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26 目指すは…
しおりを挟む「姉様!!」
フリーシャは自分の叫び声で目を覚ました。
『どうした』
白龍の声で我に返る。
そろそろ夜が明ける。竜の背でついうとうとしていたらしい。
とても寝心地が良いとは言えない場所だというのに、うたた寝しまうとは、それほど疲れていたのだろうか。
緊張の糸が張り詰めていて、フリーシャ自身はそれほど疲れている自覚はなかったのだが。
「ごめんなさい、ちょっと眠ってしまっていたみたい」
『大丈夫だ。眠れるのならもう少し寝ておいた方がいいかもしれない。寝不足では魔王のもとにつく前に倒れるかもしれない』
「ありがとう。もう大丈夫。だいぶすっきりしたみたい」
フリーシャは気を引き締めた。
確かに、休める時に休んでおいた方がいいだろう。けれど、一度目が覚めてしまうと、どうしてもそんな気分にはなれなかった。
夢見が悪かった。未だ心臓がドクドクと早鐘を打つ。マーシアのことが気になって、無理に眠ろうとしても今度は眠れそうにない。
それに、思った以上に体は疲れているようだが、協力して飛び続けてくれている白龍のことを考えれば、十分なほどだった。
夢を見た。
一人で震えているマーシアの夢だった。彼女は震えながらフリーシャを呼んでいた。
姉様。必ず助けるから。
フリーシャは改めて心に誓う。
きっと間に合うから、そしたら、なんとしてでも助けてみせるから。
フリーシャは遠くにかすむ山の頂を見据え、まだ見ぬ憎き魔王と、震えるマーシアを思う。
しかし、魔王はなぜマーシアを花嫁にしようなどと考えたのか。
腑に落ちなかった。マーシアを心配するにつけ、その疑問はつきまとっていた事だった。
確かに、マーシアは美しい。人間の造作とは、ここまで美しくなるのだと驚くほどに。毎日見ていても、あらが見つからないほどに美しい。
それでも、フリーシャは納得がいかなかった。
フリーシャの知る魔王像と、どうしても結びつかないのだ。
フリーシャは、自分の力が人間離れしていることを自覚している。もしや自分は魔物に近いのではないかと、魔術や魔物に関することにも興味を持って調べていた。氷の花嫁について知ったのも、その時だ。
噂を聞いたり記述を見る限り、魔王は人間に対して興味がないのではないかと想像していた。
興味がないと言うより、むしろ煩わしいと思っているのでは、というのがフリーシャの考えだ。
魔王が人との関わりを持とうとせず、更に人との争いを避けるのは煩わしいだけではないかと。
アトールが言っていた「話が分からない存在でもない」という言葉も、関わらずに済ませる手段ではないだろうか。
確かに、魔王は人間と対話することで争いを避ける節が、ちらほらと文献にも見受けられた。
それを「魔王は人間が恐ろしいのだ」と言ったり「人間を好きなのではないか」と言ったりする者もいるようだが、フリーシャはそうは思わなかった。
そんな感情的な理由であるはずがないと、直感的に思っていた。
魔王が人間を避けるのは、人間が虫を厭うような感覚に近いのではないかと思うのだ。
魔王にとって人間とは、たかってくる蠅や蟻のような存在ではないかと。
ちっぽけで、矮小な存在。追い払うことさえ厭わしい。しかし、自ら人間(むし)が寄ってくるような行動も取らない。そのために人間の言葉にも耳を傾けるだけの余地を残している、ただそれだけ。
フリーシャの思う魔王像とは、そういう存在だった。
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