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2 いまのあなた
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「はるかちゃん、人と話すの苦手でなかなか心を開けないだろ? そんな自分が嫌いだってよく嘆いてた。自分を変えたいけど、どうしたらいいのか分からないって」
「ちょっと待って。ちょっと……」
急にわたしのことを何でも知っているように話す男に、びっくりしてとまどう。
一度頭を整理させほしい。
話を途中でさえぎったけれど、彼はなおも続けた。
「俺と少し似てるなぁって思ったんだ。過去に囚われて前に進めずにいた」
「うん、もう分かった」
「え? うそ、泣かすつもりはなくて……」
わたしが涙目になっていたことに初めて気がついて慌てた彼が、
「ごめんね?」
「違うの。大丈夫……へへ」
心配げに顔をのぞきこんできたけれど、心配をよそにわたしは笑いだしてしまった。
頭が追いつくより前に心がキュッと震えて、自分の嬉しい感情に気づいた。
「ちょ、泣かせちゃったと思って焦ったー!」
「えへへ、ごめんなさい」
この人と笑いあっていると、ほっとする。
わたし、未来が不安だった。
ずっと、このまま誰にも心を開けずに、ひとりぼっちなのだろうなと思ってきた。
けれど未来の自分には理解してくれる人ができて、そんな未来が必ずくるのだと励まされている気がする。
わたしの暗かった心の中にも一番星が輝いて、おまけにさそり座もやってきてピースをする……。
って、さそりはいつでもピースしてるか。
「あなたのこと、……唯さんって呼んでもいい?」
「……」
彼が目を丸くして、わたしを見た。
思っていたより驚かれて、すごく恥ずかしくなった。
とっさに目をそらしてしまったら、キュッと左手を握られて、自分の左手に視線を落とすと少し骨張った大きな手が重ねられていた。
色は白いけど、ぜんぜん華奢じゃない男らしい手。
そしてすごく、あたたかい手。
「手……」
思わず声が漏れた。
頭がボーッとする。
重ねられた手を肩までたどって、そしたら次は首があって……彼の顔まで視線を持ってこられた。
「いいよ? 唯って呼び捨てで呼んでくれたらもっと嬉しいかな」
優しい微笑みと、いつもより少し低い声。
まっすぐな瞳がわたしをじっと見ている。
昼に見た現代の浅井くんの顔が頭に浮かんで、目の前の彼の顔と重なる。
うう、胸がキュウッと痛い。
変なの。
なに、この気持ちは?
ペシッ
わたしは右手で彼の手を叩いた。
「からかわないでっ」
「……ぷっ。ごめんごめん。つい、ね」
あぶない、あぶない。
ちょっと気を許したらすぐからかってくるんだから。
「……ていうかっ! ずっと思ってたけど、この長袖! 暑くないの?」
「まぁ、暑いけどお気に入りだから。俺といったら黒いパーカー。黒いパーカーといったら俺って覚えててよ。こりゃ、CMのオファーきちゃうかも」
苦しまぎれにふった話題に、唯はケラケラ笑って楽しそうにしていた。
「信じてもいいよ、唯のこと」
わたしはベンチから勢いよく立ち上がった。
今となってはチカや美咲のことなど、些細なことだ。
気持ちがすっきりしてきた。
「え、ほんと?」
唯がやったー!とガッツポーズをする。
「まってまって! でも、あなたが未来から来たってことだけね? 恋人ってのは、ちょっと信じがたくて……。だって、きっとあなたのこと、タイプじゃないと思うの」
唯の反応が素直で面白くて。
話していると楽しくてつい、意地悪を言いたくなった。
「言ったなぁー! 後から好きですって言ってきても知らないからな!」
「ありえませんー!」
わたしがあっかんべーと舌を出すと、
「可愛いげがないなぁー! そんな子は、家まで送ってやらないぞ」
唯は腕を組んでそっぽを向いた。
「いいんですー! すぐそこだから」
「実は夜道を歩くの怖いくせして。素直に送ってくださいと言えっ!」
「いいんです!」
「そういうわけにはいかん」
それから二人して、わーわー言いながら家までの道を歩いたのだった。
「ちょっと待って。ちょっと……」
急にわたしのことを何でも知っているように話す男に、びっくりしてとまどう。
一度頭を整理させほしい。
話を途中でさえぎったけれど、彼はなおも続けた。
「俺と少し似てるなぁって思ったんだ。過去に囚われて前に進めずにいた」
「うん、もう分かった」
「え? うそ、泣かすつもりはなくて……」
わたしが涙目になっていたことに初めて気がついて慌てた彼が、
「ごめんね?」
「違うの。大丈夫……へへ」
心配げに顔をのぞきこんできたけれど、心配をよそにわたしは笑いだしてしまった。
頭が追いつくより前に心がキュッと震えて、自分の嬉しい感情に気づいた。
「ちょ、泣かせちゃったと思って焦ったー!」
「えへへ、ごめんなさい」
この人と笑いあっていると、ほっとする。
わたし、未来が不安だった。
ずっと、このまま誰にも心を開けずに、ひとりぼっちなのだろうなと思ってきた。
けれど未来の自分には理解してくれる人ができて、そんな未来が必ずくるのだと励まされている気がする。
わたしの暗かった心の中にも一番星が輝いて、おまけにさそり座もやってきてピースをする……。
って、さそりはいつでもピースしてるか。
「あなたのこと、……唯さんって呼んでもいい?」
「……」
彼が目を丸くして、わたしを見た。
思っていたより驚かれて、すごく恥ずかしくなった。
とっさに目をそらしてしまったら、キュッと左手を握られて、自分の左手に視線を落とすと少し骨張った大きな手が重ねられていた。
色は白いけど、ぜんぜん華奢じゃない男らしい手。
そしてすごく、あたたかい手。
「手……」
思わず声が漏れた。
頭がボーッとする。
重ねられた手を肩までたどって、そしたら次は首があって……彼の顔まで視線を持ってこられた。
「いいよ? 唯って呼び捨てで呼んでくれたらもっと嬉しいかな」
優しい微笑みと、いつもより少し低い声。
まっすぐな瞳がわたしをじっと見ている。
昼に見た現代の浅井くんの顔が頭に浮かんで、目の前の彼の顔と重なる。
うう、胸がキュウッと痛い。
変なの。
なに、この気持ちは?
ペシッ
わたしは右手で彼の手を叩いた。
「からかわないでっ」
「……ぷっ。ごめんごめん。つい、ね」
あぶない、あぶない。
ちょっと気を許したらすぐからかってくるんだから。
「……ていうかっ! ずっと思ってたけど、この長袖! 暑くないの?」
「まぁ、暑いけどお気に入りだから。俺といったら黒いパーカー。黒いパーカーといったら俺って覚えててよ。こりゃ、CMのオファーきちゃうかも」
苦しまぎれにふった話題に、唯はケラケラ笑って楽しそうにしていた。
「信じてもいいよ、唯のこと」
わたしはベンチから勢いよく立ち上がった。
今となってはチカや美咲のことなど、些細なことだ。
気持ちがすっきりしてきた。
「え、ほんと?」
唯がやったー!とガッツポーズをする。
「まってまって! でも、あなたが未来から来たってことだけね? 恋人ってのは、ちょっと信じがたくて……。だって、きっとあなたのこと、タイプじゃないと思うの」
唯の反応が素直で面白くて。
話していると楽しくてつい、意地悪を言いたくなった。
「言ったなぁー! 後から好きですって言ってきても知らないからな!」
「ありえませんー!」
わたしがあっかんべーと舌を出すと、
「可愛いげがないなぁー! そんな子は、家まで送ってやらないぞ」
唯は腕を組んでそっぽを向いた。
「いいんですー! すぐそこだから」
「実は夜道を歩くの怖いくせして。素直に送ってくださいと言えっ!」
「いいんです!」
「そういうわけにはいかん」
それから二人して、わーわー言いながら家までの道を歩いたのだった。
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