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14 湯浴み
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僕の当初の目的、こっそりラクロア様の仕事を見る事は叶わなかったが、ラクロア様が迎えに来てくれて嬉しかったから良しとした。だって僕が人間になってしまったから、ラクロア様の役に立たないと飼ってもらえないかもって心の底ではまだ心配だったから。
でも、心配することなかった、ちゃんとラクロア様は僕を迎えに来てくれたし、抱っこでお屋敷に連れ帰ってくれたのだから。もう安心だよね。ずっとそばにいれるよね。ラクロア様の良い匂いをすんすんしてたら、ラクロア様がちらりと僕をみた。
「寝る前に湯浴みでもするか?」
「え」
『湯浴み』という単語を聞いて、僕はビクリと身体を揺らした。湯浴みって、前にここに来たばかりの頃にお湯につけられて石鹸でごしごしされたアレだよね。
「僕はしなくていい?」
「ニャリス、湯浴みは本来毎日するものだ」
「でも僕、毎日ちゃんと毛繕いしてるし、どこも汚れてないよ」
「人間は毛繕いしない、ちゃんと湯浴みをしないと」
「でも、でもね、僕はしなくていいと思うの」
ラクロアはもしや、湯浴みが怖いのか?とニャリスをじっと見つめた。そういえば、猫のニャリスを拾ったとき、湖の中でバシャバシャ溺れてて、あれがトラウマにでもなっているのだろうか。しかし、なんだって雪の日に湖の中にいたんだ?
「そういえばニャリス、猫だったとき、お前、湖の中で溺れていただろう?何でだ」
「突撃魚を取ろうとして間違って落ちちゃったの」
「また突撃魚か」
「美味しいの、プリプリしてて」
「煮て干したものなら有るかもな、あとでもってきてやる」
「生が良い」
「生は駄目だ、刺身なら良いが、丸ごと食べたら駄目だ」
「でも……美味しいのに」
「人間はお腹を壊すから、生では食べない」
「あ、それで僕、前にお腹を壊したのかな」
「生で食べたのか」
「うん、だって人間は簡単に突撃魚とれたから、とって、お父さんとお母さんにあげたの、でも皆、お腹を壊して、もう取っちゃ駄目って」
「……お前の父と母は今はどうしてる?」
「お墓で眠ってるの、僕が埋めたの、大きな墓石の立派なお墓を作りたかったけど、重くて持てなくて、あんまり立派に出来なかったの、ごめんなさいって泣いてたら、何処かの知らない人に捕まって、売られたの」
なんと言うことだ。こんな小さな手で、両親の墓を掘り、埋め、立派にできなくて泣くなんて、なんて健気なんだ。そんな子供を売るとか、アイツら……もっとボコボコに殴っとけばよかったな。
それにしても、ニャリスの話しは目頭が熱くなる。この子は幸せに成るべきだと思う。怖いことなんかもうたったの1度も経験せずずっとずっと幸せに成るべきだ。
「頑張ったんだな、ニャリス、偉かったな」
「うん」
俺がなんとしても生涯をかけて幸せにする。この可愛い無垢な俺の猫を、絶対に幸せにする。
「湯浴みをしたら、突撃魚の煮干しを持ってくるからな」
「……はぁぃ」
話がそれたので、湯浴みはしなくて良くなったかと思ったが、やはりラクロア様はどうしてもするようだ。抱っこしてもらってるから、どんどん御風呂場へ近づいているし。
「怖がるな、俺がちゃんと洗ってやるから」
「うん」
脱衣場へ来ると、メイドさん達が新しい服やらタオルやらを準備してくれて、服を脱いで、ラクロア様に抱っこされて湯殿へ入った。ずっと抱っこしててくれたから、怖くなかったし、あわあわにされて、洗われるのも、ちょっとくすぐったかったけど気持ち良かった。ラクロア様は僕が怖がらないようにお手手にシャボン玉作ってぷーって膨らませて見せてくれたし。
湯浴みしたあと、タオルでラクロア様が頭をふいて、頭にブラシをかけてくれた。
「毛繕い気持ちいい、ぼくもラクロア様にやるね」
「あぁ、頼む」
僕たちは代わり番こに、ブラシで髪をといて、すっかりピカピカの艶々のサラサラになった。なんて幸せなのかしら。ラクロア様もずっと微笑んでくれてたし。ラクロア様のダークブロンドの髪綺麗ね、光りにキラキラしてるよ。僕はうっとりと僕のご主人様に抱かれて眠った。
でも、心配することなかった、ちゃんとラクロア様は僕を迎えに来てくれたし、抱っこでお屋敷に連れ帰ってくれたのだから。もう安心だよね。ずっとそばにいれるよね。ラクロア様の良い匂いをすんすんしてたら、ラクロア様がちらりと僕をみた。
「寝る前に湯浴みでもするか?」
「え」
『湯浴み』という単語を聞いて、僕はビクリと身体を揺らした。湯浴みって、前にここに来たばかりの頃にお湯につけられて石鹸でごしごしされたアレだよね。
「僕はしなくていい?」
「ニャリス、湯浴みは本来毎日するものだ」
「でも僕、毎日ちゃんと毛繕いしてるし、どこも汚れてないよ」
「人間は毛繕いしない、ちゃんと湯浴みをしないと」
「でも、でもね、僕はしなくていいと思うの」
ラクロアはもしや、湯浴みが怖いのか?とニャリスをじっと見つめた。そういえば、猫のニャリスを拾ったとき、湖の中でバシャバシャ溺れてて、あれがトラウマにでもなっているのだろうか。しかし、なんだって雪の日に湖の中にいたんだ?
「そういえばニャリス、猫だったとき、お前、湖の中で溺れていただろう?何でだ」
「突撃魚を取ろうとして間違って落ちちゃったの」
「また突撃魚か」
「美味しいの、プリプリしてて」
「煮て干したものなら有るかもな、あとでもってきてやる」
「生が良い」
「生は駄目だ、刺身なら良いが、丸ごと食べたら駄目だ」
「でも……美味しいのに」
「人間はお腹を壊すから、生では食べない」
「あ、それで僕、前にお腹を壊したのかな」
「生で食べたのか」
「うん、だって人間は簡単に突撃魚とれたから、とって、お父さんとお母さんにあげたの、でも皆、お腹を壊して、もう取っちゃ駄目って」
「……お前の父と母は今はどうしてる?」
「お墓で眠ってるの、僕が埋めたの、大きな墓石の立派なお墓を作りたかったけど、重くて持てなくて、あんまり立派に出来なかったの、ごめんなさいって泣いてたら、何処かの知らない人に捕まって、売られたの」
なんと言うことだ。こんな小さな手で、両親の墓を掘り、埋め、立派にできなくて泣くなんて、なんて健気なんだ。そんな子供を売るとか、アイツら……もっとボコボコに殴っとけばよかったな。
それにしても、ニャリスの話しは目頭が熱くなる。この子は幸せに成るべきだと思う。怖いことなんかもうたったの1度も経験せずずっとずっと幸せに成るべきだ。
「頑張ったんだな、ニャリス、偉かったな」
「うん」
俺がなんとしても生涯をかけて幸せにする。この可愛い無垢な俺の猫を、絶対に幸せにする。
「湯浴みをしたら、突撃魚の煮干しを持ってくるからな」
「……はぁぃ」
話がそれたので、湯浴みはしなくて良くなったかと思ったが、やはりラクロア様はどうしてもするようだ。抱っこしてもらってるから、どんどん御風呂場へ近づいているし。
「怖がるな、俺がちゃんと洗ってやるから」
「うん」
脱衣場へ来ると、メイドさん達が新しい服やらタオルやらを準備してくれて、服を脱いで、ラクロア様に抱っこされて湯殿へ入った。ずっと抱っこしててくれたから、怖くなかったし、あわあわにされて、洗われるのも、ちょっとくすぐったかったけど気持ち良かった。ラクロア様は僕が怖がらないようにお手手にシャボン玉作ってぷーって膨らませて見せてくれたし。
湯浴みしたあと、タオルでラクロア様が頭をふいて、頭にブラシをかけてくれた。
「毛繕い気持ちいい、ぼくもラクロア様にやるね」
「あぁ、頼む」
僕たちは代わり番こに、ブラシで髪をといて、すっかりピカピカの艶々のサラサラになった。なんて幸せなのかしら。ラクロア様もずっと微笑んでくれてたし。ラクロア様のダークブロンドの髪綺麗ね、光りにキラキラしてるよ。僕はうっとりと僕のご主人様に抱かれて眠った。
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