半精霊の側妃

井草千影

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第1章

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 穏やかな午後。
 港を守る騎士から、船が見えたとの報告が来た。
 海賊ならいつものように海に沈めてやろうと待機していたのだが、掲げる旗はアロガンシア大帝国の国旗。
 沈めるわけにはいかず、妹のフルールが港に向かい、姉のグロリアは謁見の間と会議室、そして客室を整える指示を出した。
 ヴィオラは精霊をあちこちに遣り、警戒を強めていた。

 大帝国の船で入国したのは、皇帝より勅命を受けた使節団。
 彼らは、イリニ王国を揺るがしかねない手紙を持ってきた。
「『精霊の神子』を皇帝の側妃に?」
 グロリアは驚きのあまりつい口に出してしまい、側に控えていたフルールがぎょっとした。
 なんとか笑みを作り、使節団に向き直る。
「まずは遠路はるばるイリニ王国へようこそ。返事は明日の昼までには出しましょう。大したおもてなしは出来ませんが、旅の疲れを癒してくださいな。」
 使用人に指示を出し、すぐにでも返事を聞きたそうな使者を謁見の間から退出させた。

 それを見届けたグロリアの顔は、恐ろしいほどの無表情だった。
「正気を疑うわね」
 フルールもそれに同意した。
「側妃の件はともかく、先触れも出さず、こちらの都合も聞かず、いきなり王宮に押し掛けるなんてどんな神経をしているのでしょう。」
 フルールは、こういった作法に大変厳しい。
「港も大騒ぎだったようね。」
「ヴィオラから聞きましたか? ええ、もう大変でしたわ。」
 客船用の港をスルーし漁港に船をつけた事。
 降りた瞬間に、自分たちの間違いを棚に上げて、港が見窄らしいと言い、船を付け直す時も渋々で、漁師や港の者に謝罪もせず、逆に案内が悪いと怒鳴った。案内を無視したのは自分たちであるのにだ。
 その後も、港近くのホテルで待つよう言ったのに、民を散らしながら王宮に向かい、門番と先触れのありなしで一悶着起こり、ホテルでの待機を再び命じられたにも拘わらず暴れ出し、その際に王宮の準備が整った為、門番に「待たせやがって」「入っていいんじゃねえか」と暴言を吐いた。
 なお、これらの情報は、ヴィオラが国中に遣わした精霊からの情報である。
「ヴィオラは激怒していますよ。今は落ち着いていますが、合わせたらその場で爆発しそうです。」
「そうでしょうね……。まあ、彼らは明日の朝までホテルから出さないように指示を出したから、しばらくは落ち着けるでしょう。さあ、会議室に向かうわよ。貴女はヴィオラを呼んできてちょうだい。」

 その後、数時間に及ぶ会議を経て、側妃の話を受ける方向で話がまとまった。
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