俺たちの関係に名前はない~複数に犯されるのが好きな1人のネコと3人のタチの恋模様

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第6章 コンクール

第7話 第1次予選 7 ユウキ(受け)視点

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※エロなし

1次予選の2日目に自分の演奏を終え、2次予選に進めると信じて練習してきた
日本を発つ前よりも完成度を上げられたのは、間違いなくのおかげだろう

参加者コンペティターに用意されているホテルのロビーで待つ姿
数年前の自分だったら駆け足で歩み寄っていたはずだ

門下の先輩でもあり、元カレでもあるアサヒくんと思わぬ再会を果たし
予想外の献身的な音楽的サポートを受けた

こうなってくると1次予選の結果は、俺だけに下されるのではない
師匠はもちろん、アサヒくんにも下される結果となる

1次予選最終日の今晩、すべての演奏が終わった後に結果が発表される
朝から午後3時まで2次予選の練習をして、ホテルに戻り休憩し
ロビーで待つアサヒくんと、結果発表の会場へ向かう

彼がいなければ、1次予選演奏後、次の予選のためにこれだけの練習ができただろうか

────多分、できなかっただろうな…

今の俺にとって、アサヒくんは伴走者メンターそのものだ

練習内容だけじゃない
次があるか分からない状態で、メンタルを保ちながら質のよい練習を続けることの難しさを改めて感じて

「次の予選で演奏したい…」

結果発表されるホールまで向かう道でポツリと呟いた一言に応えるように
温かい手が俺の背中に触れる

「僕は、ファイナルまでフランスに戻らないつもりだからね」

留学中の音楽院まで休んでサポートさせている
こちらから頼んだわけではない

だけど、ここで感謝しないほど恩知らずではないつもりだ

「だからだよ…アサヒくんにここまでサポートしてもらって落選したくない」

滞在中のホテルからホールまでは歩いて5分ほど
石畳の感覚がソールを通して足に与える振動に、幼少期のドイツを思い出させる

乾燥した空気をまとう寒空を見上げ、ドイツではなく、ここはイタリアだと感じながら
ホールのホワイエへと足を踏み入れると、外とは異なる喧騒に包まれる

(多国籍だよな…)

さまざまな言葉が行き交い、にぎやかさを超えたホワイエ
通っている日本の大学とは全然違う…

「ホール…もう入れるかな…」

ホワイエの方が話はできるけど、この喧騒の中にいることに疲れを感じる
「うん、入ろう…無駄に疲れる必要はないからね」

重たいドアを2つ開けてホールに入ると、まだガラガラだ
先ほどまで1次予選の演奏がされていたせいか、熱気は残っているものの幾分ヒンヤリとしたホール

「発表前にはユウキは前の方の席に行かないといけないだろうけど
この辺りに座っておこう」

席に座り、タブレットを開く
次の予選の楽譜を見ながら、さっきの練習の録音データを聴き直す

練習で不安に思っていた箇所
すぐに相談に乗ってくれる人が横にいる

結果が出るまで諦めない
良い結果が出たら、さらに努力する

────それだけだ
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