君の運命の相手は俺だけど俺じゃない

あい香

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2 いまのあなた

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サラサラと長い前髪が風になびいて、前髪に邪魔されなくなった浅井くんの顔。

そこには、さっきのぶっきらぼうな口調からは想像できない優しい微笑み。

「何があったか知らないけど、俺は君が優しい人だってことは知ってる」

あたたかな光を宿した瞳が、わたしをまっすぐに見ていた。

わたしは目を見開いて浅井くんから目をそらすことができない。

いつの間にかわたしの涙はひいて、心に爽やかな風が吹いた気がした。

「あなたが……」

……未来の恋人ですか?

わたしは、うっかり言いそうになる。

初めてまともに見た彼の顔は間違いなく未来から来たと話す、あの人と同じ顔をしていたから。

「見すぎなんだけど……」
「はっ!! ごめんなさいっ」

浅井くんの顔をまじまじと見つめていたわたしは、さっと目をそらした。

顔が熱くなる。

恥ずかしくて真っ赤なのが、自分でも分かった。

「えっと、えーっと」

そらした目線の行き場が見つからずに、空を見上げたり階段のすみを見てみたりする。

「関わる気なかったのに。変なやつだな」

浅井くんは立ち上がるとワシャワシャと頭をかいた。

また前髪で顔は隠れて、ぶっきらぼうな口調に戻ってしまった。

一瞬で話しかけるなオーラをまとっている。

「え、あのー……?」
 
キーンコーンカーン……

状況が理解できないでいると、昼休みの終わるチャイムがなった。

スタスタと振り返ることなく歩き去っていく浅井くん。

「なんだったの??」

首を傾げたまま狐につままれた気分とはこういうことかと、わたしは妙な分析をしていた。


教室に戻ってみると、そこにはいつもどおり、ひょうひょうとした何を考えているか分からない彼がいた。

チラチラと様子をうかがってしまう。

確かに優しく微笑んでくれてたはずなのに、夢だったかのようにそんな面影はない。

気になって落ち着かないのは完全にわたしだけみたい。

あなたがそうくるなら、わたしだって気にしていないように振る舞えるもんね。

わたしはひとり、フンッとそっぽを向いて平静を装った。

☆☆☆

「あの、美咲」
「なにー?」

帰りのホームルームが終わるとすぐ、わたしは美咲のもとに駆けよった。

美咲はスマホをいじる手を止めることなくチラッとわたしを見ただけで、またすぐスマホに視線を落としてしまった。

ーー「はるかってぇ、なんか話しにくくないー?」
「まぁね……。うちらに心開いてないんだよ、きっと」ーー


昼の二人の言葉が思い出されて、わたしの心はさらにキュッと縮こまる。

「今日カフェでも行かない?」

わたしの精一杯の明るい声は自分が思っていたよりも、か細く出た。

心を開く努力をしなくちゃと、自分なりに前向きに考えてみた。

けれどいざ行動を起こすと、いきなり誘って迷惑だったかな?変に思われてないかな?と美咲の返事を待たずしてわたしの思考は後ろ向きになった。

「あっ、今日はショッピングの予定なのー。ほら、もうすぐあたしのカレの誕生日だからぁ。プレゼント選ぼうかなって!」

美咲のスマホには彼氏へのおすすめプレゼントというページが開かれているのが見えた。

「そ、そうなんだ、じゃあ……」
「あ! チカみてみて。こういう時計ってどうかなぁ」

美咲はわたしの言葉は聞かずに、まだ自分の席で帰り支度途中のチカのもとへ行ってしまった。

「ね、ねぇ……」

美咲の後を追ってわたしもチカのもとへ行くと、

「えっと、うちら買い物行くけど……。はるかはどうする……?」

チカが困り顔でわたしと美咲の顔を交互に見た。

わたしに気を使っているのが分かる。

「……」

一瞬の沈黙が気まずい空気を何倍にも膨らませた。

「じゃあー……はるかも行きたかったら一緒に行く?」
「じゃあ、わたし帰るね。どんなプレゼント買ったかまた教えてね!」

美咲が誘うのと、わたしの言葉が重なって一緒になった。

「また明日ね、バイバーイ」

わたしは出来るだけいつも通りに笑顔を作って、教室を出た。

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