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2 いまのあなた
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「あの……」
わたしは初めて隣の席、浅井くんに向けて声をかけている。
朝、おはようも言わず目さえ合わせない彼に話しかけるのは結構な勇気がいった。
正直関わりたくはないのに……。
でも、
ーー「絶対、過去の俺と仲良くなってよ!」ーー
未来からきたと話すセミの人の言葉が謎のプレッシャーとなって声をかけなければならない気がしてしまう。
わたしが勇気を出しているにもかかわらず、聞こえていないのか無視をしているのか。
絶対後者だと思うけど浅井くんは黒板とノートに目線を往復するだけで、 さっきからちっともこちらを見ない。
今は数学の授業中。
よりによって目立つ授業中に声をかけてしまったから、周りの視線を感じる。
今さら後悔しても後戻りはできない。
「あの……!」
今度こそはと、浅井くんの机をトントンと手でたたいた。
「なに」
前を向いたまま、思っていたよりずっと不機嫌丸出しな低い声が返ってきた。
「あ、えっと、その……」
やっぱり前を向いたままの浅井くんに、ひるんでしまう。
言おうとしていた言葉が口から出ていかなくて、ますます動揺する。
「用がないなら話しかけるな」
浅井くんがバリアを張るように、長い前髪を手のひらで撫で付けた。
このままじゃ一生、話しかけられずに終わる……
「教科書ないの!!」
授業が始まってからも浅井くんをチラチラと気にかけていたら、カバンの中をごそごそと探したり引き出しの中を探したり困った様子だった。
わたしの見切り発車した勇気は、わたしの言葉を食いぎみにして教科書ないの?を教科書ないの!!にしてしまった。
一瞬で教室中の視線がわたしと浅井くんにそそがれたのが分かった。
空気が重い。どうしよう。
「なんだ、森咲! 教科書忘れたなら早く言いなさい。教科書なくて今までの授業中、何やってたんだ。浅井、悪いが見せてやってくれ。みんな私語はやめなさい、授業すすめるぞー!」
「あ、え、わたしじゃなくて......」
わたしが教科書を忘れたと勘違いした先生が厳しく注意した。
悲しくなりながらも浅井くんが黙ったまま、すみませんというようにペコリと頭を下げたから意外と反省してそうな彼にわたしはほっと胸をなでおろした。
ガタゴトガタゴトと自分の机を浅井くんの机につけて、あいだに教科書を開いた。
「もうすぐ授業終わるよな」
「……ご、ごめんなさい」
なかなか声をかける勇気が出なかったせいで授業はあと10分しかない。
彼はちっとも反省なんてしていなかった。
これでも勇気を出したのに!
ひねくれものっ!
すでに浅井くんは先生の出題した教科書の問題を解き始めている。
心の中でわめくわたしの気持ちなど、彼にとっては興味のないことなのだろう。
机をつけていつもより距離は近いはずなのに、会話をする気は一斎ないんだ。
なんだろう、この気持ちは。
未来から来たと話すあの人の話を信じているわけではないのに目の前の浅井くんに、あなたはわたしのことを好きになるはずでしょと言いたい。
勝手にフラれた気にさせられて、ほんといい迷惑。
いじけながら、こっそり似顔絵を書いてみる。
未来から来たと話すあの人の変顔。
ヘタクソながらも、なんとなく特徴をとらえて描けた気がする。
それに比べて隣を見ると、前髪でまったく顔の見えない浅井くん。
「はぁ……」
少しでも顔が見えたら、同一人物か確かめられるのに。
少しでも……。少しくらい見えないかしら……。
「じろじろ見てんじゃねぇよ」
「あ、ごめんなさいっ」
視線をはねのけるように浅井くんはノートに顔がつきそうなほど、さらにうつむいた。
前髪に隠れた横顔をなんとか一目見ようと、つい顔を覗きこむように見いってしまっていた。
そんな言い方しなくても……。
わたしは慌てて視線をそらして、ノートの似顔絵をにらんだ。
あなたのせいで、話しかけたら嫌な気持ちになりましたけど。
この調子じゃ顔を確認するのは何年たっても無理そう。
でも、一つだけ分かった。
やっぱり浅井くんが未来で恋人になるなんて、ありえないことだ。
わたしは初めて隣の席、浅井くんに向けて声をかけている。
朝、おはようも言わず目さえ合わせない彼に話しかけるのは結構な勇気がいった。
正直関わりたくはないのに……。
でも、
ーー「絶対、過去の俺と仲良くなってよ!」ーー
未来からきたと話すセミの人の言葉が謎のプレッシャーとなって声をかけなければならない気がしてしまう。
わたしが勇気を出しているにもかかわらず、聞こえていないのか無視をしているのか。
絶対後者だと思うけど浅井くんは黒板とノートに目線を往復するだけで、 さっきからちっともこちらを見ない。
今は数学の授業中。
よりによって目立つ授業中に声をかけてしまったから、周りの視線を感じる。
今さら後悔しても後戻りはできない。
「あの……!」
今度こそはと、浅井くんの机をトントンと手でたたいた。
「なに」
前を向いたまま、思っていたよりずっと不機嫌丸出しな低い声が返ってきた。
「あ、えっと、その……」
やっぱり前を向いたままの浅井くんに、ひるんでしまう。
言おうとしていた言葉が口から出ていかなくて、ますます動揺する。
「用がないなら話しかけるな」
浅井くんがバリアを張るように、長い前髪を手のひらで撫で付けた。
このままじゃ一生、話しかけられずに終わる……
「教科書ないの!!」
授業が始まってからも浅井くんをチラチラと気にかけていたら、カバンの中をごそごそと探したり引き出しの中を探したり困った様子だった。
わたしの見切り発車した勇気は、わたしの言葉を食いぎみにして教科書ないの?を教科書ないの!!にしてしまった。
一瞬で教室中の視線がわたしと浅井くんにそそがれたのが分かった。
空気が重い。どうしよう。
「なんだ、森咲! 教科書忘れたなら早く言いなさい。教科書なくて今までの授業中、何やってたんだ。浅井、悪いが見せてやってくれ。みんな私語はやめなさい、授業すすめるぞー!」
「あ、え、わたしじゃなくて......」
わたしが教科書を忘れたと勘違いした先生が厳しく注意した。
悲しくなりながらも浅井くんが黙ったまま、すみませんというようにペコリと頭を下げたから意外と反省してそうな彼にわたしはほっと胸をなでおろした。
ガタゴトガタゴトと自分の机を浅井くんの机につけて、あいだに教科書を開いた。
「もうすぐ授業終わるよな」
「……ご、ごめんなさい」
なかなか声をかける勇気が出なかったせいで授業はあと10分しかない。
彼はちっとも反省なんてしていなかった。
これでも勇気を出したのに!
ひねくれものっ!
すでに浅井くんは先生の出題した教科書の問題を解き始めている。
心の中でわめくわたしの気持ちなど、彼にとっては興味のないことなのだろう。
机をつけていつもより距離は近いはずなのに、会話をする気は一斎ないんだ。
なんだろう、この気持ちは。
未来から来たと話すあの人の話を信じているわけではないのに目の前の浅井くんに、あなたはわたしのことを好きになるはずでしょと言いたい。
勝手にフラれた気にさせられて、ほんといい迷惑。
いじけながら、こっそり似顔絵を書いてみる。
未来から来たと話すあの人の変顔。
ヘタクソながらも、なんとなく特徴をとらえて描けた気がする。
それに比べて隣を見ると、前髪でまったく顔の見えない浅井くん。
「はぁ……」
少しでも顔が見えたら、同一人物か確かめられるのに。
少しでも……。少しくらい見えないかしら……。
「じろじろ見てんじゃねぇよ」
「あ、ごめんなさいっ」
視線をはねのけるように浅井くんはノートに顔がつきそうなほど、さらにうつむいた。
前髪に隠れた横顔をなんとか一目見ようと、つい顔を覗きこむように見いってしまっていた。
そんな言い方しなくても……。
わたしは慌てて視線をそらして、ノートの似顔絵をにらんだ。
あなたのせいで、話しかけたら嫌な気持ちになりましたけど。
この調子じゃ顔を確認するのは何年たっても無理そう。
でも、一つだけ分かった。
やっぱり浅井くんが未来で恋人になるなんて、ありえないことだ。
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