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呪界団地編 シーズン2

9話

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2人は奥の部屋を目指し進んで行くのであるが、壁から顔が出てきたり、床から手がはえてきたり、様々な人の声がざわめきとなり、正気を保つのを妨げるのであった。

本当にここが最上階の13階なのかも信じられなくなる。

「そういえば、京子は元気なのか」

風間がジレンマに京子のことを尋ねる。
前は恋人に近い間柄であったが、どちらも決定づける一言を言わないので曖昧な関係に周りは見えていた。

「彼女は相変わらずですよ、たまには会ってあげたらどうですか?だいぶ助けられてきたじゃないですか?」

「あいつといると本来の自分を見失うから、偶然バッタリ会う程度でいいんだよ」

そう答える風間の首筋には大量の汗が流れている。気を紛らわすために京子の話題を出してきたが、彼はジレンマよりはるかに霊的なものに対して感度がいい。
霊感というものはラジオのチューナーのようなもので霊感が強ければ強いほど、受信できるチャンネル数が多くなり、弱いものまで拾ってしまう。

そんな風間にとって奥の部屋が数十メートルだが、群衆をかき分けながら進んでいる状態に違いない。

「風間くん大丈夫?」
 
「何がだ?」

強がってるのかジレンマの問いかけに素直に答えない。

(ガンガン!)


ジレンマの通り過ぎた部屋のドアがものすごい音が鳴る。
その瞬間ジレンマは意識が薄れて倒れ込んだ。

どれくらい倒れていたのか、ジレンマはゆっくり体を起こす。

一直線の廊下には風間の姿は見えない。

「風間くん⁉️」

耳を澄ますが返事がない。

(ガン‼️  ガン‼️ あぁぁぁぁ)


目の前の扉から先ほどのような何かを叩きつけるような音が2階、そしてその後に虫の息のような声がした。

扉と床の隙間から赤黒い血が流れてくる。
夢なのか現実なのか。

「あっ!」
ジレンマが思わず声を上げる。

「誰かいるのか?」
扉の向こうから、男性らしき声が

「助けてください!」
子供らしき声もする。

「うるせい!引っ込んでろ」

鈍い音と共に、男性が罵声を上げる。

只事ではないと思いジレンマは扉、叩き
大丈夫ですか?何かありましたか?と中の人に声をかけた。

だが返事はない。

「お母さん。。。」
扉のすぐ横で子供の声がする。

ジレンマは扉のノブに手をかけ回すと鍵がかかってない。

ゆっくりと扉を開けた。
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