私がヒロインなんだから!

みけの

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ヒロイン保険が欲しい

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「……これから諸君は、この学園の生徒として……」
どの世界でも変わらない退屈な挨拶の間、私は新1年生の席で今迄起きた事を思い返していた。
ヒロインになった夜から数日後、私は伯爵家の使用人だという男女の訪問を受けた。
『昔、伯爵家から攫われたお子様を探していて、こちらに辿り着きました』
そう言う彼らに、待ってました! と小躍りする気持ちを抑えながら身の上を語り証拠を提示する。
胸の痣とずっと持っていたブレスレットだ。
 気になったのは両親の反応だったが、彼らは『大事にしていたので覚えている』と供述する。
リューは手続きを完了してくれたのだと正直ホッとした。そして伯爵夫妻自らの確認の後、『親子の再会イベント』を無事にクリア出来た。
そして今日まで伯爵家の家庭教師の指導の下、勉学に励んでこの学園に入学出来た。やや気になるのは幼少期に起きる筈だったイベントの事だけど、それもこの調子だとうまく改ざんされているだろう。
素行にも気を付けているから、神様の干渉が入るようなへまはしていない。
「入学式、終わったよセシル」
『友達』に言われて慌てて立ち上がる。そしてクラスを確認、教室へ移動。
カリンの事は気になるけど、今はボーっとしてられない。これから2個連チャンでイベントが起こるんだ。そう思うと少しだけワクワクしてきた。


 さっき言った2人との遭遇イベントが今から起こる。アンドリュー・シブサワとリオ・タカツカサ。
―――リオは良いんだけど、問題はアンドリュー。はぁ……こっちは結構、憂鬱。
 ヒロインが階段から落ちかけるんだけど、それをアンドリューが抱き留めてくれる。
って言っちゃうとカッコイイけど、階段落ちるって、下手するとやばくない?
 よ、良く考えてみたらアンドリューのイベント、結構怖いの多いな。『テニス部の練習で暴投してきた珠に当たりかけるところを助けられる』とか、『暴漢に襲われかけて助けられる』とか……。あれ、ヒロインもしかして、ドジっ子通り抜けて、不運体質? 私五体満足でいられる?
 何か……ちょっと不安になってきたかな?
 あ、あはは……ゲームでプレイしてた感覚なら、完全に他人事だけど、今は……自分がやるんだよね……。
 今更ながらヒロインの危機管理フラグを、不安に感じた私でした。



 私達の所属する普通科は3階建ての建物の2階だ。多分この階段から私は落ちかけるんだろう。
問題は、それがどんなシチュエーションか分からない、って事だ。分っていたら心の準備位は出来そうなんだけど……。
―――とか考えてたら!
 突然膝裏辺りに衝撃を感じ、体が後ろの方へ倒れていく。これからイベントだ、アンドリュー登場〇秒前!
「セシル?」
「セシルちゃん!」
『友達』2人が悲鳴を上げた。フッと体が宙に浮き上がる。
 でも、大丈夫! だって私、ヒロインだもん。
この世界は私を中心に回っている。ヒロインのいないゲームはあり得ない。だからこれも、無傷でクリア出来るだろう。ゲームではそうだったし。
―――でも、怖いもんは、怖いっ!
ギュッと目を瞑ってしまう。何秒か程の時間を恐怖に塗り替えた、その時――。
 背中から落ちようとしていた私の体は、落下する前に力強く支えられて止まった。目を開けるとややくせっ毛の黒髪に青い目をした、精悍な顔立ちの男の子が心配そうに見つめている。
「大丈夫か? いきなり倒れたりして」
……アンドリュー……
ようやく出会えた攻略対象の1人。予想は出来ていたものの、
「ぐ、ぐるじい……!」
「あ、悪い!」
アンドリューは私の腰を、左側から片腕1本で(さすが脳筋)支えている。そして私はその腕に万歳みたいに腕を後方に伸ばした状態で、何と言うか……逆エビ固めみたいな体制で体を預けているのだ。滅茶苦茶苦しい。
って言うかヒロイン、どーしてこんな体制で落ちかけんの? 背中からなんて後ろから引っ張られでもしない限り無理がある。そうだ、さっき膝裏に何かが当たって……。
 『友達』とアンドリューのお手を借りて、何とか普通に立てた。見回したら上から下から大勢の人が私達に注目している。
そして、階下からこっちを見上げている人達の中に、
「……あの子……」
 カリン・ワタライの姿があった。
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