35 / 72
第4話 菜園荒しを捕まえろ
8 再び、ゴブリーの集落へ
しおりを挟む
プリンを飼い始めてから数日が経った。
「クリムベール、そいつの躾がきちんとできないようなら、今すぐに野にかえすんだ。もうこれ以上は我慢ならん」
アレックスは派手に散らかった書斎の片づけをしながら、無表情に淡々とクリンちゃんを咎める。
書斎の散らかりようは半端ではない。まるで空き巣に部屋を引っかき回されたような有様だ。プリンの仕業である。
「ヤダッ! プリンちゃんは、ずっとず~っと、うちの子だもんっ!」
プリンを抱っこしたまま、クリンちゃんはアレックスに食ってかかる。
「たった数日でそいつは私の書斎を十二回も荒らしたのだぞ? お前の監督不行き届きだ。そして溺愛のし過ぎはそいつのためにもならない。時には厳しく躾ることも必要なのだ。それができないようであれば、生き物を飼う資格はない」
アレックスは念動力の魔法かなんかで散らばった本を書架にしまいながら、クリンちゃんを見据える。
「ちゃんとしてるもん! もうこんなことしちゃダメだよ、って毎回毎回プリンちゃんに言い聞かせてるもん……!」
アレックスの正論だけど厳しい物言いに、クリンちゃんは涙を滲ませている。
「この子、普段はおとなしいし、食事やトイレの躾は完璧よ? なのに、なんでこんなイタズラは、何度注意しても繰り返してやるのかしらね……」
ノイアさんは奇妙だという感じで腕を組む。
「プリンちゃんの言葉がわかるといいのにな。そうしたら、どうしてこんなことするのか、わかるのに……」
クリンちゃんが寂しげな瞳でプリンを見つめ、ぽつりと呟いた。
「ねえ、アレックス、動物の言葉がわかるようになる魔法とかはないの?」
「言語に関する術か……。残念だが、私はその方面には疎くてな。その手の術なら、ロートレックの奴が得意なのだが、間の悪いことに、奴は今、司書仲間と慰安旅行などというものに現を抜かしている最中だ。そういうわけで、奴の協力は仰げんぞ。まったく、どこまでも使えん奴だな」
アレックスは忌々しそうに、なんの非もないロートレックさんをなじる。
「じゃあ、そういう力を秘めた道具とかはないわけ? あんた、魔導具の類をいっぱい持ってるじゃない」
今度はノイアさんが訊いた。
「ああ、そういえばあったな。確か、ゴブリー族に伝わる秘薬だったか……」
「ゴブリーって、この間行った村の?」
「そうだ。度重なる悪戯被害の慰謝料代わりとして奪い……いや、受け取った魔導具のレシピ集に、そんな薬の生成法が記されてあった」
え、何? 今『奪い……』って言って言い直した? ちょっと! 受け取ったんじゃなくてホントは強奪したね!?
アレックスは書架を引っ掻き回し、そのレシピ集を探すが、
「見つからんな……。ああ、そういえば、特に必要性も感じなかったから、以前書物の整理をした時に処分したのだった。残念だったな」
ちっとも残念そうではない感じでアレックスはしれっと言った。
「村に行けば、作り方を教えてくれるかしら?」
「ああ。長が知っているだろう」
「決まりね! じゃあ今から作り方を聞きに行きましょう」
ノイアさんは手をパンと叩く。
「何が決まりだ。私はそんな面倒なこと、したくないぞ」
何こいつ? ほんと空気読まない奴だよね? 普通この流れでそういうこと言う!?
「はあ!? どうしてそんなこと言うのかしら? その秘薬を使えば、あんたの書斎だってもう荒らされなくなるかもしれないのよ? そんなこともわからないの? あんた、もしかして馬鹿?」
私が思っていたことを、ノイアさんが代弁してくれた。
「それだけではない。先日、私達は菜園荒らしの容疑で奴らの集落に押し掛け、長をカンカンに怒らせた挙げ句、果ては命まで奪おうとしたのだ。それなのに今更『秘薬の生成法を教えてくれ』と訪ねるのも虫のいい話。そう、あれだ……、非常に気まずい」
アレックスは気まずさが全く現れてない無表情顔でしれっと言った。
「それは全部あんたが悪いんでしょ!? つべこべ言わず、今から行くわよっ!」
ノイアさんがアレックスの胸ぐらを掴み上げて怒鳴った。
「……仕方ない。これ以上書斎を荒らされるのは御免だからな」
ノイアさんに押し切られる形で、アレックスは渋々ゴブリーの村に行くことを了承した。
☆★☆
村に到着すると辺りは静まり返っていた。数人のゴブリーが物陰から、何やら怯えた感じでこちらを見ている。この間の一件を引きずっているのだろう……。アレックスの奴、マジで村長のこと殺りそうだったしね……。
当のアレックスは、そんなことなど既に過去の出来事らしく、気にも留めていない様子だ。
私達は一直線に村長の家へと向かった。
「ナンヤ、レックスハンカイ。サイキン、チョクチョク、ヨオクルノォ」
村長は特に怯えた様子もなく、嫌な顔もせずに、ごく自然に迎えてくれた。
ってゆーか村長! アレックスの名前、また間違って言ったね!? 数日前に指摘されたばかりじゃん! もう、正しく覚える気ないの!?
「だから、私の名はアレックスだ。数日前に指摘したばかりにもかかわらず、まだ正しく覚えられんとは……。もしや貴様、ボケでも始まっているのか? これ以上悪化する前に、さっさと長の座を降り、他の奴に任せることだ」
アレックスは気まずいと言いながらやってきたくせに、またまた名前を間違われたことに腹を立てたのか、嫌味ったらしく毒づいた。
「クリムベールチャン、ノイアチャン、ユウコチャン、ヨオキタノォ♪ ママ、ユックリシテッテヤ~♪」
村長はアレックスの悪態を華麗にスルーして、私達と握手をする。
って、村長! 私とノイアさんの名前はバッチリ正しく覚えてんじゃん! やっぱり女の名前しか、ちゃんと覚えらんないの!?
「今日、ここへ来たのは──……」
アレックスは早速本題に入ろうとするが、肝心の村長は、
「イマ、チャヲイレルデナ~♪」
と、いそいそとお茶を用意し始めている。
「聞いているのか? 長よ」
アレックスは村長の背後に立つと、ひょいっと片手で村長を持ち上げた。
あんた……、さっきから無視されてるから怒ってるの? 無表情だけど、これはもう完全にキレちゃってるよね?
「チャントキイトルワイ。ハナシナラ、チャヲノミナガラデモエエヤロ?」
「必要ない。用件が済んだら我々はすぐに帰る。用件はすぐ済む」
アレックスは村長を持ち上げたまま淡々と言った。
菜園荒らしの顛末を交えつつ、秘薬の生成法を教えてほしいと村長に頼んだ。
「ホゥ、ププカトハ、メズラシイノゥ。シカシ、ヒヤクノレシピハ、タダデハヤレンナ」
「なんだと?」
「カンガエテモミィヤ。アンサン、コナイダ、ワシラノコトウタガッテ、ワシニブレイヲハタライタンヤデ? シカモシマイニハ、ナニヲチマヨッタノカ、アンサン、ワシノコト、コロソウトシタヤナイカ。ソレナノニ、タダデレシピヨコセナンテ、ソナイムシノイイハナシハ、トオランヤロ」
「ならば、いくら出せばいい?」
「ワシハ、カネニハ、キョウミアラヘン」
「……では何が望みだ?」
アレックスの言葉に村長はクリンちゃんの前に立ち、
「クッ、クリムベールチャンノ、チ、チチヲ、モマセテクレタラ、レシピナンゾ、イックラデモ、クレテヤルワイ♪」
と、だらしなく目尻を下げ、わきわきと、いやらしい手つきで揉む仕草をする。
何この村長!? とんでもねーエロ親父じゃねーか! 羞恥心もなく乳揉ませろって、メガトン級のセクハラ爆弾を炸裂させんなよ!
「えっ……!?」
クリンちゃんは村長のトンデモエロ発言に面食らって、目を丸くしている。
「駄目だ」
アレックスがクリンちゃんを守るように制し、きっぱりと言った。そして、ノイアさんを一瞥し、
「この女で我慢しろ」
と、言い切った。
んなッ!? アレックスも何考えてんの!? クリンちゃんはダメだけど、ノイアさんならいいってか!?
「ふっ、ふざけんじゃないわよ! いきなり何言い出すのよ、あんたッ!」
当然ノイアさんはアレックスの胸ぐらを掴み上げて、猛烈に抗議する。
「別に構わんだろう? お前が犠牲になれば、これでめでたく秘薬のレシピが手に入るのだ」
胸ぐらを掴まれたままアレックスはしれっと言った。
「恋人でもない男に、身体を触られるなんて絶対に嫌よ!」
「お前、病を患った親のためなら、窃盗行為に手を染めていたではないか。ならば今度はその気概を、レシピ入手のために向け、一肌脱いでくれ」
「嫌よッ! 大体この間の一件は全部あんたが悪いんだから、あんたが犠牲になればいいじゃない! 罪滅ぼしと思ってね! それが道理ってもんでしょ!?」
ノイアさん……その発言は、なんかずれてます……。
「キショイコトイワントイテヤ。オトコノチチサワッテモ、ナ~ンモタノシュウナイ。ソヤネ、コノサイ、ノイアチャンデモエエヨ♪ モ・マ・セ・テ・ヤァ~♪」
村長がノイアさんににじり寄る。
「嫌だって言ってるでしょ? あんたもつけあがるんじゃないわよ。さっさと秘薬のレシピをよこしなさい。そうしないと、アタシの石化の視線で石になってもらうわよ?」
ノイアさんは村長の胸ぐらを掴み、左目の魔眼をチラつかせながら、怒りに満ちた静かな声で言った。
うわ、ノイアさん、完全にキレちゃったよ! 脅迫までしちゃってるしっ!
「ヒッ……、ヒイィ! ワ、ワカッタワイ! レシピ、クレタルカラ、カンニンシテヤ~!」
村長は情けない声でそう言うと、素早い動きで戸棚から大人の顔くらいの大きさの葉っぱを取り出し、ノイアさんに渡した。
葉っぱには見たこともない文字で何やら書かれている。これがレシピなのか。
「ア・リ・ガ・ト♪」
ノイアさんはレシピを受け取ると、村長に色っぽく微笑んだ。
村長は脅迫されたのにもかかわらず、ノイアさんの微笑みを見てデレ~っと締まりのない顔をしている。村長……、どんだけ女好きなのよ……。
こうして、村長から秘薬のレシピを脅し取る形で入手し、私達はゴブリーの村を後にした。
「クリムベール、そいつの躾がきちんとできないようなら、今すぐに野にかえすんだ。もうこれ以上は我慢ならん」
アレックスは派手に散らかった書斎の片づけをしながら、無表情に淡々とクリンちゃんを咎める。
書斎の散らかりようは半端ではない。まるで空き巣に部屋を引っかき回されたような有様だ。プリンの仕業である。
「ヤダッ! プリンちゃんは、ずっとず~っと、うちの子だもんっ!」
プリンを抱っこしたまま、クリンちゃんはアレックスに食ってかかる。
「たった数日でそいつは私の書斎を十二回も荒らしたのだぞ? お前の監督不行き届きだ。そして溺愛のし過ぎはそいつのためにもならない。時には厳しく躾ることも必要なのだ。それができないようであれば、生き物を飼う資格はない」
アレックスは念動力の魔法かなんかで散らばった本を書架にしまいながら、クリンちゃんを見据える。
「ちゃんとしてるもん! もうこんなことしちゃダメだよ、って毎回毎回プリンちゃんに言い聞かせてるもん……!」
アレックスの正論だけど厳しい物言いに、クリンちゃんは涙を滲ませている。
「この子、普段はおとなしいし、食事やトイレの躾は完璧よ? なのに、なんでこんなイタズラは、何度注意しても繰り返してやるのかしらね……」
ノイアさんは奇妙だという感じで腕を組む。
「プリンちゃんの言葉がわかるといいのにな。そうしたら、どうしてこんなことするのか、わかるのに……」
クリンちゃんが寂しげな瞳でプリンを見つめ、ぽつりと呟いた。
「ねえ、アレックス、動物の言葉がわかるようになる魔法とかはないの?」
「言語に関する術か……。残念だが、私はその方面には疎くてな。その手の術なら、ロートレックの奴が得意なのだが、間の悪いことに、奴は今、司書仲間と慰安旅行などというものに現を抜かしている最中だ。そういうわけで、奴の協力は仰げんぞ。まったく、どこまでも使えん奴だな」
アレックスは忌々しそうに、なんの非もないロートレックさんをなじる。
「じゃあ、そういう力を秘めた道具とかはないわけ? あんた、魔導具の類をいっぱい持ってるじゃない」
今度はノイアさんが訊いた。
「ああ、そういえばあったな。確か、ゴブリー族に伝わる秘薬だったか……」
「ゴブリーって、この間行った村の?」
「そうだ。度重なる悪戯被害の慰謝料代わりとして奪い……いや、受け取った魔導具のレシピ集に、そんな薬の生成法が記されてあった」
え、何? 今『奪い……』って言って言い直した? ちょっと! 受け取ったんじゃなくてホントは強奪したね!?
アレックスは書架を引っ掻き回し、そのレシピ集を探すが、
「見つからんな……。ああ、そういえば、特に必要性も感じなかったから、以前書物の整理をした時に処分したのだった。残念だったな」
ちっとも残念そうではない感じでアレックスはしれっと言った。
「村に行けば、作り方を教えてくれるかしら?」
「ああ。長が知っているだろう」
「決まりね! じゃあ今から作り方を聞きに行きましょう」
ノイアさんは手をパンと叩く。
「何が決まりだ。私はそんな面倒なこと、したくないぞ」
何こいつ? ほんと空気読まない奴だよね? 普通この流れでそういうこと言う!?
「はあ!? どうしてそんなこと言うのかしら? その秘薬を使えば、あんたの書斎だってもう荒らされなくなるかもしれないのよ? そんなこともわからないの? あんた、もしかして馬鹿?」
私が思っていたことを、ノイアさんが代弁してくれた。
「それだけではない。先日、私達は菜園荒らしの容疑で奴らの集落に押し掛け、長をカンカンに怒らせた挙げ句、果ては命まで奪おうとしたのだ。それなのに今更『秘薬の生成法を教えてくれ』と訪ねるのも虫のいい話。そう、あれだ……、非常に気まずい」
アレックスは気まずさが全く現れてない無表情顔でしれっと言った。
「それは全部あんたが悪いんでしょ!? つべこべ言わず、今から行くわよっ!」
ノイアさんがアレックスの胸ぐらを掴み上げて怒鳴った。
「……仕方ない。これ以上書斎を荒らされるのは御免だからな」
ノイアさんに押し切られる形で、アレックスは渋々ゴブリーの村に行くことを了承した。
☆★☆
村に到着すると辺りは静まり返っていた。数人のゴブリーが物陰から、何やら怯えた感じでこちらを見ている。この間の一件を引きずっているのだろう……。アレックスの奴、マジで村長のこと殺りそうだったしね……。
当のアレックスは、そんなことなど既に過去の出来事らしく、気にも留めていない様子だ。
私達は一直線に村長の家へと向かった。
「ナンヤ、レックスハンカイ。サイキン、チョクチョク、ヨオクルノォ」
村長は特に怯えた様子もなく、嫌な顔もせずに、ごく自然に迎えてくれた。
ってゆーか村長! アレックスの名前、また間違って言ったね!? 数日前に指摘されたばかりじゃん! もう、正しく覚える気ないの!?
「だから、私の名はアレックスだ。数日前に指摘したばかりにもかかわらず、まだ正しく覚えられんとは……。もしや貴様、ボケでも始まっているのか? これ以上悪化する前に、さっさと長の座を降り、他の奴に任せることだ」
アレックスは気まずいと言いながらやってきたくせに、またまた名前を間違われたことに腹を立てたのか、嫌味ったらしく毒づいた。
「クリムベールチャン、ノイアチャン、ユウコチャン、ヨオキタノォ♪ ママ、ユックリシテッテヤ~♪」
村長はアレックスの悪態を華麗にスルーして、私達と握手をする。
って、村長! 私とノイアさんの名前はバッチリ正しく覚えてんじゃん! やっぱり女の名前しか、ちゃんと覚えらんないの!?
「今日、ここへ来たのは──……」
アレックスは早速本題に入ろうとするが、肝心の村長は、
「イマ、チャヲイレルデナ~♪」
と、いそいそとお茶を用意し始めている。
「聞いているのか? 長よ」
アレックスは村長の背後に立つと、ひょいっと片手で村長を持ち上げた。
あんた……、さっきから無視されてるから怒ってるの? 無表情だけど、これはもう完全にキレちゃってるよね?
「チャントキイトルワイ。ハナシナラ、チャヲノミナガラデモエエヤロ?」
「必要ない。用件が済んだら我々はすぐに帰る。用件はすぐ済む」
アレックスは村長を持ち上げたまま淡々と言った。
菜園荒らしの顛末を交えつつ、秘薬の生成法を教えてほしいと村長に頼んだ。
「ホゥ、ププカトハ、メズラシイノゥ。シカシ、ヒヤクノレシピハ、タダデハヤレンナ」
「なんだと?」
「カンガエテモミィヤ。アンサン、コナイダ、ワシラノコトウタガッテ、ワシニブレイヲハタライタンヤデ? シカモシマイニハ、ナニヲチマヨッタノカ、アンサン、ワシノコト、コロソウトシタヤナイカ。ソレナノニ、タダデレシピヨコセナンテ、ソナイムシノイイハナシハ、トオランヤロ」
「ならば、いくら出せばいい?」
「ワシハ、カネニハ、キョウミアラヘン」
「……では何が望みだ?」
アレックスの言葉に村長はクリンちゃんの前に立ち、
「クッ、クリムベールチャンノ、チ、チチヲ、モマセテクレタラ、レシピナンゾ、イックラデモ、クレテヤルワイ♪」
と、だらしなく目尻を下げ、わきわきと、いやらしい手つきで揉む仕草をする。
何この村長!? とんでもねーエロ親父じゃねーか! 羞恥心もなく乳揉ませろって、メガトン級のセクハラ爆弾を炸裂させんなよ!
「えっ……!?」
クリンちゃんは村長のトンデモエロ発言に面食らって、目を丸くしている。
「駄目だ」
アレックスがクリンちゃんを守るように制し、きっぱりと言った。そして、ノイアさんを一瞥し、
「この女で我慢しろ」
と、言い切った。
んなッ!? アレックスも何考えてんの!? クリンちゃんはダメだけど、ノイアさんならいいってか!?
「ふっ、ふざけんじゃないわよ! いきなり何言い出すのよ、あんたッ!」
当然ノイアさんはアレックスの胸ぐらを掴み上げて、猛烈に抗議する。
「別に構わんだろう? お前が犠牲になれば、これでめでたく秘薬のレシピが手に入るのだ」
胸ぐらを掴まれたままアレックスはしれっと言った。
「恋人でもない男に、身体を触られるなんて絶対に嫌よ!」
「お前、病を患った親のためなら、窃盗行為に手を染めていたではないか。ならば今度はその気概を、レシピ入手のために向け、一肌脱いでくれ」
「嫌よッ! 大体この間の一件は全部あんたが悪いんだから、あんたが犠牲になればいいじゃない! 罪滅ぼしと思ってね! それが道理ってもんでしょ!?」
ノイアさん……その発言は、なんかずれてます……。
「キショイコトイワントイテヤ。オトコノチチサワッテモ、ナ~ンモタノシュウナイ。ソヤネ、コノサイ、ノイアチャンデモエエヨ♪ モ・マ・セ・テ・ヤァ~♪」
村長がノイアさんににじり寄る。
「嫌だって言ってるでしょ? あんたもつけあがるんじゃないわよ。さっさと秘薬のレシピをよこしなさい。そうしないと、アタシの石化の視線で石になってもらうわよ?」
ノイアさんは村長の胸ぐらを掴み、左目の魔眼をチラつかせながら、怒りに満ちた静かな声で言った。
うわ、ノイアさん、完全にキレちゃったよ! 脅迫までしちゃってるしっ!
「ヒッ……、ヒイィ! ワ、ワカッタワイ! レシピ、クレタルカラ、カンニンシテヤ~!」
村長は情けない声でそう言うと、素早い動きで戸棚から大人の顔くらいの大きさの葉っぱを取り出し、ノイアさんに渡した。
葉っぱには見たこともない文字で何やら書かれている。これがレシピなのか。
「ア・リ・ガ・ト♪」
ノイアさんはレシピを受け取ると、村長に色っぽく微笑んだ。
村長は脅迫されたのにもかかわらず、ノイアさんの微笑みを見てデレ~っと締まりのない顔をしている。村長……、どんだけ女好きなのよ……。
こうして、村長から秘薬のレシピを脅し取る形で入手し、私達はゴブリーの村を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる