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第一章  出会い編

第12話  醜悪かつ不快な金切り声

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(…‥ぁあ~。それはそうですわよねぇ…)


『気づかず』の魔法で再び姿を隠し、屋敷内へと立ち戻ったシェイラだったが。屋敷裏の使用人口から念のため、と朝のうちに洗い上げて乾かし畳んだシーツ類を両手に抱えて戻ってみれば、何かが立て続けに割れる音とともに強烈な不快感を湧き上がらせる金切り声が、屋敷中に響き渡った。

この時間にこの声。ミラベルだ。

「……なんで、何で何で何で何で何で何で何で何で何で何でなぁーんーでッッ!!!ベルナード皇帝陛下にご挨拶出来ないのよッッ!!学園に在籍する!伯爵令嬢たる!!私が!!!」

次いで呪いのように連鎖する「有り得ない」と、時折混じる、「こんなに美しい私の話を無視するだなんて」や「あの陛下の側近たち…私が皇妃になった暁には全員首にしてやる!!!などの言葉。
また、それぞれの言葉の合間に何かしら物が落下したり、割れたりする音がする。
料理長の必死に止める声もする。

(………食器、足りるかしら。
それにしてもどこからあの無駄な自信が湧き出るのだろうか、謎ですわ)

はぁぁぁ…、と大きくため息をつき、ランドリールーム(洗濯されたシーツやカバー、衣類を保管する場所)に洗濯済みの物を仕舞い込むと、音源である調理場へと向かう。一応言っておくと、断じて進んで向かうのではない。
そうしないと、料理長の仕事に差し障り結果、ロザベラが戻ってきた時にこの現象第2波がやってくる。何より。
日に二度以上シェイラのことを罵らずにはいられないという、大変迷惑な習性があるのだ。


調理場の扉を開けた途端、またもやガシャーン!!と、皿が割られた。


「…ミラベルお嬢様、お帰りなさいませ。
ご挨拶が遅くなり、誠に……」

「シェイラァァッッ!!あんた何で今日出迎えしなかったのよ!さてはあんた!私のこと馬鹿にしてるんでしょ!??そぉよ、そうに違いないわ!!」

「お出迎えできず大変申し訳ございませんでした。しかし決してそのような」

「誰が話して良いって言ったのよ!?…っこのクズ!!!」

「……ッッぐッ!!」


流石にこの至近距離ではかわしようがなかった。
ミラベルが投げたガラス製のグラスがシェイラの下げたままの頭に直撃し、バリン、と割れた。


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