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8 喜劇の舞台を調えるのも楽ではないのだよ
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「こ、公爵閣下の御息女…?」
「た、確かお体が弱く、御領地で静養されているのでは?」
「い、いや確か…生涯結婚はせず国に身を捧げると宣言して修道院へと入ったと聞いたことが」
「「「一体どういうことなんだ」」」
数多の貴族らが、王妃が偽物であった事実からさらにその正体がイブリス公爵の実子と孫であった、そしてそれら全てが公爵の企みによるものだと耳にし、混乱の極地にあった。
「私の娘?
それこそ言いがかりというものだ。
私の娘と王妃様とは似ても似つかぬわ。
無論そこで伸びている女ともな。
なぁ皆のもの?私の娘を見たことのあるものもこの中におるだろう?」
公爵の言葉に、多くの貴族が頷いて見せる。
貴族にとって政略結婚は当たり前。
故に子が生まれれば幼き頃より他貴族家と交流を持たせる。
社交界に姿を見せなくなったとはいえ、
髪色、目の色、体躯やそれこそ顔の造形すら全く違っていたとどの貴族も断言できるほど公爵家の令嬢は『違って』いた。
貴族らの反応に満足げに微笑む公爵。
ー己の企みと手法がバレるわけがないとタカを括ったその傲慢さー
(こちらこそ……見るに耐えぬよ、公爵)
15年ーー。
15年だ。最愛の妻が娘を産み落とすと同時に死に、死を嘆く暇すらなく子育てと政務に追われ。
一年後に深夜遅く王より唐突に呼び出されて依頼された急務に王妃様の保護にと奔走し続け。
可愛い娘を望まぬ疑惑の王子と婚約させることを強要されても耐えに耐え。
この新年慶事の後にようやく報われると安堵した最中に起こった寸劇のせいで暴露する予定を早めさせられ。
こんなにも身をやつして我が子の成長もろくに見守れずに過ぎた、ー15年。
これ自体が喜劇と言わずしてなんだ?
これ以上、自分と家族の時間を擦り減らすつもりは、ない。
ラギウスは隣で無表情のまま怒る息子と不安げに蜂蜜色の瞳を揺らす娘の頭を順番に撫でると、
さっさと言うべきことを言ってしまおうと口火を切った。
「西魔女の秘薬」
「!!」
「かつて西方のガルシャ魔道国で名を馳せた魔女・クィンシーが作りし姿変えの魔法薬。
長命な魔女であるかの御仁に秘薬を作らせ、娘の姿を王妃様のそれに変えて成り代わらせた。
如何かな公爵」
「くはは!魔女?秘薬!?知らぬわ!
そんなものを私が実の娘に盛ったとでも?証拠など」
「無論ありますよ」
「…なん、だと」
「もっとも……証拠ではなく」
チラリと王の斜め後ろー。
偽王妃の背後に控えていた存在に視線を送れば、
意を得たりと頷き。
侍女服を着たその女性はヒョイと壇上より飛び降りて一足飛びでラギウスの隣に並んだ。
「証人だが、ね」
パチンと女性が指を弾く。
瞬時に若い女性の輪郭はぼやけ、数瞬後には、ローブを纏った白髪の老女が立っていた。
「久しいのぉ、公爵どの。
ご注文の品に満足は出来たかぇ?」
老女はヒッヒと高くもしゃがれた声で嗤い、公爵は舌を凍りつかせた。
「た、確かお体が弱く、御領地で静養されているのでは?」
「い、いや確か…生涯結婚はせず国に身を捧げると宣言して修道院へと入ったと聞いたことが」
「「「一体どういうことなんだ」」」
数多の貴族らが、王妃が偽物であった事実からさらにその正体がイブリス公爵の実子と孫であった、そしてそれら全てが公爵の企みによるものだと耳にし、混乱の極地にあった。
「私の娘?
それこそ言いがかりというものだ。
私の娘と王妃様とは似ても似つかぬわ。
無論そこで伸びている女ともな。
なぁ皆のもの?私の娘を見たことのあるものもこの中におるだろう?」
公爵の言葉に、多くの貴族が頷いて見せる。
貴族にとって政略結婚は当たり前。
故に子が生まれれば幼き頃より他貴族家と交流を持たせる。
社交界に姿を見せなくなったとはいえ、
髪色、目の色、体躯やそれこそ顔の造形すら全く違っていたとどの貴族も断言できるほど公爵家の令嬢は『違って』いた。
貴族らの反応に満足げに微笑む公爵。
ー己の企みと手法がバレるわけがないとタカを括ったその傲慢さー
(こちらこそ……見るに耐えぬよ、公爵)
15年ーー。
15年だ。最愛の妻が娘を産み落とすと同時に死に、死を嘆く暇すらなく子育てと政務に追われ。
一年後に深夜遅く王より唐突に呼び出されて依頼された急務に王妃様の保護にと奔走し続け。
可愛い娘を望まぬ疑惑の王子と婚約させることを強要されても耐えに耐え。
この新年慶事の後にようやく報われると安堵した最中に起こった寸劇のせいで暴露する予定を早めさせられ。
こんなにも身をやつして我が子の成長もろくに見守れずに過ぎた、ー15年。
これ自体が喜劇と言わずしてなんだ?
これ以上、自分と家族の時間を擦り減らすつもりは、ない。
ラギウスは隣で無表情のまま怒る息子と不安げに蜂蜜色の瞳を揺らす娘の頭を順番に撫でると、
さっさと言うべきことを言ってしまおうと口火を切った。
「西魔女の秘薬」
「!!」
「かつて西方のガルシャ魔道国で名を馳せた魔女・クィンシーが作りし姿変えの魔法薬。
長命な魔女であるかの御仁に秘薬を作らせ、娘の姿を王妃様のそれに変えて成り代わらせた。
如何かな公爵」
「くはは!魔女?秘薬!?知らぬわ!
そんなものを私が実の娘に盛ったとでも?証拠など」
「無論ありますよ」
「…なん、だと」
「もっとも……証拠ではなく」
チラリと王の斜め後ろー。
偽王妃の背後に控えていた存在に視線を送れば、
意を得たりと頷き。
侍女服を着たその女性はヒョイと壇上より飛び降りて一足飛びでラギウスの隣に並んだ。
「証人だが、ね」
パチンと女性が指を弾く。
瞬時に若い女性の輪郭はぼやけ、数瞬後には、ローブを纏った白髪の老女が立っていた。
「久しいのぉ、公爵どの。
ご注文の品に満足は出来たかぇ?」
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