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7 悪役は主役を舐めて痛い目を見るものだという定説をご存知か
しおりを挟む「正気ではないか。
王族の恥、か。
ようも我に向かってほざいたものよ自称王妃の大罪人め。
我が。
婚儀を果たし、初夜を迎えた生涯の正妻を。
姿形が同じだからと長年気付かぬとでも?
舐めるのも大概にしろ!!」
「……っひ」
「貴様は知らなんだろうがな、我はセラスを、王妃を幼き頃より見知っていた。
性格も何もかもを知っている相手が。
子ができたからと性格も趣味も変わるはずがなかろうよ。
セラスはまごうことなき王妃の器。
過度な贅沢を好まず、我の身を常に案じ、側室のグリシアとも友好を深めていた。
決して貴様のように男児が生まれたからと側室を蔑ろにし、国税を贅に使い潰し、国を継承すべしとした子を甘やかすようなふざけた存在ではなかった!
……取り乱したな。
エルヴィン侯爵」
王の覇気と激昂を一身に浴びせられた自称王妃であった女は、耐えきれずその場で白目を剥いて失神した。
その際独特な臭気が立ち上り、彼女を捕縛していた騎士が顔を大いに歪ませたのはちょっとした事故であったが。
役目を果たした演者に興味のかけらすら残さず、
ラギウスは王の呼びかけに応えた。
「…は。
王宮医師が尋問の末に口を割りました。
出産当日、ある筋からの依頼により王妃様を手の者に誘拐させ、代わりにそこな女と女の抱く乳児を招き入れて王妃様と生まれた子として扱ったと証言を得ました。
私が外交と称して度々国を空けていたのも、王妃様を誘拐した罪人どもの捕縛及び王妃様の保護をするためでありました。
まぁ何故かその間に我が娘が第一王子とやらの婚約者に仕立て上げられるという事態も起こりましたが。
…失礼。
王妃様は無事に保護されたもののご体調を崩されており、
回復する間暗殺されることのなきよう、慎重にも不敬ながら御身を隠させていただいておりました。
そして、王妃様を誘拐し、成り代わりを企んだ者の正体ですが…」
ラギウスはチラリととある方向に視線を向けた。
騎士達がその人物らの退路を立つようにひっそりと立ち並んでいることを確認し、満足げに口角をあげる。
「それで、お覚悟はよろしいかな?
ーー…イブリス公爵」
会場中の視線が振り向いた先にはー、
真っ青に顔を染めた公爵夫人と、
人を殺しそうなほどに険しく顔を歪めたイブリス公爵の姿があった。
※ ※ ※
「…何やら私を罪人呼ばわりしているように聞こえたがエルヴィン侯爵?」
「よう、ではなくしているのだよ、イブリス公爵。
証言も取れていれば証人もいる。
全ての黒幕が貴方であると判明しているからには、大人しく罪を認めてはいただけまいかな?」
「はっ!何をいうかと思えば。
証人も証拠も、一向に心当たりなどないなぁ。
陛下、そこに転がっている罪人らはともかく、流石に公爵の私の関与まで仄めかすエルヴィン侯爵は許せません。
臣下を甘やかすとどこまでも図に乗るので気をつけるがよろしいかと」
「…などというておるが、エルヴィン侯爵?」
王が愉快げに口角を上げながらラギウスに問う、が、その目は決して笑ってはいない。
はぁ…と、少々大袈裟ともとれるため息を吐くと、
「証拠も証言も心当たりがないですか。
それに……転がっている罪人はともかく自分は無実、ねぇ。
イブリス公爵はつくづく往生際が悪く、ー…人でなしだな」
「侯爵位のものが公爵である私を侮辱するか!」
激昂する公爵を殊更おかしそうに見やると、告げる。
「実の娘とその息子を王妃と第一王子として成り代わらせておいて、
罪が暴かれると知らぬふりで2人を断頭台へと送る。
人でなしでなくばなんというのか、是非とも教えていただきたいものだ」
公爵の口元から、ぎしりと軋む音がした。
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