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女性向け恋愛アドベンチャーゲーム『救国のメリア』
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私……リオ・ジョルジュには、前世の記憶がある。
この世界で生まれる前。私は地球という星の日本という島国で生きていた。今生きる場所と違う言語や社会のルールの元で生きていた記憶だ。
そこには、恋愛ゲームというものがあった。そのうちの一つが、私が死ぬ要因といえばそれだっただろう。
その名は『救国のメリア』。
不遇な境遇で生きる事を余儀なくされたヒロイン・メリアが、ある日救国の聖女としての力に目覚めて国の危機を救う為に奔走する。
その過程で、彼女を守る為に集められた有能なイケメン達との愛を育む。最後には国を救い、彼らの誰かに告白されドキドキのエンディング……といった内容だ。
恋愛ゲームなだけに、目的は救国ではなく攻略対象者達の恋愛である事は明白だ。
略して『救メリ』はゲームの世界だけに留まらず、舞台化やコミックス化などをされる程のブームを起こした。ゲームが終わっても続編や移植版が出ていた為に当時のプレイヤーが親世代になり、子供と一緒にファンだというケースもあった。
そんな中で、あの日を迎えた。
『救メリフェス!』……だったか? そんな集いがあり、私は勝ち取ったチケットを持って会場に行った。
まだ開場前だったにも関わらず、見ただけで“同胞だな”と思う女性がチラホラいて。どの顔もワクワクソワソワしているのがにじみ出ていた。
きっと自分も同じだろうな。と同じようにワクワクしながら立っていた。――――その時だった。
「○×#▲∥●―!!!」
金切り声が聞こえた。
――と、思った時には、私は刺されていた。
「…………?」
吹き出した鮮血が自分のものと思わず、呆けたまま地面に打ち付けられる。濡れた感触が頬に当たる。冷たくて気持ち悪い。下っ腹がズキズキ痛む。
「……ぐ…………っ」
苦痛に呻いている間も、耳障りな金切り声は止まらず耳から脳を攻撃し続ける。
「○×#▲∥●○×#▲∥●!!」
声の主は年老いた女だった。思うよりは若いんだろう。……あれほど喚けるのだから。
そんなイカレタ“おばさん”? もしくは“おばあさん”は、喚き続けながら辺り構わず手を振り回す。その度にバタバタと人が倒れる。
――さっきまでは幸せな空間だった場所が、悲惨な血の海に塗り替えられた。
それが……私が前世で最後の記憶だ。
そして今、私が生きている世界はまさにそのゲームの舞台、ニールディア王国。
時期は国の危機よりちょっと前位かな。
そこで私がなったのは……ヒロインでも敵キャラでもない、正真正銘のモブキャラだった。
ならゲームの知識など無駄――でも無い。
何と言ってもヒロインと同じ学園に通えることは大きい。是非ともその役得を生かして、ヒロインと攻略対象者達のイベントを見物させて頂きたい。イベントのあるスポットに聖地巡礼するのも良いだろう。入学が楽しみだ。
――そんな事を思っていた頃は幸せだった。と私は後に実感することになる。
この世界で生まれる前。私は地球という星の日本という島国で生きていた。今生きる場所と違う言語や社会のルールの元で生きていた記憶だ。
そこには、恋愛ゲームというものがあった。そのうちの一つが、私が死ぬ要因といえばそれだっただろう。
その名は『救国のメリア』。
不遇な境遇で生きる事を余儀なくされたヒロイン・メリアが、ある日救国の聖女としての力に目覚めて国の危機を救う為に奔走する。
その過程で、彼女を守る為に集められた有能なイケメン達との愛を育む。最後には国を救い、彼らの誰かに告白されドキドキのエンディング……といった内容だ。
恋愛ゲームなだけに、目的は救国ではなく攻略対象者達の恋愛である事は明白だ。
略して『救メリ』はゲームの世界だけに留まらず、舞台化やコミックス化などをされる程のブームを起こした。ゲームが終わっても続編や移植版が出ていた為に当時のプレイヤーが親世代になり、子供と一緒にファンだというケースもあった。
そんな中で、あの日を迎えた。
『救メリフェス!』……だったか? そんな集いがあり、私は勝ち取ったチケットを持って会場に行った。
まだ開場前だったにも関わらず、見ただけで“同胞だな”と思う女性がチラホラいて。どの顔もワクワクソワソワしているのがにじみ出ていた。
きっと自分も同じだろうな。と同じようにワクワクしながら立っていた。――――その時だった。
「○×#▲∥●―!!!」
金切り声が聞こえた。
――と、思った時には、私は刺されていた。
「…………?」
吹き出した鮮血が自分のものと思わず、呆けたまま地面に打ち付けられる。濡れた感触が頬に当たる。冷たくて気持ち悪い。下っ腹がズキズキ痛む。
「……ぐ…………っ」
苦痛に呻いている間も、耳障りな金切り声は止まらず耳から脳を攻撃し続ける。
「○×#▲∥●○×#▲∥●!!」
声の主は年老いた女だった。思うよりは若いんだろう。……あれほど喚けるのだから。
そんなイカレタ“おばさん”? もしくは“おばあさん”は、喚き続けながら辺り構わず手を振り回す。その度にバタバタと人が倒れる。
――さっきまでは幸せな空間だった場所が、悲惨な血の海に塗り替えられた。
それが……私が前世で最後の記憶だ。
そして今、私が生きている世界はまさにそのゲームの舞台、ニールディア王国。
時期は国の危機よりちょっと前位かな。
そこで私がなったのは……ヒロインでも敵キャラでもない、正真正銘のモブキャラだった。
ならゲームの知識など無駄――でも無い。
何と言ってもヒロインと同じ学園に通えることは大きい。是非ともその役得を生かして、ヒロインと攻略対象者達のイベントを見物させて頂きたい。イベントのあるスポットに聖地巡礼するのも良いだろう。入学が楽しみだ。
――そんな事を思っていた頃は幸せだった。と私は後に実感することになる。
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