君の運命の相手は俺だけど俺じゃない

あい香

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4 図書室のあなた

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「昼休みにやった再テストを返すぞー。受けたやつら取りにこーい」

昼休み終わりの5限目の数学。

先生がテスト用紙を扇のように広げて振り回した。

再テストに集められたのは、わたしも入れて5人だった。

他の4人はササッと取りに行き、わたしだけ完全に出遅れた。

うう、みんなの前で再テストを返されるなんて恥ずかしい。

でも取りに行かないことには結果が知れないので、いそいそと先生のもとへ向かった。

浅井くんのおかげで少しは手応えがあった。

だけど、わたしの手応えなんて当てにならない。

わたしの頭の中で手応えという文字が弱々しく揺れた。

「森咲、ほれ」

テスト用紙を差し出す先生の表情は微笑んでいるようにも見えるし、呆れているようにも見える。

なぜ、そんな微妙な表情を......

おそるおそる点数を見ると、

「ほぉっ!」

78点!

やったっ! 余裕の赤点回避だ。

「勉強頑張ったな」

先生が今度はニィッと口の端を上げて褒めてくれた。

急いで浅井くんに見せるために小走りで自分の席に戻る。

「浅井くんのおかげ。ありがと」

浅井くんの前にテスト用紙を掲げると、何も言わずこちらを見た浅井くんが、分かった分かったというように頷いた。

なんだろう。

すごいねとか何か一言でも声をかけてくれるかと思ったのに。

昨日の出来事が夢だったかのように、朝から挨拶をしてみても、ペコリと会釈をするだけで無口な浅井くんに戻ってしまっていた。

うう、痛い。

朝から胸がチクリと痛む。

そのとき、机の上に隣から手が伸びてわたしのテスト用紙が静かに奪われた。

浅井くんがシャーペンで何やら書いている様子だったけれど、テスト用紙はすぐにわたしの机の上に戻ってきた。

見てみると隅の方に、やったな!の文字と、ニコニコマークが書かれていた。

浅井くんはそれだけで、もう授業の始まった黒板に目をやっている。

浅井くんの優しい一面を、わたしだけが知っている気がしてニコニコマークを大切に指でなぞった。

「ふふ、へたっぴ」

思わず漏れたわたしの声に、

「うるせ」

浅井くんが前を向いたまま小さく言ったのが聞こえた。

言葉は無愛想なのに笑みが含まれていたように感じて、わたしの胸がほっこりあたたかくなった。

☆☆☆

放課後の図書室。

帰りのホームルームが終わると早々に教室を出ていった浅井くんが、たぶん図書室にいるんじゃないかと思って来てしまった。

けれど、期待とは裏腹に浅井くんの姿はなかった。

次のバスは15分後のはずだから、帰るつもりならバス停かとも思って行ってみたけれどそこにも姿はなくて、わたしは少しだけ肩を落とす。

もしかしたら体育館裏の非常階段かもしれない。

はやる気持ちを抑えきれずに、わたしは走り出した。

自分でもここまで必死に探す必要なんてないと思う。

特別今日話さなければならないことがあるわけではないし、会えたところでテスト勉強のお礼を言いたいくらいだ。

なのに、どうしても昨日みたいに優しくて楽しげに笑う浅井くんに会いたくなってしまった。

体育館裏までやってくると何やら楽しげな声が聞こえて、とっさに側にあった木陰に隠れた。

非常階段で誰かが話しているみたいだ。

この位置からは非常階段の柵に隠れて誰なのかはギリギリ見えない。

でも聞き覚えのある声に、わたしは耳をすませてしまった。

「ねぇねぇ、なんで無視すんのぉー」

高くて猫のように甘えるこの声は美咲じゃないかな。

男子の前では、わたしたちといるときより、かわいく声を作るんだ。

この場所に美咲がいることに、少し嫌な予感がする。

「ねぇ、唯ってば。髪切ってさぁー、もとのかっこいい唯に戻りなよぉ。そしたら付き合ってあげてもいいよ」

美咲の声が耳に届いているはずなのに、まるで拒否しているようにすぐには意味が理解できなかった。

でも気づいたらわたしは逃げるようにその場を離れていて、ちょうどバス停に着いていたバスに乗りこんだ。

唯って浅井くんだよね。

どうして美咲が、唯って呼んでいたんだろう。

もとのかっこいい唯に戻りなよって、どういうこと......

少しずつ頭が回り始めても理解ができない状況。

でも一つだけ分かったのは、わたしだけが知っていると思っていた浅井くんの一面をきっと美咲も知っているということだった。
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