華から生まれ落ちた少年は獅子の温もりに溺れる

帆田 久

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出会い〜ツガイ編

2話  ジレウス視点

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(Side:ジレウス)



(ったく、息抜きぐらいもっと気軽にさせろっての…)

日々溜まり続ける書類の山とそれらの処理を泣きながらせっつく部下からどうにか逃れ、それなりにスッキリした面持ちで俺ー…ジレウス・ヴォーグはのしのしと気ままな散歩を楽しんでいた。

冒険者として方々を旅し、腕試しの依頼を受け続けた結果、
いつの間にか所謂最高ランクにまで上り詰めていた。
トップになった途端騒がしくなった周囲が煩わしくなり、冒険者を辞めて貯蓄の許す限り田舎町にでも引きこもろうと画策すれば、あれよあれよと冒険者ギルドのギルドマスター代理という隠居先を勝手に用意されて、もう3年ほどだろうか?

元が獅子の獣人であり冒険者と肉体派、
正直書類仕事の毎日に辟易としているが、それも何とかこなしてしまっているが故に周囲がその地位からの離脱を許してくれない。
未だふらりと旅に出たまま戻らないギルドマスターを内心タコ殴りにしつつ、
それでもやはり、たまには息抜きは必要。
些細な散歩ぐらい許されて然るべきだろうと声を大にして言いたい。

そんなこんなで現在、お気に入りの散歩コースを楽しんでいるわけだが。
この森の道なき道の先には、かつて神の御使と呼ばれし華族はなぞくという特殊な種族が棲んでいたと云われる泉がある。
鬱蒼とした森深くにポッカリとあけた土地。
そこには事実、ひどく澄んだ美しい蒼色を帯びた泉があり、
かの種族が棲んでいた際には、その泉を極彩色の華が咲き乱れていたという。
そしてその華は“神華しんか”と呼ばれ、花開くと同時に新たなる華族が誕生するとされているのだ。

しかし彼らの持つと華の美しさ故に強欲な人間に狩られ、
残念ながら彼らは既に絶えてしまった。

しかしそれでもなお泉は美しく、
俺にとっては数少ない癒しを与えてくれる場所となっていた。

今日も今日とて疲れきった精神を癒そうと、泉まで足を伸ばしているわけなのだが。

(………なんだ?)

あまりに澄んだ水の為に生き物すら生息していない静寂を保つ泉。
そこに何やら蠢くものがいることを気配から察して眉を顰める。
ひらけた場とはいえ魔物も多い森の奥、
もしや魔物かと警戒しながら気配を殺しつつ木々の影から様子を窺う。
と、

(!!?こ、子供!!?)

信じられない光景が飛び込んできた。

小さな子供、しかも何故か裸。
とてとてと酷く頼りない足取りで泉に近付いてしゃがみ込み、
何やら泉の中を覗き込んでいる。

何故あんな小さな子供がとか服はどうしたとか、
とにかく突っ込みたい事が満載だったがそれよりも。
足取りと同じくふらふらと頭を不安定に揺らしている様が、
背後から見ていてなんともハラハラする。

(あの泉は案外深いんだぞ?あんなふらついてちゃ……っておいっ!?)

そうしてかの子供の首が横にコテン、と傾げられたのを目撃するや、
気付けば足を踏み出して声をかけていた。



「……お前、こんなところで何をやっている」

と。



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