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幼なじみ
しおりを挟む俺、笹川遥斗には幼なじみがいる。
隣を歩く水無瀬佳月もその1人だ。佳月とは家が向かいということもあり、学校だけでなくプライベートでの付き合いも多い。新しく出来た住宅街に、俺達が3歳の頃に越してきたことをきっかけに仲良くなった。以来、小学校から高校までずっと同じ学校に通っている。
他愛のない話をしながら昇降口で上履きに履き替え、校舎へと入る。俺も佳月も同じ1年2組だ。
扉を空けて教室に入ってきた俺達の姿を見つけると、1人の生徒が声をかけてきた。
「うっす!遥斗ー、佳月。2人揃って登校とかラブラブじゃん。ついにくっついたか?」
「「あほか。違うわ。」」
にやついた顔で言ってくる生徒に対し、俺と佳月からの突っ込みが同時に入る。このやり取りを以前に何度しただろうか。そのまま自分の席に着くと、声をかけてきた生徒ががっかりした顔で近くに寄ってくる。
「なんだよ、違うのかよ。つまんねーの。」
…勝手に面白がろうとするな。
そんな心の声が漏れそうになるが、いちいち相手にするのはめんどくさいため、言葉を飲み込んだ。佳月とたまたま駅で会い、一緒に登校することも少なくない。その度にこの会話をしている気がする。無視をきめこんでいた俺だが、毎度のごとく、それもめんどくさくなり、顔を上げてやっと言葉を放った。
「おはよう、尋。朝から元気そうで何よりだ。」
彼の名前は尋。こいつも幼なじみの1人だ。お調子者でいつもにやついた…いや、笑顔の絶えないやつ。だが、何も考えてなさそうに見えて、意外と気遣いができたり、空気の読み方の上手い、ムードメーカーでもある。尋とも小学校からの付き合いだ。たぶん高校の中でも一番仲がいいのは尋だろう。誰とでもすぐに仲良くなれる尋に俺は昔から憧れつつ、居心地の良さを感じていたのだと思う。
…それが今ではこんなふうだが。
目の前には決めポーズを決め、ウインクをかましている尋の顔が見えた。
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