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京へ

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 越前から帰還した源太郎一行は、数日、那古野城で休息をとると、土岐頼芸と土岐頼純を伴い近江へと旅立つ。

 此度は近江の他に京へ行き、将軍家や帝への拝謁を願い出ている為、随行の兵は百名となった。






 近江・観音寺城

 六角定頼の元へ門衛からの遣いが来た。

 「お館様、申し上げます!ただいま武田信義と名乗るお方が、約百名の供を連れて、お館様へのお目通りを願い出ております」

 「ほぅ?・・・武田殿は動きが早い。丁重にお通し申せ」




 大広間へ通された源太郎の目の前に六角定頼がいる。

 定頼は源太郎の姿を見るや、当主席から立ち上がって近寄り、源太郎の手を取って自分の両手で包み込んだ。

 「六角定頼でござる。武田殿、たくさんの土産だけでなく、早急なる対応、それがし感服仕った」

 「それがしが武田源太郎信義でござる。手厚いお出迎えを頂き、感謝申し上げる」

 源太郎はニコリとして挨拶を返した。

 「武田殿、本来であれば当主席に戻って離さねばならぬが、遠くなる故ここに座って語らいとうござる。如何?」

 「それがしは構いませぬ」

 六角の家臣達も、源太郎に同行している一行の者達も、皆立ったまま呆気に取られて口をポカンと開けている。

 定頼と源太郎がその場に座った。

 「武田殿、約条については互いの代一杯を期間と致そう。その後は継いだもの次第という事で・・・」

 「そうでござるな。もう存じておられましょうが、越前・朝倉とも同様になり申した」

 「京へはワシも同行致す。さすれば、待つことなく将軍家に会える。武田殿のご用意によって、帝にも容易く拝謁が叶うであろう」

 「それは、かたじけのうござる。されど、宜しいので?」

 「構わぬ。我が婿の土岐頼芸について願い出ねばならぬ事もある故、そなたと一緒の方が都合が良い」

 「ならば、お言葉に甘えてお願い申す」

 「ハハハ、任されよ」

 「しかしながら、武田殿は良い頃合いに来られた」

 「・・・ん?と言われますと?」

 「実はのぅ・・・この辺りの戦が落ち着いたのも、ここ二年程も経たない間の事なのじゃ。現管領の細川晴元殿が前管領の細川高国殿を追い落とすまでの間、阿波・河内・摂津・京のある山城・近江が、管領家の家督争いに巻き込まれてのぅ。将軍家は権威があっても武力が無い故、家督争いの混乱で終わるべき話が戦に発展したのじゃ。細川高国殿が亡くなった後、将軍家が細川晴元殿と和睦された故、ようやく落ち着いたがのぅ」

 「それは大変でござりましたなぁ・・・」

 「武田殿のお陰で東が落ち着いた故、西にだけ目を向ければ良いから楽になり申した。心から感謝致す」

 「いいえ。こちらこそ六角様に好誼を結んで頂きました故、余計な戦をしなくて済みました。こちらも感謝申し上げます」

 「ほう、その口ぶりは戦が嫌いに思えるが・・・」

 「はい、その通りにて。それがしは戦が嫌いでござる」

 「その割に、世間で聞く話ではここ二年足らずの期間で駿河・遠江・三河・尾張・美濃と五か国も自領に組み込まれたとか」

 「はい、領民の生活を守る為に戦を潰していったら、ここまで来てしまいました」

 「ハハハ、それはとんだ被害者じゃのぅ」

 「はい、誠に以て。お陰で武田家は深刻な人材不足でござる。好誼を連結できれば甲斐の中だけで、のんびりできたのでござるが・・・」

 「されど、制圧為された地域の国人衆を譜代に取り入れられておるではないか」

 「そうしないと、甲斐に居る弟を手助けする者がいなくなります。そうなれば、結果として故郷が荒廃致します故、新たな地域の分家筋の者達を甲斐にも呼んでおります」

 「武田殿は傑物じゃ!息子を持つならば、武田殿の様な子が欲しいモノじゃ」

 「されど、六角様の嫡子様の方がそれがしよりも優秀に見えまするが」

 「そうかのう?」

 「それがしは優秀な家臣達に支えられた故、生き延びて来られました。個人の才だけで語るならば、嫡子様が羨ましゅうござる」

 「苦労為されたのじゃな・・・おおっ!家臣共を忘れて居った!早速宴会に致そう!皆の者!武田殿のご一行を客間へ案内いたせ!」

 定頼のその言葉で六角・武田の家臣達は我に返った。



 数日後、定頼と共に上洛した源太郎は将軍・足利義晴から管領代の役職に、帝から正五位・右近衛少将の官位に任ぜられた。

 土岐頼芸と土岐頼純の処遇は、六角定頼が引き取る事を将軍家に許される。

 京での所要を終えた源太郎一行は、定頼の勧めで観音寺城へ立ち寄り、数日後、那古野城への帰路へ就いた。






 








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