5 / 16
回想・2
しおりを挟む
その日からわたしは、気がつけば王子殿下のことばかり、考えるようになった。半平民の男爵令嬢ごときがと振り払おうとしても、あの日の事が忘れられない。遠くからでも目で追ってしまう。
「まずいよね……」
ベッドに寝転がる。そこから見えるのは掃除用具や使わなくなった食器や道具。女の子の1人部屋ではなく、ほぼ物置にわたしが暮らしている状態だ。これがわたしの現実。でも、
「おうじさま……」
目を閉じれば瞼の裏に、あの日のお姿が蘇る。そこから優しい思いが溢れ出す。
このままではとてもまずい。身分差が大きすぎる相手への……なんて。
無意識下に、今感じている思いと似たものを探し始めた。
その人がいるだけで幸せになる思い。
それは……確か……
「ファン心理だわ!」
我ながら良い事に気がついたと、晴れ晴れと納得する。
そう、これはファン心理。役者に憧れるそれ。
それなら目が無意識に向くのも、胸がときめくのも得心できるし受け入れられる。そうこれはファン心理。ならば悪いものではない。
「うんうん♪」
それに…もう、あんな偶然二度とないだろうし。
でも……神の気まぐれというのは、時に残酷だと知る。
王立学園では、年に2回奉仕活動を行う。貴族が下の者に与える“施し”だ。嫌な呼び方だけど、もらう側は理由なんて気にしないと思うようにしている。
その企画は各学年の、成績が上位の男女が進行役になるのだけど。
そこで、わたしは殿下が組むことになったのだ。
その役割を伝達された時、まず感じたのは疑問だ。
わたしの成績は良い方だけど、成績上位者ではない。トップは常に殿下の婚約者様のリシェンヌ公爵令嬢で変わりない。
常に全教科満点なんて化け物としか思えない。――と思いつつ、だから殿下の婚約者が務まるのかと、少しのくやしさと共に納得する。
そして次点がジョーン殿下だ。わたしは常にその下、3位に甘んじている。
「なぜリシェンヌ公爵令嬢様ではないのですか?」
通達した教師に訊いても、
「ご令嬢はお忙しいからだろう」
とそっけない答えが来ただけだった。
「まずいよね……」
ベッドに寝転がる。そこから見えるのは掃除用具や使わなくなった食器や道具。女の子の1人部屋ではなく、ほぼ物置にわたしが暮らしている状態だ。これがわたしの現実。でも、
「おうじさま……」
目を閉じれば瞼の裏に、あの日のお姿が蘇る。そこから優しい思いが溢れ出す。
このままではとてもまずい。身分差が大きすぎる相手への……なんて。
無意識下に、今感じている思いと似たものを探し始めた。
その人がいるだけで幸せになる思い。
それは……確か……
「ファン心理だわ!」
我ながら良い事に気がついたと、晴れ晴れと納得する。
そう、これはファン心理。役者に憧れるそれ。
それなら目が無意識に向くのも、胸がときめくのも得心できるし受け入れられる。そうこれはファン心理。ならば悪いものではない。
「うんうん♪」
それに…もう、あんな偶然二度とないだろうし。
でも……神の気まぐれというのは、時に残酷だと知る。
王立学園では、年に2回奉仕活動を行う。貴族が下の者に与える“施し”だ。嫌な呼び方だけど、もらう側は理由なんて気にしないと思うようにしている。
その企画は各学年の、成績が上位の男女が進行役になるのだけど。
そこで、わたしは殿下が組むことになったのだ。
その役割を伝達された時、まず感じたのは疑問だ。
わたしの成績は良い方だけど、成績上位者ではない。トップは常に殿下の婚約者様のリシェンヌ公爵令嬢で変わりない。
常に全教科満点なんて化け物としか思えない。――と思いつつ、だから殿下の婚約者が務まるのかと、少しのくやしさと共に納得する。
そして次点がジョーン殿下だ。わたしは常にその下、3位に甘んじている。
「なぜリシェンヌ公爵令嬢様ではないのですか?」
通達した教師に訊いても、
「ご令嬢はお忙しいからだろう」
とそっけない答えが来ただけだった。
22
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
【完結】悪役令嬢は断罪後、物語の外で微笑む
あめとおと
恋愛
断罪され、国外追放となった悪役令嬢エレノア。
けれど彼女は、泣かなかった。
すべてを失ったはずのその瞬間、彼女を迎えに来たのは、
隣国最大商会の会頭であり、“共犯者”の青年だった。
これは、物語の舞台を降りた悪役令嬢が、
自由と恋、そして本当の幸せを手に入れるまでの、
ざまぁと甘さを少しだけ含んだショートショート。
『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~
スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」
王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。
伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。
婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。
それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。
――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。
「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」
リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。
彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。
絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。
彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。
【完結】転生したら断罪イベントの真っ最中。聖女の嘘を暴いたら、王太子が真っ青になりました
丸顔ちゃん。
恋愛
王太子は私――エリシアに婚約破棄を宣言し、
隣では甘ったるい声の“聖女”が「こわかったんですぅ♡」と泣き真似をしている。
だが私は知っている。
原作では、この聖女こそが禁術で王太子の魔力を吸い取り、
私に冤罪を着せて処刑へ追い込んだ張本人だ。
優しい家族を守るためにも、同じ結末は絶対に許さない。
私は転生者としての知識を武器に、
聖女の嘘と禁術の証拠を次々に暴き、
王太子の依存と愚かさを白日の下に晒す。
「婚約は……こちらから願い下げです」
土下座する王太子も、泣き叫ぶ聖女も、もう関係ない。
私は新しい未来を選ぶ。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる