。
ーー「俺の名前は浅井唯。
はるかちゃんと同じクラスの浅井唯。の、二年後、高三になった姿が俺。
そして、未来のはるかちゃんの恋人」ーー
実はこの地味な男子が浅井唯。
浅井くんはわたしの反応なんて気にもとめていない様子で、ズカズカと歩き自分の席へと向かってしまった。
彼はいつもうつむいていて、周囲に関わるなと無言の圧をかけているように感じる……挨拶でさえも寄せ付けないような。
浅井くんの後ろ姿から目が離せずにいたら、
「浅井のやつ、ほんと感じ悪いね」
「相変わらず暗いやつー」
チカと美咲の声に、はっと我に返った。
黙ったままのわたしに二人が、ねぇ?と同意を求めてくる。
「う、うーんん……」
歯切れの悪い愛想笑いにチカと美咲は不思議そうに首をかしげて、わたしを見た。
何か、話題そらさなきゃ。
えーっと……。
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