デリートできるなら喜んで、その願い叶えてみせます

奏 リヤ

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錆びた感情、記憶の片隅にある笑顔はハリボテ

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 カイリは、面倒見が良い。困ってる人を放っておけないらしい。女子どもなら、たいてい拾ってしまう。
 人たらし。だけど、賊。ある程度の年齢の女なら、うっかり手を付けてしまう、女の敵。そんな感じなのに、手をつけた女からは憎まれない。不思議な人。
「で、やってしまったわけだね」
 ヒイラギは、やれやれと呆れながら、私とカイリを交互に見た後、美少女に近付いた。
「そのままじゃ、話しにくいよね。カイリ、服を渡してやりなよ」
 カイリは、適当に羽織るものをヒイラギに渡した。美少女は、ヒイラギが差し出したそれを見ると豪快に飛び出してきて、さっきまでの恥じらいは嘘のように着替え始めた。
 傷だらけの背中や腹部、腕や脚は擦り傷が新しいのから古いのまである。貧しかったのか、全体的に華奢で骨ばっている。けれど、何故か……むかつくことに……豊満な胸。それが顔つきと反比例していて、なんだかむかむかした。
「あなたは、何歳?」
 私は、武器よりも美少女が気になっていた。むかつきをすっきりしないと、武器と向き合えない。
「じゅうろく。んー、違うかも。じゅう、はち?」
 美少女はカイリを見た。首を傾げる様はあざとい。でも、それは故意ではなく天然らしい。
「多分、十八歳。去年の暮れに街の外れの娼館で給仕をしていたのを見かけた。その時はまだ、仕事はそれしか許されてないと言っていたから、そういうことだろう。とはいえ、ガキの頃の記憶は曖昧で、正式な出生の届らしいのもない。メイプルもそうだったろう」
 うん、そうだね。
 私は小さく頷いた。
 美少女は、私の声に笑顔を向けてきた。仲間意識かもしれない。でもさらにむかむかしてきた。
「で、この子がなぜ、こんな凄い武器を持っていたのか、わかってるのかい?」
 ヒイラギは、私が不機嫌になったのを察して話を進めようとした。
「この子の耳の後ろに痣がある。この細剣の鞘にある紋章と同じだろう。でも、痣は故意に半分消されてるようだ。ワケアリってこと」
「その訳ありな武器をメイプルに渡して大丈夫なのかい?」
「この子が、これの所有を放棄したいと言ってる」
 部屋に沈黙がおとずれた。
 美少女は、それを打ち消すように髪をかきあげ、耳の後ろの痣を見せつけた。
 ヒイラギが近付き、それを凝視する。
「鞘の紋章は、私は見たことがない。そうなると、この世界の果ての国のものだと、推測できるけど。この痣は、生まれた時からあったものだろうね。それを焼印か何か、或いは魔法かもしれないが、半分だけ消したようだ。痣を半分にする意味はあるのか……」
 ヒイラギが、ぶつぶつと一人で考えこんでいる。カイリはその隣で美少女の頭を撫でる。
「痣を、全部消したらどうなる?」
 私は意地悪っぽく呟き、美少女に笑顔を向けた。ハリボテの笑顔でしかない。私は、喜怒哀楽の感情をうまくあらわせないから、とりあえずの笑顔しかない。それは、ヒイラギか学んだ。女は笑顔だ、と。
 そしておもむろに、細剣を手にして美少女の耳の後ろに斬りつけようと構えた。
「いやああああ」
 美少女は激しく暴れ始め、自分の頭を描きむしりながら、奇声をあげた。
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