この世界のスキル・アイテム“オリガミ”の秘密は僕だけが知っている

みけの

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さよなら

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 「デ……デタラメだわ!」

会場に、叫び声が響く。
怒りに顔を真っ赤にしたマリアがこっちを睨み付けている。
「みんな嘘ついて、私を陥れようとしているのよ! 私がユリアス達に気に入られているのが気に入らないんだわ!! でも無駄よ、こっちには証人がいるんだから! ねぇ、私が恐い想いをしているの、見てたものね! そうよね!!」
と、証人達に睨み付けるような目を向ける。と、彼らは慌てた様にそれに応じた。
「は……はい、そうです! 僕らオリガ君がナルシトさんにひどい事を言っているのを見ました!」
「――状況は?」
低く問いかけたのはラッセン嬢ではなくラチェット嬢だ。
「じ、状況、って……」
「そのままの意味です。原因や内容をつぶさに説明して下さる? ……先程からのお話だとナルシト嬢は、ずいぶんちゃっかり……失礼、人を使われるのがお上手のようですもの。人を当てにせず自分でやれ、等の忠告が荒くなってしまったのかも知れませんわ」
「う……っ」
それにラチェット嬢の側付きの子達も便乗する。証人とは同等の立場だから遠慮していない。
「そうよ、何度言っても繰返されたら、ちょっと厳しめになっても仕方ないよね!」
「って言うか、オリガ君の厳しめなんて想像つかないわ。害虫だって殺せない程のビビりなのに」
……ビビリって……。
ちょっとフクザツな気分になったけど、どうやら彼女らは僕の敵じゃなさそう。
「ねぇあなた、どんな状況だったのか少しでも思い出せません?」
「そ、それは……」
ラチェット嬢達に畳みかけられ、証人の彼は口ごもることしか出来ない。


 さっきから思っていたけど……どうにも覇気がないんだよな、この人達。
仮に僕を陥れようとしているにしても、何が何でもって感じに見えない。さっきからマリアのアラが暴露されているのに、口を挟んでまで何かを言わなきゃ、って様子もない。

 僕の願望がかなり含まれた見解だけど……この人達も本当は、マリアに手を貸すのがイヤなんじゃないか?

「殿下」
ラッセン嬢が口を開く。
 すっかり場に飲まれていた殿下達が、ハッと気付いたように呼びかけに応えた。
「な、何だ?」
「殿下達がご友人を救いたいというお気持ちは、十分に伝わりました。
ですがこの問題はお2人に任せましょう? 双方にどのような非があるとしても、婚約を解消するかどうかはご当人達の問題です。まぁ仮に……」
と言葉を切るとごく普通の口調で、でも皆に聞こえるように次のセリフを言った。

「ナルシトさんが婚約破棄とは別に、殿下達の気を引きたいが為、もしくは自分が殿下に大事に思われていると周知させる為のデモンストレーションを狙っているとしたら別ですが」

「なっ!」
マリアはビクッと顔を引きつらせ、でも次には怒りの形相でラッセン嬢を睨み付ける。
「し、失礼だわ! いくら高位貴族だからって……!」
「仮に、と申し上げましたわよ」
「それでも言い方ってものがあるでしょ!!」
 え? マ、マリア……ちょっと口の聞き方、ダメだよ? 相手は公爵家のお嬢様なんだって! つい、いつもの調子で言いかけて……止めた。
「……アイツ、公爵家のお嬢様相手によくあんな言い方出来るな……」
エドが隣で感心したように呟く。
でもラッセン嬢は気を悪くするどころか楽しげだ。
「これは私の想像でしかないけど、貴女とオリガ様との婚約破棄は出来ても、“今までと同じ”とは行かないでしょうね。この度のことで殿下達も、貴女のずいぶん活発な一面も垣間見れた事ですし?」
「!!」
その言葉にマリアが背後を見ると、王太子殿下や宰相ご子息、騎士団長ご子息が、引きつった表情でマリアを見つめていた。
……さっきまでとまるで違う。
 確かに、彼女らが語ったマリアの隠れた一面、格上のラッセン嬢に対する態度……。
殿下達はマリアに執心しているから庇うかもと思ったけど、固い表情でマリアを見ているだけだ。
「頑張って言い訳を考えなくてはですね……」
青くなったマリアに、ラッセン嬢がにやりと笑った。

 「……失礼する」
王太子殿下がクルッと向きを変え、扉に向かって歩き出した。残りのお二方もそれに続く。
「ま、待って皆……!」
「マリア」
慌てた様に掛けだそうとしたマリアに、僕が静かに声をかける。
マリアはギッと睨んできた。……そんな顔も初めて見た。本当に僕は、君の事を何も知らなかった。
「今日の事は父さん達やおじさんに報告させてもらう。いつもは“黙ってて”あげてるけど今回は無駄だからね。……でも婚約破棄は出来ると思うよ」
“いつもは黙っててあげてる”って言ったところで殿下達の足がピタリ、と止まる。
「そんなに僕と結婚したくなかったんだ。気付かなくてごめんね? でももう終わりだから」
 そう。マリアは僕だけじゃなく、僕の大事な家族さえも巻込んで冤罪を着せようとした。
 家族は関係無い? そんな訳ない。前世でもそうだった。
世間で犯罪者の家族は、犯罪者と同じ程度に扱われる。
君は――僕だけじゃない、僕の家族さえも冤罪に巻込んだ。それを自覚して欲しい。

僕の気持は伝わらなかったんだろう。
マリアは僕の言葉を聞き終えてから、“……バカじゃないの?”って小さく呟いただけで、王太子達の後を追った。

 「……好きだったのになぁ……」
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