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【カジノの貴賓室】・8
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「こちらが彼がわたしに負けた分の明細です」
と、渡した証文に目を走らせた後……辺境伯の高笑いが部屋中に響き渡った。
「くくっ………あっはっはっはっは!!! これ程負けたか! しかし返してもらわねばなぁ……! せいぜい頑張って払えよ小娘、いや女公爵!」
哄笑し続ける辺境伯の隣で、
「おほほほ……! 命があるだけまだマシですわ。もう笑う事も出来ない娘に比べればねぇ? いいえ、これから貴女達を待つのは生きながら地獄の日々なのだから、決してマシではありませんわぁ?」
辺境伯夫人も口元に扇を添え、コロコロと嗤う。
優雅なしぐさの中に仄暗い凄みを感じて、ぶるっと体が震えた。
娘さんを殺された恨みが、よほど溜まっていたんだろうな。
ジョーの話でも辺境伯はずっとあの件を調べていたそうだし。
ご当人の話でも『どんなに証拠や証言を揃えて再捜査を訴えても悉く、断定するには足りないとはねつけられてしまう』って事だったし。
見せてもらった資料は、よくこれだけ調べたなぁと絶句してしまう程だった。細部の矛盾や事件当時の証言。重要な意見からごく小さな違和感にまつわるものまであった。もはや執念と言っても良い。
にも関わらず……捜査はされなかった。
大方前の公爵が関係者を、買収なり脅すなりしていたんだろう。娘の為にというより、自分の立場を守る為だろうな。前公爵は有能だけど敵も多かった。そうして娘の罪を隠せば治まると思っていたんだろう。
まさか自分が急死するとも思わずに。
でも……こうなるのなら、潔くリシェンヌに罪を認めさせた方が良かったと思う。歴史に対する知識の弱さを指摘され、逆恨みした挙句に殺したと。それを隠蔽するために、側仕え達にも共謀させたのだと。
その上で誠心誠意謝罪して、贖罪する意思を示し続ければ、この状況は無かったかも知れない。
辺境伯ご夫妻の嘲笑を、リシェンヌはソファに前かがみに座ったままの姿勢で聞いていた。いや、内容だけに動けなかったのかも知れない。
他人のわたしですら、彼らから発せられる威圧感に鳥肌が立ってるくらいだから、やらかした当人は相当に堪えているだろうな。と呑気に思っていたら……
「………………………離婚」
「ん? 何か言ったか公爵」
辺境伯が問いかけると、ガバッとリシェンヌは顔を上げた。そして声を大にして言い放つ。
「カインと離婚するわ!! これは彼が勝手に遊んで負けた分よ!! わたくしには関係ない!」
うわ、切り離しちゃったよこの女。ジョーが前にいてもいちゃ付いていた位に大好き? だった今の旦那の事を。
「マ、マリオン! それはあんまりです!! わたしは貴方の為にっ」
「うるさい!! こんなに無能だとは思わなかったわ! こんな小娘に負け続けて!!」
「貴方のお力になろうと思ったのに……」
賭け事に小娘は関係ないけどねー
そう思いながら目の前の修羅場を、白けた気分で観察する。
髪を振り乱し目を吊り上げて怒鳴り散らすリシェンヌと
普通ならきっと大人の魅力に溢れていると思う整った顔立ちを、泣きそうに歪めてぐずぐずと泣きつくカイン
こんな奴らにジョーが長年苦しめられていたのだと思うと、腹が立つというより空しさが勝つ。
金の切れ目が縁の切れ目、ってことか……。
ってゆうかさ、そもそも……。
わたしが言うより先に、辺境伯夫人が呆れたように彼らに引導を渡した。
「何を言ってるの? 貴族の離婚は法で認められていないじゃない」
この国の神様からの教えに『神の前で誓った人間同士は決して離れてはいけない』って項目がある。
だから一旦夫婦として神前で誓えば、どっちかが死ぬまで離婚は出来ない。特に貴族は『民の見本となる立場』って事で一層厳しい。
あまりにも相手に問題がある場合だけは、例外として『結婚したという事実そのものをなくす』ってのは認められているけど、綿密に捜査されて成立するのはその後なんだよね。
これ以外にも借金あるみたいだし……その間に完全に詰むよ? 公爵家。だから離縁? 出来たとしても意味ないし。
と、渡した証文に目を走らせた後……辺境伯の高笑いが部屋中に響き渡った。
「くくっ………あっはっはっはっは!!! これ程負けたか! しかし返してもらわねばなぁ……! せいぜい頑張って払えよ小娘、いや女公爵!」
哄笑し続ける辺境伯の隣で、
「おほほほ……! 命があるだけまだマシですわ。もう笑う事も出来ない娘に比べればねぇ? いいえ、これから貴女達を待つのは生きながら地獄の日々なのだから、決してマシではありませんわぁ?」
辺境伯夫人も口元に扇を添え、コロコロと嗤う。
優雅なしぐさの中に仄暗い凄みを感じて、ぶるっと体が震えた。
娘さんを殺された恨みが、よほど溜まっていたんだろうな。
ジョーの話でも辺境伯はずっとあの件を調べていたそうだし。
ご当人の話でも『どんなに証拠や証言を揃えて再捜査を訴えても悉く、断定するには足りないとはねつけられてしまう』って事だったし。
見せてもらった資料は、よくこれだけ調べたなぁと絶句してしまう程だった。細部の矛盾や事件当時の証言。重要な意見からごく小さな違和感にまつわるものまであった。もはや執念と言っても良い。
にも関わらず……捜査はされなかった。
大方前の公爵が関係者を、買収なり脅すなりしていたんだろう。娘の為にというより、自分の立場を守る為だろうな。前公爵は有能だけど敵も多かった。そうして娘の罪を隠せば治まると思っていたんだろう。
まさか自分が急死するとも思わずに。
でも……こうなるのなら、潔くリシェンヌに罪を認めさせた方が良かったと思う。歴史に対する知識の弱さを指摘され、逆恨みした挙句に殺したと。それを隠蔽するために、側仕え達にも共謀させたのだと。
その上で誠心誠意謝罪して、贖罪する意思を示し続ければ、この状況は無かったかも知れない。
辺境伯ご夫妻の嘲笑を、リシェンヌはソファに前かがみに座ったままの姿勢で聞いていた。いや、内容だけに動けなかったのかも知れない。
他人のわたしですら、彼らから発せられる威圧感に鳥肌が立ってるくらいだから、やらかした当人は相当に堪えているだろうな。と呑気に思っていたら……
「………………………離婚」
「ん? 何か言ったか公爵」
辺境伯が問いかけると、ガバッとリシェンヌは顔を上げた。そして声を大にして言い放つ。
「カインと離婚するわ!! これは彼が勝手に遊んで負けた分よ!! わたくしには関係ない!」
うわ、切り離しちゃったよこの女。ジョーが前にいてもいちゃ付いていた位に大好き? だった今の旦那の事を。
「マ、マリオン! それはあんまりです!! わたしは貴方の為にっ」
「うるさい!! こんなに無能だとは思わなかったわ! こんな小娘に負け続けて!!」
「貴方のお力になろうと思ったのに……」
賭け事に小娘は関係ないけどねー
そう思いながら目の前の修羅場を、白けた気分で観察する。
髪を振り乱し目を吊り上げて怒鳴り散らすリシェンヌと
普通ならきっと大人の魅力に溢れていると思う整った顔立ちを、泣きそうに歪めてぐずぐずと泣きつくカイン
こんな奴らにジョーが長年苦しめられていたのだと思うと、腹が立つというより空しさが勝つ。
金の切れ目が縁の切れ目、ってことか……。
ってゆうかさ、そもそも……。
わたしが言うより先に、辺境伯夫人が呆れたように彼らに引導を渡した。
「何を言ってるの? 貴族の離婚は法で認められていないじゃない」
この国の神様からの教えに『神の前で誓った人間同士は決して離れてはいけない』って項目がある。
だから一旦夫婦として神前で誓えば、どっちかが死ぬまで離婚は出来ない。特に貴族は『民の見本となる立場』って事で一層厳しい。
あまりにも相手に問題がある場合だけは、例外として『結婚したという事実そのものをなくす』ってのは認められているけど、綿密に捜査されて成立するのはその後なんだよね。
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