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2 いまのあなた
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「はぁー……なによ、仕方なく誘うみたいに。ううん、あれは仕方なく誘ったんだよね……」
空を見上げながらトボトボと家までの道を歩く。
まだまだ一番星は出てきそうにないほど、空は明るい。
星でも出ていたら、元気が出そうだったのにと悲しく思いながら歩く。
一番星もきっとさそり座あたりと楽しく買い物でもしてるんだろう。
星にさえ見放された気分。
家はすぐそこだけれど、お気に入りの公園でひと休みすることにしたら、
「またいる……」
公園には未来から来たと話すあの人がいて、わたしを見つけて手をふりながら駆け寄ってきた。
「えぇ? なんでにらむの? かわいい顔が台無し……」
能天気に笑っている彼をわたしがキッとにらむと、彼は逃げるように木陰に隠れた。
「もーう! わたし、疲れてるのー! あなたの相手する元気ないのよぉ」
くずれるようにヘタッとベンチに座るわたし。
「ごめんねぇ。よしよし」
彼も隣に座り、犬をなでるようにワシャワシャと頭をなでてきた。
「ちょっとっ! また?」
「へ? またって?」
「うーんんん。なんでもない」
わたしはボサボサになった髪をなでつけながら昼間、浅井くんが頭に手を置いたことを思い出す。
信じがたいけれど、同じ顔だったので頭は混乱している。
あーっ、もう。
考えたくないのにー!
「はるかちゃん、今日何かあった?」
「え……? なんで?」
唐突に聞かれて、わたしの目は泳いでしまっていると思う。
「考え事してるっぽいから。さっきから空ばっか見てる」
無意識だった。
確かにわたしは考え込むとき、たびたび空を見上げてしまう。
そのクセが話している間もなお出ていたみたい。
「残念でした、別に何もないよ」
内心ドキッとしたけれど、認めたら負けな気がした。
「そっか、気のせいかっ」
彼はベンチに、うーんっと猫のように伸びをしながら背もたれた。
フニャッと笑う目の奥では、この嘘も見透かされているような気がした。
「あなたって、本当に未来から来たの?」
「もちのろんだよ!」
彼が人差し指を立てて、魔法使いのようにくるくる回した。
ほんとこの人は、すぐふざける。
冷めた目で彼を見ていると、わたしたちの間に少し涼しい風が吹いて、まぁそう怒らないでと言っているみたい。
「はぁー」
「ごめんごめん。真剣に話すよ。未来から来たよ、本当に」
わたしの大袈裟なため息に彼はやっと観念したのか、少し低い声で話し始めた。
照れくさそうにも見えるし、切なさをこらえているようにも見える表情。
いつの間にか一番星が輝き始めた空を見上げた彼の横顔に、内心ドキッとしてしまう。
「仲良くなったきっかけは映画館だったんだ。はるかちゃん、映画好きだろ? 確か、大きなスクリーンと真っ暗な空間が好きなんだっけ」
「うん……」
確かに、わたしは映画館の雰囲気が好きなんだ。
大きなスクリーンで映画を観ている間は、一人でいても寂しくないと思えるから。
それにしても学校以外の場所で仲良くなるなんて意外だった。
わたしの楽しみである一人映画。
わざわざ学校終わりに映画館に行くのなんて、わたしだけかと思っていた。
現に今まで誰に会ってもいいように、着いてから私服に着替えたりしているものの学校の誰かに会ったことはない。
「実は俺、作曲家になるのが夢で」
「え、すごい!」
唐突な話にわたしが目を丸くして驚くと、彼はプッと吹き出して笑った。
「未来での反応と一緒だ。俺さ、中学の頃から自分の作った曲をレコード会社に送ってたの。それが高二の春に、運良く映画音楽に使われることが決まって。その作品を観に行ったらね、はるかちゃんがいて。曲を褒めてくれてたの。上映後にね、でっかな独り言で。くくく」
「そ、そんな、笑わないでよぉ」
きっと感動して周りが見えなくなったんだろうな。
ありありと目に浮かんで恥ずかしくなった。
そんなことより、すごい。
この人はわたしと同い年のとき、すでに明確な夢を持って行動していたんだ。
そして、その行動が実を結んでいて。
夢なんてないわたしとは、遠く離れた存在に思える。
「そんなはるかちゃんが面白くて。いっきに打ち解けちゃったんだよね」
彼は懐かしむように目を細めて夜空よりもずっとずっと遠くを見つめているみたい。
きっと大切な思い出なのだと分かる。
でも、未来でいっきに打ち解けたって本当かな?
わたし、友達にもなかなか心を開けないのに。
だけどよく考えたら今だって、知り合ったばかりのこの人に、少し心を開けている気がするから不思議だ。
空を見上げながらトボトボと家までの道を歩く。
まだまだ一番星は出てきそうにないほど、空は明るい。
星でも出ていたら、元気が出そうだったのにと悲しく思いながら歩く。
一番星もきっとさそり座あたりと楽しく買い物でもしてるんだろう。
星にさえ見放された気分。
家はすぐそこだけれど、お気に入りの公園でひと休みすることにしたら、
「またいる……」
公園には未来から来たと話すあの人がいて、わたしを見つけて手をふりながら駆け寄ってきた。
「えぇ? なんでにらむの? かわいい顔が台無し……」
能天気に笑っている彼をわたしがキッとにらむと、彼は逃げるように木陰に隠れた。
「もーう! わたし、疲れてるのー! あなたの相手する元気ないのよぉ」
くずれるようにヘタッとベンチに座るわたし。
「ごめんねぇ。よしよし」
彼も隣に座り、犬をなでるようにワシャワシャと頭をなでてきた。
「ちょっとっ! また?」
「へ? またって?」
「うーんんん。なんでもない」
わたしはボサボサになった髪をなでつけながら昼間、浅井くんが頭に手を置いたことを思い出す。
信じがたいけれど、同じ顔だったので頭は混乱している。
あーっ、もう。
考えたくないのにー!
「はるかちゃん、今日何かあった?」
「え……? なんで?」
唐突に聞かれて、わたしの目は泳いでしまっていると思う。
「考え事してるっぽいから。さっきから空ばっか見てる」
無意識だった。
確かにわたしは考え込むとき、たびたび空を見上げてしまう。
そのクセが話している間もなお出ていたみたい。
「残念でした、別に何もないよ」
内心ドキッとしたけれど、認めたら負けな気がした。
「そっか、気のせいかっ」
彼はベンチに、うーんっと猫のように伸びをしながら背もたれた。
フニャッと笑う目の奥では、この嘘も見透かされているような気がした。
「あなたって、本当に未来から来たの?」
「もちのろんだよ!」
彼が人差し指を立てて、魔法使いのようにくるくる回した。
ほんとこの人は、すぐふざける。
冷めた目で彼を見ていると、わたしたちの間に少し涼しい風が吹いて、まぁそう怒らないでと言っているみたい。
「はぁー」
「ごめんごめん。真剣に話すよ。未来から来たよ、本当に」
わたしの大袈裟なため息に彼はやっと観念したのか、少し低い声で話し始めた。
照れくさそうにも見えるし、切なさをこらえているようにも見える表情。
いつの間にか一番星が輝き始めた空を見上げた彼の横顔に、内心ドキッとしてしまう。
「仲良くなったきっかけは映画館だったんだ。はるかちゃん、映画好きだろ? 確か、大きなスクリーンと真っ暗な空間が好きなんだっけ」
「うん……」
確かに、わたしは映画館の雰囲気が好きなんだ。
大きなスクリーンで映画を観ている間は、一人でいても寂しくないと思えるから。
それにしても学校以外の場所で仲良くなるなんて意外だった。
わたしの楽しみである一人映画。
わざわざ学校終わりに映画館に行くのなんて、わたしだけかと思っていた。
現に今まで誰に会ってもいいように、着いてから私服に着替えたりしているものの学校の誰かに会ったことはない。
「実は俺、作曲家になるのが夢で」
「え、すごい!」
唐突な話にわたしが目を丸くして驚くと、彼はプッと吹き出して笑った。
「未来での反応と一緒だ。俺さ、中学の頃から自分の作った曲をレコード会社に送ってたの。それが高二の春に、運良く映画音楽に使われることが決まって。その作品を観に行ったらね、はるかちゃんがいて。曲を褒めてくれてたの。上映後にね、でっかな独り言で。くくく」
「そ、そんな、笑わないでよぉ」
きっと感動して周りが見えなくなったんだろうな。
ありありと目に浮かんで恥ずかしくなった。
そんなことより、すごい。
この人はわたしと同い年のとき、すでに明確な夢を持って行動していたんだ。
そして、その行動が実を結んでいて。
夢なんてないわたしとは、遠く離れた存在に思える。
「そんなはるかちゃんが面白くて。いっきに打ち解けちゃったんだよね」
彼は懐かしむように目を細めて夜空よりもずっとずっと遠くを見つめているみたい。
きっと大切な思い出なのだと分かる。
でも、未来でいっきに打ち解けたって本当かな?
わたし、友達にもなかなか心を開けないのに。
だけどよく考えたら今だって、知り合ったばかりのこの人に、少し心を開けている気がするから不思議だ。
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