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回想・1
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王立学園に入学してから一年経った。
どこにいてもわたしの境遇は変わらない。家では両親とは距離を離され、教師や使用人からは見下しからの嫌がらせ。
学友も、誰もがわたしを下に見ようとしているように思え、交遊する勇気が持てなかった。
毎日ただ授業を受け帰るだけ。
それでも学園に通う事で家から離れられる時間が出来たのは嬉しかった。
帰宅時間ギリギリまで、学園のあちこちで粘るようになった。最初は寄り道でもしているのかと疑われたけど、居残って予習をしているのだと言えば追及しなかった。
その日は敷地から少し離れた小高い丘にいた。小さい林を抜ける事になるので人目につかない。
良いところを見つけた。と思っていたら
「あれ? 先客がいたのか。君は新入生?」
顔を上げると、上品で大人しそうな男子生徒が立っていた。長身だけどひょろりとしていて、色白の細面に気弱そうなたれ目。
鬼のような教師に叩き込まれた情報が頭に浮かぶ。
彼は……この国の第3王子であるジョーン殿下だ。
更にその先の情報まで頭に蘇った。
彼の母親は、男爵家の使用人。それがなぜ王族として認められたかと言うと、単に王太子以下、今いるお子様方がポンコ…ゲフン! 王の血筋を引いただけで、それ以外は取り柄無しのポンコ…ゲフン! であった為、その尻ぬぐいをする役目として仕方なく、迎えられたのだと記されていた。
そこで少し、王子に親近感がわいた。
“仕方なく男爵家にもらわれたわたし”
“仕方なく王家に迎えられた王子殿下”
「なんだか、似ているな」
わたしは居住まいを正して彼に向き合った。
そして下位の者としてカーテシーをする。下位からは上位の方に声をかける事は許されない。
眠れない中でぶち込まれた知識の通りに、わたしはそのままの姿勢でいる。不安定な姿勢を保ち続ける苦痛に耐えながら。
お互いに無言でいる事しばし……。
「そんなに畏まるような価値は、僕にはない」
顔を上げれば、すごく辛そうな表情で、彼は言った。
「だから普通に接して欲しい。何なら敬称も敬語もいらない。表面上の取り繕いなんて聞き飽きてしまったから」
その悲痛な表情に、思わず声が出てしまった。
「……お辛いのですね……」
言ってからしまった! と思い謝ろうとしたけど、それを止めたのは王子殿下本人だった。
「普通に接して欲しいと言っただろう? 君の事は知っている。ボンズ男爵令嬢だね。元は平民で急に貴族になったのに、きちんとカーテシーが出来るなんてすごいよ。頑張ったんだね」
聞いた途端、眼が急に潤んできた。
「! ど、どうしたの?」
驚いた殿下に、慌てて顔をハンカチで隠す。
実際は頑張ったなんて綺麗ごとじゃない。生きていく為だ。傷を負わないように、少しでも平穏でいられるように。
でも……。
「あ、りがとう、ございます……っ」
本当はこんなふうに言っちゃいけないのかも知れない。けど、言わずにはいられなかった。だって、
―――優しい言葉なんて……何年も言ってもらえなかったから。
どこにいてもわたしの境遇は変わらない。家では両親とは距離を離され、教師や使用人からは見下しからの嫌がらせ。
学友も、誰もがわたしを下に見ようとしているように思え、交遊する勇気が持てなかった。
毎日ただ授業を受け帰るだけ。
それでも学園に通う事で家から離れられる時間が出来たのは嬉しかった。
帰宅時間ギリギリまで、学園のあちこちで粘るようになった。最初は寄り道でもしているのかと疑われたけど、居残って予習をしているのだと言えば追及しなかった。
その日は敷地から少し離れた小高い丘にいた。小さい林を抜ける事になるので人目につかない。
良いところを見つけた。と思っていたら
「あれ? 先客がいたのか。君は新入生?」
顔を上げると、上品で大人しそうな男子生徒が立っていた。長身だけどひょろりとしていて、色白の細面に気弱そうなたれ目。
鬼のような教師に叩き込まれた情報が頭に浮かぶ。
彼は……この国の第3王子であるジョーン殿下だ。
更にその先の情報まで頭に蘇った。
彼の母親は、男爵家の使用人。それがなぜ王族として認められたかと言うと、単に王太子以下、今いるお子様方がポンコ…ゲフン! 王の血筋を引いただけで、それ以外は取り柄無しのポンコ…ゲフン! であった為、その尻ぬぐいをする役目として仕方なく、迎えられたのだと記されていた。
そこで少し、王子に親近感がわいた。
“仕方なく男爵家にもらわれたわたし”
“仕方なく王家に迎えられた王子殿下”
「なんだか、似ているな」
わたしは居住まいを正して彼に向き合った。
そして下位の者としてカーテシーをする。下位からは上位の方に声をかける事は許されない。
眠れない中でぶち込まれた知識の通りに、わたしはそのままの姿勢でいる。不安定な姿勢を保ち続ける苦痛に耐えながら。
お互いに無言でいる事しばし……。
「そんなに畏まるような価値は、僕にはない」
顔を上げれば、すごく辛そうな表情で、彼は言った。
「だから普通に接して欲しい。何なら敬称も敬語もいらない。表面上の取り繕いなんて聞き飽きてしまったから」
その悲痛な表情に、思わず声が出てしまった。
「……お辛いのですね……」
言ってからしまった! と思い謝ろうとしたけど、それを止めたのは王子殿下本人だった。
「普通に接して欲しいと言っただろう? 君の事は知っている。ボンズ男爵令嬢だね。元は平民で急に貴族になったのに、きちんとカーテシーが出来るなんてすごいよ。頑張ったんだね」
聞いた途端、眼が急に潤んできた。
「! ど、どうしたの?」
驚いた殿下に、慌てて顔をハンカチで隠す。
実際は頑張ったなんて綺麗ごとじゃない。生きていく為だ。傷を負わないように、少しでも平穏でいられるように。
でも……。
「あ、りがとう、ございます……っ」
本当はこんなふうに言っちゃいけないのかも知れない。けど、言わずにはいられなかった。だって、
―――優しい言葉なんて……何年も言ってもらえなかったから。
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