君の運命の相手は俺だけど俺じゃない

あい香

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3 あなたのギター

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ジリリリ……

「ううーん」

次の日の朝、目覚まし時計の鋭い音で目が覚めた。

昨日の夜もなかなか眠れなかった。

最近、寝不足気味が続いているけど特に昨日の夜はひどかった。

体育館裏の階段で見た浅井くんの顔や、頭にのせられた手の感触が何度も思い出されて胸が苦しい気がして。

かと思えば、今度は未来から来た唯の顔が頭をよぎって胸が温かくなる気もして。

「ねむいー」

閉じようとする目をゴシゴシこすったとき、

「あぁ、最悪……」

右頬の真ん中にプツッとした出っぱっている感触があった。

ジリリリリリリ……!

目覚まし時計が怒っているように鳴り響く。

「もうっ!」

パシッと八つ当たりぎみに叩いて止めた。

急いでベッドを出て鏡を見てみると、大きなニキビができている。

軽くつつくと、痛い。

今からさらに大きくなりそう。

「最近できてなかったのに……。もういや」

わたしはがっくりとうなだれて、そのままベッドに戻った。

ふとんを頭までかぶって、ぎゅっと目を閉じる。

「はるか起きなさーい! 遅刻するわよー!」

お母さんの大声がするけれど、聞きたくない。

ふとんの中にさらにもぐって小さくなっていると、

「はるかー? 具合でも悪いの?」 

「今日学校行かない」

心配して部屋にやってきたお母さん。

わたしのか細い声で察したのか、お母さんがふとんの上に手を置いた。

「分かった。朝ごはんできてるわよ。リビングにいらっしゃいね」

お母さんは優しい声でそれだけ言って部屋を出ていった。

「なんで、わたしだけ……」

胸がしめつけられるように痛む。

どうしようもなく悲しい気持ちが波のように襲って、大粒の涙があふれた。

ニキビくらいで泣きたくないのに。

たかがニキビなのに……。

思春期には付き物のニキビができはじめたのは、小学5年生のときだ。

周りのみんなはきれいな肌なのに、なんでわたしだけって思った。

一生懸命洗顔もしたし、皮膚科にも行った。

けれどニキビは増える一方で、まったく改善されずに中学生になった。

「はるかちゃんのニキビ、また増えてなかった?」
「わたしだったら恥ずかしくて学校来れないかも」

自分のいないときに交わされていた、友達の会話。

偶然聞いてしまったのは、中学2年生のとき。

ひそかに悩んでいたわたしにとって、その言葉は胸に突き刺さった。

ニキビができ始めてから今まで、長い間きっと陰でいろいろ言われてたんだ。

もう友達なんて信じられない、必要ないと思いながらも、ひとりぼっちは寂しくて。

無理をして学校に行き、無理をして普段通りに友達と接していくうちに、わたしの中で何かが変わってしまった。

高校は自分の周りの友達が誰も行かないという理由だけで選んだし、陰口を言われないためにおしゃれなチカと美咲と友達になった。

高校生になると、ニキビはだいぶひき目立たなくなったのに、周りにどう思われているかが怖い。

ふとした拍子に現れる大きなニキビが、さらに胸にしまった気持ちを呼び起こさせる。

前は無理をして行っていた学校も、最近ではニキビができると行くのが怖くて、たびたび2、3日休むようになってしまった。

今でも、あのときの友達の陰口がすぐ耳元で聞こえるようで。

どうしようもなく怖くて、さみしい。

泣きたくないのに涙が止まらなくなる。

わたしは涙がおさまるのをひたすら待った。
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