【心】ご都合主義で生きてます。-商品開発は任せてください。現代知識を使い時代を駆け上る。-

第1章 転生

第12話 実演販売と算術

　俺はメイドのカルロッタと、商会の従業員を2人連れ井戸に向っている。
　カルロッタは洗濯物と桶を抱え、俺と従業員は洗剤と洗濯板を何枚か持って歩く。

　井戸の周りでは水を汲む人や、汚れ物を桶に入れ踏んだり叩いたりして洗濯をしている人が居る。
　俺達は桶に水を汲み石鹸をこする。
　するとみるみる内に洗剤の泡が出る。

「さあさあ、皆様お立ち合い。今まで重労働だった洗濯も、これで簡単にできます」
　周りの人達は興味深そうにそれを見ている。

「それは何だい？」
　1人のおばさんが聞いてくる。
「これはフロリオ 商会で今度、販売する洗剤と言う物です」
「洗剤だって？」
「そうです。油汚れも落ちこの洗濯板を使えば、更に簡単に洗濯ができるんです」
「ほう、そんなことができるのかい？！」
「さっそく、洗ってみますね」
　俺達は実際に洗濯を始める。

　ゴシ、ゴシ、ゴシ、ゴシ、ゴシ、
　じゃぶ、じゃぶ、じゃぶ、じゃぶ、

「おぉ、本当に泥汚れが落ちていくよ」
「でも値段が高そうだね？」
　周りで見ている主婦達が騒ぎ始める。

「そんなことはありませんよ。みなさんが買えるくらいの価格ですから」
「ほう、そうなのかい」
「ご希望の方はこちらへどうぞ！！」
　俺は従業員と持って来た洗剤と洗濯板を並べた。
　娯楽の無い世界でだから、人がたくさん集まりすぐに売れてしまった。
　実際に使っているところを見せて売る実演販売は成功だ。
　

　その日から洗剤と洗濯板を買い求める人がやって来た。
　この世界では洋服は何年も長く着る。
　洗剤と洗濯板を使う事で生地の痛みも少なく、長く着れるならそれに越したことはないからだ。

　店に定期的にお茶を飲みにやってくる貴婦人にも宣伝をした。
　俺たち家族は店で着る服は、花のエキスを入れて作った洗剤で洗っている。
　その香りが気に入ったのか、貴婦人たちが自分達用に購入して行ってくれる。
　洗剤を作るために人を雇い、商会はまた少しだけ大きくなった。

　毎日、店番をしている俺も顔なじみの人が多くなった。
　青白かった顔色も良くなり、一日三食を食べる事で体力もついて来た。
　驚かれたのは、俺の算術の速さだ。
　この世界は成人であっても、小学生レベルの計算問題が解けない人が多いからだ。 

　そしていつの間にか仲良くなった、出入りの商工会の人と話が弾む。
　ここで言う商工会の人と言うのは、お金を持っている人達のことだ。
　親や実家が金持ちで、投資をできるくらいのお金を持っている。
　我が家に来ていれば色んな人が出入りしており、儲けに繋がることがあるかもしれないとやってくる。

　いつの間にか子供や孫たちの話になった。
　10歳の孫がいるが計算ができないと。
　12歳で学院に入学だから、勉強はそれからでも良いような気がするが。
　それでも心配らしい。

　　いつの間にが店に孫や子供達を、連れてくる人が多くなった。
　自分と同じ年くらいの子が店番をし、計算ができるところを見せてやる気を出させたいらしい。
　勉強は先に進んでいることで、安心するものらしい。

　教えてほしいと言われ仕方が無いので、仕事の合間に算術教室を始めた。
　一桁の足し算と引き算なら簡単だ。
　果物やパンなど具体的な例で教えていく。
　3つあるりんごから1つを食べれば減るとか、逆に1つもらったら増えるなど、目で見て覚えてもらうやり方だ。
　計算はイメージが大切だからね。

　加減算がある程度出来るようになったら、九九を教えていく。
　日本の九九が優れているのは、調子をつけて覚えられる点だ。
　九九を覚え暗唱していれば、歌詞から掛け算を覚えることができる。

　そして気が付くと塾生が増えていった。