この世界のスキル・アイテム“オリガミ”の秘密は僕だけが知っている

みけの

文字の大きさ
27 / 27

仲間と一つになって

しおりを挟む
 ほんの散歩のつもりが、気がつけば昼近くになっていた。
玄関の扉を開けたら、母さんが腰に手を当てて仁王立ちしていた。うわ、あの顔はめっちゃ怒っている。
「どこに行ってたの!」
思った通り、怒鳴られた。耳の奥がキィンとする。
「ご、ごめん……」
タジタジと後じさりながらそれだけ言う。と、少しだけ落ち着いたように肩から力を抜いた。
「はあ……その様子だと、変な考えを起こしたって訳じゃあなさそうね」
「!」
 そう、だった。
僕は婚約者に濡れ衣を着せられ、国のトップに睨まれている存在。色んな意味で絶望する要素がある。そう思って、心配をかけていたんだ。
「…………ごめん……」
「良いのよ? と言うかすぐそのしょぼくれた顔を直して! あなたにお客様よ!」
「え?」
 僕に?

 「よ! カヤラ待ってたぜ」
「エド! ……と……」
「オリガ君、お邪魔してまーす!」
 客間に行けば、そこにはエドと、昨日僕の味方になってくれた女の子達。そしてクラスメートの子が何人か。皆明るい顔で、僕に手を振ってくれる。
 ってか、どうして皆がウチに? 理解が追いつかない僕にエドが
「いやあ……朝一で今日お前んち行く、って連絡はしたぜ? “俺以外にも数人きます”って付け足して。
 ――で、来たのは良いが、お前は部屋からいなくなってて、おばさん達は昨日の今日だからすっげぇ慌ててよ。取りあえずは待ってみようって事になって、今までまんじりともせず時間つぶししてたって訳だ」
 と、ここで説明を区切る。そうかぁ……僕的に散歩だったのが、すごくメチャクチャいらない心配をかけてたんだな……。
 と、謝罪するより先にエドが両手を打ち鳴らして宣言する。
「まあこうやって当人が来たんだから俺らはする事をしよう!」
「する事って?」
反射的に訊いた僕に、エドは自信満々に言ってのける。

「決まってんだろう! 作戦会議だ!」

 え、作戦会議?
呆然とするだけの僕を前に、エドが拳を振って力強く語る。
「今回の件、カヤラも俺らも格下って事を考慮しても、王太子殿下達は昨日の事を撤回してはくれないと思う」
「王家の方々はメンツがあるものね……」
ヒルデ嬢が同意する。そうか……やっぱり僕は……。
「で、ならこっちは数で結託するしかない! って事で皆に声かけたんだ。喜べカヤラ! お前には味方が多いぞ」
マイナス思考に陥りかけた僕にニッて歯を見せて笑うエド。彼と一緒に笑う人達。
 その優しさがすごく嬉しい。けど……!
「ぼ……ぼくは」
恐る恐る僕が言うと、皆の視線が集まる。居心地悪く感じながらも、何とか言葉を絞り出す。
「僕は……戦っても、良いのかな……?」

 家族と僕自身の今の幸せを守る為にできる事。
それは僕だけ逃げ出す事しかない、そう思っていたのに皆は全く別の事を思っていた。
 それは……無実なら、その信念を貫き通すこと。
「なぁに言ってんの! あなたが悪い事していないなら、やられっぱなしでいる事ないわよ。確かに私達は下っ端だけど、やろうと思えばやれるわ」
女の子の1人がグッと拳を突き出し強気な口調で言ってくれる。そんな皆を見ていたら、何だか力が湧いてきた。
 ――そうだな、立ち向かわないと。

 そう言えばこの雰囲気……、前世では経験出来なかった事に似ている。
そう、運動会や体育祭。みんなで頑張って一つのイベントをこなす事。
 転生してからは当たり前のように思っていたけど、前世の僕はこれらに参加した事は無かった。運動会に限らず、体を動かすことは禁止されていたから。
ずっと見学ばっかりだったから、たまに体調が良い時に参加出来ても失敗ばかりで白い目で見られるから、楽しむ余裕なんて全くなかった。
 皆で同じ事をする、って事に、楽しさを感じたのは初めてだった。
……とと、いけないまた感傷にひたるとこだった。
取りあえず、今朝の事を説明しておこう。と皆を見渡す。

「……みんなに、聞いて欲しい事があるんだ。実は今朝……」

 「そんな外道な真似してやがったのか、あの女は」
エドが口をへの字に曲げた。皆の顔にも同じように、怒りの感情が見える。
「まさか弱味を握るなんて」
「王太子殿下達も、もしかしたら」
「……いえ、それはないわ。そんな必要無いもの。王族の弱味を握ってる人間は……これで済むでしょ」
言いつつ首を手刀でシュッと切る真似をした子に、他の面々が青くなる。
「うげっ!? でも、なら騙されているだけって事かぁ」
「言っちゃあ悪いけど趣味悪過ぎぃ~。ラチェット様ほどでなくってももう少し良い相手いるでしょうよ……」

色んな意見が交わされる。

 証人は脅迫されているなら、こっちに寝返ってくれる可能性は捨てた方が良いな。
シュミット君みたいに自分じゃ無く、身内の場合は尚更だ。


――『オリガミ』でも、自白剤は作れないだろうしね……。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...