【完結】王都のカジノから

みけの

文字の大きさ
3 / 16

3

しおりを挟む
 分かりました。説明いたします。

 男爵家に引き取られる前は、私は平民でした。その位はご存じですね。
……あー、良かった。それ知らない程なら、マジで上位貴族郎党に対する評価が駄々下がりするとこだった。

 え? 別に……独り言ですよ? お気になさらず!

 で、平民だったわたしの本当のかあさ、いや母は凄腕のギャンブラーでした。次々に勝負を挑まれ、そこで上げた利益でわたしを1人で育ててくれていました。
 そしてわたしに自分に継ぐ才能があると気付いてから、時間があれば徹底的に賭博の知識をたたき込みました。ええもう、物理も兼ねて。
 教える時は鬼か悪魔のようでしたが、それ以外ではとても優しい母でした。
賭博に全振りしてたから、日常の生活面では危なっかしいところもありましたがわたしにとっては最高の母でした。
 そんな母が死んだのは……。

―――母と肩を並べる程の腕を自称していたギャンブラーに勝利し、逆切れされた末に刺殺されました。

 母の死が悲しくて、ずっとお墓の前で泣いていたわたしを、ある日、見た事も無いおじさんが見下ろしていました。

 ここでお分かりでしょう? そのおじさんが貴方様の知る、私の実父です。

 私の遺伝上での父・ボンズ男爵。

わたしの父さんかなとおぼろげに思いつつも、彼に向かい合った子供の頃のわたしの胸に湧いた感情は、とても冷めたものでした。

 母は、こんな男のどこに惹かれたのか。
今自分を見下ろす、ごみを見るような視線だけで分かる。わたしにとって父である筈の男の目には、愛情も何も感じない。
産ませた、孕ませた。色々言い方はあるけれど、その時私に向けたそれは、そのどれにも当てはまらない。

あるとすれば、わたしという物体を値踏みするような目線。
自分にとって有益か無益か、有害か無害かとか、そんなところだ。
自分の子供に向けるものではないことを、即座に悟った。それも亡き母に叩き込まれたものです。

“あんたを利用しようとする輩は大勢いるわ。今のあんたに対抗する術は限られている。でもそこから正解に近いものを導き出せる事を、私は望んでいる”

 それが、母に死なれて間もないわたしの元に、現れた義父だったのは何の呪い? って思ったよ。
 わたしも子供なりに、いない父親ってのに期待していたから。
今は私と母さんの前にはいないけど、いつかわたし達の前に現れて優しい顔をして手を差し伸べてくれるんだ。そして“今迄苦労を掛けてごめん。でもこれからは私が守るから”って、ここじゃないどこかに連れ出してくれるという妄想を。

……なのに、現実は。

“妻に子が出来ないから、仕方なくだが育ててやる”

って一言だけでした。

 で、その日からわたしは男爵家の娘になりました。
といっても戸籍上でです。誰もわたしを歓迎してくれる事はありません。所詮わたしは“仕方なく身内にされただけの庶子”なのです。
 良い家に売ろうと思ってるようで、厳しい教育は受けました。事情が事情だから家庭教師達も容赦なかった。分らなかったり口ごもっていたら教鞭で体を叩かれるのなんて当たり前。完璧に覚える迄椅子に縛り付けられて、食事も抜かれて覚えさせられました。気を失いそうになったり眠りそうになったら水をかけられました。
 博打のテクを教えてくれた母も厳しかったですが、違うのが彼らの視線です。あの日男爵がわたしに向けた、ごみを見るような目です。あれは彼らに合格をもらえてからでも変わりませんでしたよ。褒めてもらった事なんてなかったし。

 でも……一応、感謝しないといけないとは思っています。
お蔭で王立学園に入学出来ましたし、ジョーと出会えたのですから。

 
 ちょっと路線からずれてしまいました。
もっと簡単に済ませるはずだったのに、つい回想に走ってしまいました。
 貴方方に費やす時間なんて、勿体ないだけなのに。

 何故、そこで睨むんです? お互いに大人になって…って、ああもう大人でしたね? 

次はそう、私と元王子殿下の出会いの話なんて、如何でしょうか。

 わたしと彼が、どんなふうに出会ったのか。
そして心を通わせ……共闘する間柄になったのか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

【完結】悪役令嬢は断罪後、物語の外で微笑む

あめとおと
恋愛
断罪され、国外追放となった悪役令嬢エレノア。 けれど彼女は、泣かなかった。 すべてを失ったはずのその瞬間、彼女を迎えに来たのは、 隣国最大商会の会頭であり、“共犯者”の青年だった。 これは、物語の舞台を降りた悪役令嬢が、 自由と恋、そして本当の幸せを手に入れるまでの、 ざまぁと甘さを少しだけ含んだショートショート。

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~

スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」 王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。 伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。 婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。 それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。 ――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。 「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」 リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。 彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。 絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。 彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。

【完結】転生したら断罪イベントの真っ最中。聖女の嘘を暴いたら、王太子が真っ青になりました

丸顔ちゃん。
恋愛
王太子は私――エリシアに婚約破棄を宣言し、 隣では甘ったるい声の“聖女”が「こわかったんですぅ♡」と泣き真似をしている。 だが私は知っている。 原作では、この聖女こそが禁術で王太子の魔力を吸い取り、 私に冤罪を着せて処刑へ追い込んだ張本人だ。 優しい家族を守るためにも、同じ結末は絶対に許さない。 私は転生者としての知識を武器に、 聖女の嘘と禁術の証拠を次々に暴き、 王太子の依存と愚かさを白日の下に晒す。 「婚約は……こちらから願い下げです」 土下座する王太子も、泣き叫ぶ聖女も、もう関係ない。 私は新しい未来を選ぶ。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

処理中です...