裏切られた侯爵夫人なんてお断り~離婚を求められた悪役夫人は踊りだす~

みけの

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主役達の結末③

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~エイミー視点~

 ああもう、サイッアク!

抜け出してきたのにこのままじゃ、お父様達が来る時間に帰れないじゃない!

 2人が来るのを待っている間、暇で仕方なかったからめくった雑誌。そこに出ていたのがこのお店だった。

 今はお父様達をお迎えする準備で、あのこうるさいおばさん(注:サーベント公爵夫人)もバタバタしている。抜け出すチャンスね♪ ラッキーにもお店は、この屋敷から近いし。

 と思ってフデキオと抜け出して、お店でお茶をした迄は良かったのだけど―――。

「ですのでどうか現金のお支払いを」

この店長のせいで台無しだわ!

「さっきカードを出しただろう!?」

「そのカードが手続不可になっているのです。最近、ツケ払いとして請求書をお送りしたところ、全く別の方だったという件がありまして現金払いのみとなっております。ちなみにここ以外の店舗でも同じです」

 あーもう! 頑固ね! とイライラしてたら、良い考えが浮かんだから口を挟んだ。

「じゃあおごってよ、迷惑料に」

そうよね? そうすれば良いんだわ。ここは人気のお店ですもんね。

「その代わりここの事、とっても良いお店だって宣伝してあげるから」

「ああ、さすがエイミーだな店長、それで良いな?」

 流石エイミーですって! きゃっ♪

 なのに店長は、さっきまでブルっていたのが打って変わったみたいに真顔になる。

「お断りします。今そのような例外を認めれば、同じようなお客様がまた来てしまいます。ひょっとしたらこの店以外でも同じ事が起きるようになるかも知れません。あの客にはしたのに、自分達は出来ないのかとなっては逆に、悪評を呼びます」

 ああもう! 融通が利かないわね! こんな事をしてたら本当に、時間に間に合わなくなるじゃない!

「こっちは貴族なのよ! 悪評を立てるならこっちにだって出来るわ!」

「ど、どのようなお方であっても、例外は許可出来ませんっ、我々も商売なのですっ!」

やり取りしている内に……ああもう、時間が来ちゃったじゃない!!

「あ、謝ってよ!」

「はあ?」

 私の言葉に店長がアホ面になる。あーもう、イラつく!!

「あんたがごちゃごちゃ言うから、これからの約束の時間が来ちゃったじゃない! 遅れちゃうわ、どうしてくれるのよ!!」

「それはすいません。ですが、そのように大事ならばなぜ約束のお時間とやらまでお待ちなさらないのですか? こちらで飲食する事などいつでも出来ますでしょう」

 めちゃくちゃ怒っている私に動じる事もなく、マニュアルを読み上げる様に落ち着いた答えが返ってくるのがほんっと―にムカついて! 気持ちのまま口走った。

「土下座なさい!」

「エ、エイミー?」

 フデキオ迄戸惑ってるわ。どうしてそうなるの? 貴方は侯爵様なのに! 

でもそれより腹が立つのは、この店長! とぼけた様子で首をかしげて

「……何にでしょう?」

訊かないと分からないの!? どんだけ馬鹿なの!?もう許せない! 

「この私を、侯爵夫人になる私に迷惑をかけた罰に決まっているでしょう!!」


「エ、エイミー……」

「あなた……?」

………え?

 それはここで聞くはずの無い声だった。ギギギ、って感じに声のした方を見ると、懐かしい両親の姿があった。

―――な、何故2人が、ここに……?

 私の予想では、ノーム邸で私達を待っている筈なのに。

久しぶりに私に会う事を思い、楽しみに待っていてくれてる筈なのに。

 と心の中はパニック状態だ。

 2人はそんな私を、穴が開く程に凝視した後……。

「お前がそんな事を言うなんて……!」

と言って、後は魂が抜けたように、その場にへたり込んだ。
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