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4 図書室のあなた
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「この問題は図を描いて考えるとよくて」
勉強を教えようかという予想もしていなかった申し出に、わたしは黙って頷くしかできなかった。
じゃあさっそく、と浅井くんが横のイスに腰かけて、わたしの前に広げられたノートに手を伸ばす。
ち、近い......
トクンと跳ねた胸の鼓動が速くなっていく。
頭がぼーっとして、集中できそうにない。
体育館裏の非常階段で頭を撫でられて以来、話しかけたことも話しかけられたこともなかったのに。
浅井くんはあのときのこと、どう思っているのかな。
今のこの距離にドキドキしてしまっているのは、わたしだけなんだろうな。
ボソボソと説明してくれる浅井くんの声は聞き取りにくいけれど、とても丁寧に説明してくれている。
だめだめ! 問題に集中しないと。
わたしは、ぶんぶんと頭を振って邪念を振り払う。
「あの、お願いします!」
「しー! 声が大きいよ」
勢いで発した声は予想以上に大きくて、浅井くんはまた、ふふっと笑った。
「はい、じゃあこの問題やってみようか」
和やかな雰囲気もつかの間。
ドキドキする暇もないほど、そこからの浅井くんはスパルタで、わたしは時間も忘れてしまった。
☆☆☆
「そろそろ閉まる時間よー」
図書室の先生に声をかけられて窓の外が薄暗くなっていることに気がついた。
時計の針は、もうすぐ19時を指そうとしている。
「え? もうこんな時間か。ちょっと急ごう」
「ん? 急ぐ?」
浅井くんも時計に目をやったかと思うと、わたしのノートやペンを急いで片付け始めた。
図書室の先生はそんなに時間に厳しいのだろうか。
ほんわかした雰囲気の優しそうな女の先生だったと思うけれど。
「いいからいいから、早く」
早口で言いながら浅井くんはすでに自分の鞄を持って、わたしのそばで待機している。
浅井くんの表情が前髪で見えないから、怒っているようにも思える。
わたし、まだ浅井くんに勉強を教えてもらったお礼も言っていないのに。
その間にも何度も時計に目をやる浅井くんのせいで、よく分からないけれど、わたしも焦ってきた。
急かされるままに片付けを終えて図書室を出ると、
「よし、走ろう」
浅井くんがわたしの手を取って走り出した。
「え、」
小さく漏れたわたしの驚いた声に浅井くんが振り返って、
「あ、ごめん。つい」
すぐに手を離されてしまって、浅井くんはそのままわたしの少し前を走る。
その瞬間、少しだけ残念に思ってしまった自分が恥ずかしくてわたしはうつむいたまま浅井くんの背中を追いかけて走った。
走っている理由なんて、もはやどうでもよくなって浅井くんの一瞬の手の感触を思い出そうとしてしまう。
「やっぱり手繋いじゃお」
「あ、え、」
浅井くんがいったん離したわたしの手を再び取った。
大きくて男らしく骨ばっているけれど、どこかしなやかさがある浅井くんの手。
わたしの顔がいっきに火照ったのが分かって、浅井くんが振り返ってわたしを見つめているような気がするけれど、到底顔を上げられるわけがなかった。
浅井くんは、ずるい。
いつもの無愛想な彼からは想像できないような行動を、たまに野球の変化球のように投げてくる。
そのギャップにわたしは、いちいちドキドキさせられてしまうんだ。
風になびく髪の間から見える浅井くんの横顔は、いたずらっ子のように楽しそうに笑っていた。
勉強を教えようかという予想もしていなかった申し出に、わたしは黙って頷くしかできなかった。
じゃあさっそく、と浅井くんが横のイスに腰かけて、わたしの前に広げられたノートに手を伸ばす。
ち、近い......
トクンと跳ねた胸の鼓動が速くなっていく。
頭がぼーっとして、集中できそうにない。
体育館裏の非常階段で頭を撫でられて以来、話しかけたことも話しかけられたこともなかったのに。
浅井くんはあのときのこと、どう思っているのかな。
今のこの距離にドキドキしてしまっているのは、わたしだけなんだろうな。
ボソボソと説明してくれる浅井くんの声は聞き取りにくいけれど、とても丁寧に説明してくれている。
だめだめ! 問題に集中しないと。
わたしは、ぶんぶんと頭を振って邪念を振り払う。
「あの、お願いします!」
「しー! 声が大きいよ」
勢いで発した声は予想以上に大きくて、浅井くんはまた、ふふっと笑った。
「はい、じゃあこの問題やってみようか」
和やかな雰囲気もつかの間。
ドキドキする暇もないほど、そこからの浅井くんはスパルタで、わたしは時間も忘れてしまった。
☆☆☆
「そろそろ閉まる時間よー」
図書室の先生に声をかけられて窓の外が薄暗くなっていることに気がついた。
時計の針は、もうすぐ19時を指そうとしている。
「え? もうこんな時間か。ちょっと急ごう」
「ん? 急ぐ?」
浅井くんも時計に目をやったかと思うと、わたしのノートやペンを急いで片付け始めた。
図書室の先生はそんなに時間に厳しいのだろうか。
ほんわかした雰囲気の優しそうな女の先生だったと思うけれど。
「いいからいいから、早く」
早口で言いながら浅井くんはすでに自分の鞄を持って、わたしのそばで待機している。
浅井くんの表情が前髪で見えないから、怒っているようにも思える。
わたし、まだ浅井くんに勉強を教えてもらったお礼も言っていないのに。
その間にも何度も時計に目をやる浅井くんのせいで、よく分からないけれど、わたしも焦ってきた。
急かされるままに片付けを終えて図書室を出ると、
「よし、走ろう」
浅井くんがわたしの手を取って走り出した。
「え、」
小さく漏れたわたしの驚いた声に浅井くんが振り返って、
「あ、ごめん。つい」
すぐに手を離されてしまって、浅井くんはそのままわたしの少し前を走る。
その瞬間、少しだけ残念に思ってしまった自分が恥ずかしくてわたしはうつむいたまま浅井くんの背中を追いかけて走った。
走っている理由なんて、もはやどうでもよくなって浅井くんの一瞬の手の感触を思い出そうとしてしまう。
「やっぱり手繋いじゃお」
「あ、え、」
浅井くんがいったん離したわたしの手を再び取った。
大きくて男らしく骨ばっているけれど、どこかしなやかさがある浅井くんの手。
わたしの顔がいっきに火照ったのが分かって、浅井くんが振り返ってわたしを見つめているような気がするけれど、到底顔を上げられるわけがなかった。
浅井くんは、ずるい。
いつもの無愛想な彼からは想像できないような行動を、たまに野球の変化球のように投げてくる。
そのギャップにわたしは、いちいちドキドキさせられてしまうんだ。
風になびく髪の間から見える浅井くんの横顔は、いたずらっ子のように楽しそうに笑っていた。
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