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婚約者のもう一つの顔
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「「「何っ!!」」」
王太子殿下達が目を剥く。
ヒルデ嬢は素早く動いたラッセン嬢の影にいて見えなかったみたいだけど、僕らはヒッ! と情けない声をあげてしまう。
「どんな時に思ったの?」
「ナルシトさんとは、私……当番とかで一緒で。けど、ずっと私だけしている感じで……。言ったらその時は謝ってくれるんですけど、次には忘れたみたいに同じ事繰返して……」
初めて聞く事実。マリア、ヒルデ嬢にそんな事してたのか? 同じクラスだった頃、2人はよく一緒にいててマリアも『いいお友達なの』って言ってたのに。
「でもしつこく言ったら『貴女は良い人だからつい甘えてしまって。でもずっと良いお友達同士でいたいの』って言われるから。……私、友達いなくって」
「……つまり友達という言葉の前に、“便利で都合が良い”ってつく方のお友達だったのね。……良いじゃない、友達がいなくっても。私なんていつも1人よ」
「いやそれは……」
「それは貴女だからでしょうね」
声がしたと同時に人混みが割れ、ドレス姿のご令嬢が姿を見せた。その後ろに数人の、制服姿の女性を従えて。
ストレートの銀髪に、水色の瞳。華やかというよりカッチリした印象のドレス。
目を奪われるほどじゃないけど、目鼻立ちが整った真面目そうな女性だ。
「誰だろう?」
僕の言葉にエドが隣で額を押さえる。
「ジュリアン・ラチェット侯爵令嬢だよ。って、お前なぁ……。王太子殿下の婚約者候補の顔くらい覚えておけよ……」
「あはは……」
笑って誤魔化す。世事に疎いとは父さん達にもよく言われている。
「あらラチェット様。相変わらず固い装いですわね。私でよろしければドレスをデザイン致しますわよ?」
「あいにくとわたくし、この固い装いが気に入ってますから遠慮致しますわ。それに毎日お祭り状態の貴女のご趣味には、一向になじめる自信がありませんの。
……こほん、ところで先程からのお話、わたくしの後輩達も言いたいことがあるようです」
そう言ってラチェット嬢は、背後の数人を手で示した。どの子も憤然としているように見える。
彼女らは促されると、やや興奮気味に話し出した。
「私達……1年前にお2人とクラスが一緒でした。で、いつだったかグループ課題が出されて、ナルシトさんとグループが一緒になったんですけど……全然勉強に参加してくれなくて……」
1年前のグループ課題……と言われて思い出す。数人でこの国の文化とか建造物についてとか調べて発表したやつだ。
「調べるのにあちこち回ったりだとか、図書館で資料まとめたりとか全然しなかったのにちゃっかり発表だけ出て、“みんなですっごい頑張りました!”とか言うんですよ?」
「後片付けも手伝わなかったし!」
え、ええ?
初めて知る事実に驚くしかない。
見れば、王太子殿下達も僕と同じく呆然としている。親しくしていたようなのに知らなかったんだろうか……?
「本当なのか、マリア?」
「あ、いえ、その……っ」
殿下の問いかけに、青い顔でどもっているマリア。
ラッセン嬢は感心したように頬に手を当てている。
「まあまあ……ここにも“便利で都合の良いお方”がいらっしゃったのね」
「とにかく口がうまいんです。それに……どうしてかそんな人なのに先生とかクラスで1番強い人に人気があって」
「オリガ君がモラハラなんてあり得ないですよ。むしろオリガ君が良いように使われてました! ――ねえ?」
「はい! むしろちょっと位やり返せば良いのに、ってムカついてました」
女の子達は本当に怒っているようだ。
――そう言えば……マリアは立場の強い人と一緒にいるようになった。訊いてもいつも“僕の為だ”としか言わなかったけど。
……今まで気付かなかったけど。
様々なタイプの人がいるのに、全員の懐に入れるって……おかしくないか?
僕は目の前の婚約者が、全然知らない存在に思えてきた。
王太子殿下達が目を剥く。
ヒルデ嬢は素早く動いたラッセン嬢の影にいて見えなかったみたいだけど、僕らはヒッ! と情けない声をあげてしまう。
「どんな時に思ったの?」
「ナルシトさんとは、私……当番とかで一緒で。けど、ずっと私だけしている感じで……。言ったらその時は謝ってくれるんですけど、次には忘れたみたいに同じ事繰返して……」
初めて聞く事実。マリア、ヒルデ嬢にそんな事してたのか? 同じクラスだった頃、2人はよく一緒にいててマリアも『いいお友達なの』って言ってたのに。
「でもしつこく言ったら『貴女は良い人だからつい甘えてしまって。でもずっと良いお友達同士でいたいの』って言われるから。……私、友達いなくって」
「……つまり友達という言葉の前に、“便利で都合が良い”ってつく方のお友達だったのね。……良いじゃない、友達がいなくっても。私なんていつも1人よ」
「いやそれは……」
「それは貴女だからでしょうね」
声がしたと同時に人混みが割れ、ドレス姿のご令嬢が姿を見せた。その後ろに数人の、制服姿の女性を従えて。
ストレートの銀髪に、水色の瞳。華やかというよりカッチリした印象のドレス。
目を奪われるほどじゃないけど、目鼻立ちが整った真面目そうな女性だ。
「誰だろう?」
僕の言葉にエドが隣で額を押さえる。
「ジュリアン・ラチェット侯爵令嬢だよ。って、お前なぁ……。王太子殿下の婚約者候補の顔くらい覚えておけよ……」
「あはは……」
笑って誤魔化す。世事に疎いとは父さん達にもよく言われている。
「あらラチェット様。相変わらず固い装いですわね。私でよろしければドレスをデザイン致しますわよ?」
「あいにくとわたくし、この固い装いが気に入ってますから遠慮致しますわ。それに毎日お祭り状態の貴女のご趣味には、一向になじめる自信がありませんの。
……こほん、ところで先程からのお話、わたくしの後輩達も言いたいことがあるようです」
そう言ってラチェット嬢は、背後の数人を手で示した。どの子も憤然としているように見える。
彼女らは促されると、やや興奮気味に話し出した。
「私達……1年前にお2人とクラスが一緒でした。で、いつだったかグループ課題が出されて、ナルシトさんとグループが一緒になったんですけど……全然勉強に参加してくれなくて……」
1年前のグループ課題……と言われて思い出す。数人でこの国の文化とか建造物についてとか調べて発表したやつだ。
「調べるのにあちこち回ったりだとか、図書館で資料まとめたりとか全然しなかったのにちゃっかり発表だけ出て、“みんなですっごい頑張りました!”とか言うんですよ?」
「後片付けも手伝わなかったし!」
え、ええ?
初めて知る事実に驚くしかない。
見れば、王太子殿下達も僕と同じく呆然としている。親しくしていたようなのに知らなかったんだろうか……?
「本当なのか、マリア?」
「あ、いえ、その……っ」
殿下の問いかけに、青い顔でどもっているマリア。
ラッセン嬢は感心したように頬に手を当てている。
「まあまあ……ここにも“便利で都合の良いお方”がいらっしゃったのね」
「とにかく口がうまいんです。それに……どうしてかそんな人なのに先生とかクラスで1番強い人に人気があって」
「オリガ君がモラハラなんてあり得ないですよ。むしろオリガ君が良いように使われてました! ――ねえ?」
「はい! むしろちょっと位やり返せば良いのに、ってムカついてました」
女の子達は本当に怒っているようだ。
――そう言えば……マリアは立場の強い人と一緒にいるようになった。訊いてもいつも“僕の為だ”としか言わなかったけど。
……今まで気付かなかったけど。
様々なタイプの人がいるのに、全員の懐に入れるって……おかしくないか?
僕は目の前の婚約者が、全然知らない存在に思えてきた。
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