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4 図書室のあなた
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「はぁぁー、どうしよう」
わたしは放課後の図書室で途方に暮れていた。
未来から唯が現れたせいですっかり忘れていたけれど、この前の期末テストで苦手な数学が赤点だったんだ。
他の教科は平均点前後といったところなのに、どうしても数学だけはできない。
同じように勉強してテストに挑んだのだけど。
今日になって気づいてみれば明日に迫った再テスト。
また赤点だったら夏休みの補習が待っている。
夏休みまで学校に来るなんて、どうしても避けたいのに。
赤ペンで大きく20点と書かれたテスト用紙をにらむ。
解説を読んでも少しも分からない問題ばかりだ。
わたしの頭の中でごちゃごちゃと訳の分からない公式たちが追いかけてくる。
もういやだ!と叫びたい気持ちを声が出そうな直前で堪えた。
放課後の図書室に初めて来てみたら、こんなに静かだとは思っていなかった。
利用者が数人しかいないから当たり前なのかもしれないけれど、みんなの部活の声が遠くの方で微かにする程度で余計に、この静かな空間は現実とはまったく別の切り離された場所みたいに思えてくる。
本のページをめくる音だけしか存在していないように錯覚してしまう。
変に緊張して、本棚の本たちに部外者だと無言の圧をかけられる。
「おじゃましてます」
おもわず小声で言って、軽く会釈。
だって教室では、まだ残って談笑しているクラスメートが結構いて居心地が悪いし、家に帰ったら現実逃避で映画を観ることに逃げてしまいそうだし。
「く、ふふふ」
そのとき小さな笑い声が聞こえて辺りを見渡したら、本棚の奥の通路に誰かが隠れるように動いたのが見えた。
反射的に席を立って追いかけてみると、
「え、浅井くん!」
「ごめん、偶然通りかかったら君が......くくく」
そこには口に手を当てて、笑い声を必死に抑えても堪えきれていない様子の浅井くんがいた。
わたしは状況が分からなくて固まってしまった。
髪をかき上げて、なおも楽しそうに笑う浅井くんの笑顔がなんだかまぶしく見える。
ずっと見ていたいような不思議な気分。
わたしに構わず笑っていた浅井くんは何度か深呼吸をして、やっと落ち着いたようだった。
「ごめんね、本棚に向かっておじゃましてますって......なんか可愛いなって思って。勉強中だった? 邪魔してごめんね」
浅井くんがチラリとわたしの使っていた机の方に目を向けて謝った。
「あっ、これは。数学苦手で......」
慌てて机に戻ってテスト用紙を裏返したけれど、きっと見られてしまった。
さっきの行動を見られていたことの恥ずかしさと、20点のテスト用紙を見られたことの恥ずかしさで逃げ出したくなる。
でも、この場に留まりたい気持ちもある。
むしろ、こんなにも恥ずかしい思いをしているのに、留まりたい気持ちの方が強いことに戸惑った。
「あのさ。よかったら、教えようか」
かき上げていた前髪を元のように撫でつけて、いつもの姿に戻った浅井くんが、さらりと予想外のことを言った。
「......へ?」
案の定、わたしの頭は追いつけないでいた。
わたしは放課後の図書室で途方に暮れていた。
未来から唯が現れたせいですっかり忘れていたけれど、この前の期末テストで苦手な数学が赤点だったんだ。
他の教科は平均点前後といったところなのに、どうしても数学だけはできない。
同じように勉強してテストに挑んだのだけど。
今日になって気づいてみれば明日に迫った再テスト。
また赤点だったら夏休みの補習が待っている。
夏休みまで学校に来るなんて、どうしても避けたいのに。
赤ペンで大きく20点と書かれたテスト用紙をにらむ。
解説を読んでも少しも分からない問題ばかりだ。
わたしの頭の中でごちゃごちゃと訳の分からない公式たちが追いかけてくる。
もういやだ!と叫びたい気持ちを声が出そうな直前で堪えた。
放課後の図書室に初めて来てみたら、こんなに静かだとは思っていなかった。
利用者が数人しかいないから当たり前なのかもしれないけれど、みんなの部活の声が遠くの方で微かにする程度で余計に、この静かな空間は現実とはまったく別の切り離された場所みたいに思えてくる。
本のページをめくる音だけしか存在していないように錯覚してしまう。
変に緊張して、本棚の本たちに部外者だと無言の圧をかけられる。
「おじゃましてます」
おもわず小声で言って、軽く会釈。
だって教室では、まだ残って談笑しているクラスメートが結構いて居心地が悪いし、家に帰ったら現実逃避で映画を観ることに逃げてしまいそうだし。
「く、ふふふ」
そのとき小さな笑い声が聞こえて辺りを見渡したら、本棚の奥の通路に誰かが隠れるように動いたのが見えた。
反射的に席を立って追いかけてみると、
「え、浅井くん!」
「ごめん、偶然通りかかったら君が......くくく」
そこには口に手を当てて、笑い声を必死に抑えても堪えきれていない様子の浅井くんがいた。
わたしは状況が分からなくて固まってしまった。
髪をかき上げて、なおも楽しそうに笑う浅井くんの笑顔がなんだかまぶしく見える。
ずっと見ていたいような不思議な気分。
わたしに構わず笑っていた浅井くんは何度か深呼吸をして、やっと落ち着いたようだった。
「ごめんね、本棚に向かっておじゃましてますって......なんか可愛いなって思って。勉強中だった? 邪魔してごめんね」
浅井くんがチラリとわたしの使っていた机の方に目を向けて謝った。
「あっ、これは。数学苦手で......」
慌てて机に戻ってテスト用紙を裏返したけれど、きっと見られてしまった。
さっきの行動を見られていたことの恥ずかしさと、20点のテスト用紙を見られたことの恥ずかしさで逃げ出したくなる。
でも、この場に留まりたい気持ちもある。
むしろ、こんなにも恥ずかしい思いをしているのに、留まりたい気持ちの方が強いことに戸惑った。
「あのさ。よかったら、教えようか」
かき上げていた前髪を元のように撫でつけて、いつもの姿に戻った浅井くんが、さらりと予想外のことを言った。
「......へ?」
案の定、わたしの頭は追いつけないでいた。
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