異世界召喚?!異世界転移?!…そんなのクソ喰らえ!

宮本晶永(くってん)

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プロローグ …何か変んなモノに関わっちゃったら…

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 梅雨明け宣言が出て暑さが本格化し始めた日曜日…我が家の隣にある高校では、部活動に励む生徒たちの元気な声が響き渡っている。
(こうやって見ていると、若いってイイよなぁ……自分自身に生まれついてのアレが無かったら、あんなふうに楽しく学校生活を送っていられたんだろうなぁ)

 何となく空を見上げる。

(……ん?!何だ?!雲の様なモヤの様な、黒い霧が学校に向かって降りてきてる。学校の人達は気づいていないみたいだ。恐らく霊的な何かじゃないかな。イヤな感じがする……散らせるか消せるか、何ができるか、どうなるのか解らんけどアレをやってみるか)


 ……………。

 ……………。

 ……………。

 ……………。

 ……………。



 (はぁっ?!……何故だ?散らないし消えないぞ!ヤバい!こっちへ一直線にに向かってくるっ!!!)


 「ぐあぁあああっ!」

 (か、かっ、身体がしびれる!痛い!!いだだだだだだぁっ!!!)

 (俺は死ぬのだろうか……あぁ、小さい頃からの思い出が次々と鮮明に甦ってくる)



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 俺にはほかの人と違う事が一つだけある。
それは、念力を始めとするすべての超能力と呼ばれている能力が使えるのだ。
しかし、その能力があるとしても、思い通りに使う事が出来なければ、身体の障害と同じだ。
幼い頃の俺は、他の人には見えていない存在・聞こえていない声・周囲の人達にこれから起こる不幸に怯え、常に微熱と体中の関節の痛みのせいで泣き叫んでいたそうだ。
それなりに…俺の記憶にも残っている。

 
 苦しみ続けていた日々…5歳の頃のある日、近所のお寺に引っ越してきた若いお坊さんに「どうしたのかな?」と声をかけられた。
俺だけに向けられた微かな笑顔と、その優しい響きの声に誘われて、大粒の涙が次から次へと溢れ出てきた。
気が付くとヒックヒック泣きじゃくりながら今迄の自分の事を話していた……「誰もね、僕が言ってること信じてくれないんだよ」の言葉を挟みながら。


 「うん、そうかそうか」
俺の頭を撫でつつ、温かい眼差しで見つめながら真剣に聞き続けてくれた……実の両親でさえ気味悪がって、話をまともに聞いてくれた事なんて、一度も無かったのに、だ。
 「辛かったね。一人なのによく頑張ったね。本当に君は強い子だ!」……生まれて初めて、初めて褒められた。


 そのお坊さんは、お爺さんの一歩手前くらいの年の別のお坊さんに話をした後、両親に何らかの話をしてくれた。
結果、幼稚園や学校が終わった後から両親が帰宅するまでの時間と、週末や祝日の日、お坊さん達が俺の面倒を見てくれることになり、居場所ができた俺は次第にそこへ通う日が増えていく。


 そのお寺では書道を習い始めとして、お坊さんの知り合いの武闘家さん達から空手・柔術・剣道・居合道・中国拳法など様々なもの教わる事に繋がり、それらを身に付ける過程で意識しないうちに精神を鍛えられ続けた効果なのか…少しずつ《見える・聞こえる・感じる》現象は少なくなっていき、それに伴って微熱や関節の痛みに苦しむことも減っていった。


小学校6年生の時にその事に気が付いて思い返してみたら、他の子たちと同じ様に暮らせていることに思い当って、一晩中嬉しくて泣いた日を今でも思い出す。

ただ、住んでいたところが地方都市で、隣近所の付き合いが濃密な地域だったので、俺の存在を未だ気味悪がる人が一定の人数居て、症状が緩やかになっても、俺を自分の子供の友達として認めてくれる大人はいつまで経っても極々少数派である事が続いた。

そんな環境も手伝って、幼いのに習い事だらけの日々が辛くならなかったのか……と言うと、それほど苦痛に感じた事が無かったし、そもそも、幼い俺を孤独な状態から救い出してくれた人達なので、会える事自体が楽しみだった。


 そんな日々も大学受験の時、師匠とも呼ぶべき人達から防衛大学校を勧められ、そこへ入学して一旦は終わりになった。
勿論、連絡のやり取りは続いていたが……。

防衛大学校を卒業し、奈良県にあった幹部学校を経て任官する際に陸上自衛隊を選び、防大生の頃から興味を持っていたレンジャー課程を履修した。


 まぁ……でも、体力勝負の気質に染まると実質的な定年が早いよなぁ。

四十代半ば過ぎると、体力の衰えを自覚し始めた同期が一人、また一人と除隊していって、俺も現場仕事から遠ざかる人事の内定を受けた瞬間、気が付いたら除隊を申し出ていた。

「年寄」って宣告されたように感じて、それを認めたくなかった。

今迄散々身体を動かし続ける一日の連続で生活してきて、いきなり翌日から建物の中でデスクワークという、籠の鳥のような生活ができるか?って、俺には苦痛過ぎて想像すらできなかった。
それが、俺の団体生活という環境の中での人間的な器の大きさなのだろう。

 腐れ縁のように長い付き合いになっていた当時の上司の紹介で、防衛省関連の企業へ潜り込ませてもらった。

そこへ入ってみて味わった『民間企業の雰囲気』っていうのが凄く新鮮で楽しくて、階級に囚われない自由さを思う存分味わう為に、若いのから大分年上の年代の人まで男女の区別なく、とにかく仕事から遊びまで、ほぼ全てに付き合った。

勿論、師匠達の元へも通い直して、社会人として初めての文民(軍人ではない人)の生活1年生は武道との再会をも意味していて、人生の中で一番面白かった時期かも知れない。
師匠達に紹介してもらって、海外の武闘家を訪ねて回ったり、歩き回っているうちに興味が広がって刀剣の鍛冶師の所や神社仏閣へも足を運んだ。

そんなこんなで『明日は75歳の誕生日』、憧れの年金生活への切符を貰える権利を手に入れる寸前で、冒頭のようなことになってしまった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



(う……体が動かない。目も開かない。ここは死後の世界なのか?)

(つ、冷たい。体全体がひんやりしてる。下が固いぞ)

(感覚が戻ってくる……という事は、私は生きているのか)

(ん……周囲に人の気配がする。しばらくジッとしていよう)

(でも、臭い!ここは地獄なのか?でも、俺はそれ程悪い事をした記憶は無いぞ?!)











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