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6話 初期化にあたっての注意事項
しおりを挟む「最後に。
能力値及び身体値の初期化に伴う注意事項を伝えておくよ」
「注意事項?」
何やら不吉な響きに聞き返すと、ふんっとどこにあるか分からない鼻を鳴らす神。
「記憶の消去だよしょ・う・きょ!!
君が初めて召喚された小学生の頃から異世界の記憶一切を消去、同時に適当な地球で過ごした記憶を作り上げて植え付ける。
つまり、本当の意味で全部“なかった”ことにするのさ。
……君が頑なに異世界再召喚、再転移を拒絶するからこれは必須だよ。
それに同意できなければ転移はともかく再召喚はおそらく防げない、何せ君の記憶を媒介にした座標が残っちゃっているからね。
それが多分度重なる君一人の召喚理由だよ。
……どうする?」
本当に記憶を含めた初期化、していいの?
よく考えなよと妙に神妙な声色で諭してくる神。
(記憶の初期化、及び改竄と植え付け、ねぇ…)
記憶が消されて別の記憶を植え付けられる、それだけ聞けば、
普通の人間なら恐怖するのだろう。
しかし。
「同意します、記憶の初期化も含めて」
「決断早っ!!」
俺は一切迷わなかった。
だってもう限界だったのだ。
いきなり異なる世界に召喚、転移されるのも、化け物やら幽霊やら現地人達と死闘を繰り広げるのも、……平穏な日常を送れないのも。
人間の時間は有限だ。
いくら異世界と地球の時間軸が違い、
あちらで何年経とうとも戻った時ほんの数日間の誤差しかなくとも。
実際その数日間の不在(複数回)によって、すでに両親、親類全てから見放された。
酷い家出癖のある、且つ魔法だ何だの妄言癖の持ち主だと。
持ちうるものはこのぼろいアパートの一室と
手切れ金代わりにもらった、通帳に記帳された高校3年間の学費と生活費のみ。
非日常の、非常識な日々の全てを忘れることが出来るのなら、それは自分にとってメリットでしかない。
非日常などない記憶のまま平凡に日常を過ごす。
これ以上に望むべくもない。
俺の決意が真剣なものだと眼差しから理解したのだろう。
「…はぁ。
どうやら本当に心から望んでいるようだからそうさせてもらうよ。
長年君に関わってきた身としては、かなり寂しさを感じるけどね」
じゃあ早速、開始するよ?
そう言ってぴょんと跳ね、俺の頭の上へと乗り移る。
む~む~と何やら唸り声を上げていたかと思ったら唐突に、
「とぉうッッ!!」
いやに間抜けな掛け声とともに、カッと眩い光に包まれた。
同時に、全身がぽかぽかと温かい熱を帯び、睡魔が襲いくる。
(…ああ、これでやっと俺も……)
日常に戻れる
清々しい気分で満たされながら、俺は睡魔に身を委ねて意識を手放した。
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※明日の0時更新、実質最終話です!
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