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ー本編ーその辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。
第77話 後遺症?
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「おはようございます大賢者様。研究部の者です。急ぎ報告を差し上げたいことがあったのですが、中に入ってもよろしいでしょうか?」
ドアがノックされ、その向こうから女性の研究員の声がする。
「むぅ…。また女…。ご主人様…変な事してないよな…?」
「するわけないだろう…。お前がこんなに愛おしくてたまらないのに…。」
ドアの向こうから声が再び。
「えっと…お楽しみ中でしたか…。後ほどまたお伺いしますね…。」
「……。何かすいません…。」
それにしても…いくら少女とは言え、はだけた寝間着は結構エロい…。
俺は寝ぼけ眼の盗賊ちゃんの寝間着を整え、俺から引き剥がすとそのままベッドに寝かせた。
この子は朝が弱いらしい。
が、時々寝起きの俺の上に寝ぼけ眼で跨ると言うとんでもない悪い癖を最近覚えてきたので少し頭を抱えている。
着替えるのも面倒だったのでとりあえず話だけ聞いておこうとすぐさま研究室に向かう。
「お待たせ致しました。先程訪ねて来られた方は?」
「私です。おはようございます大賢者様。先程はお楽しみでしたね。」
「そのセリフは君の研究成果か何かかな…?それならば、軽い皮肉のような物だからやめて頂きたい…。」
「勿論、皮肉で申し上げております。
私も良い男を捕まえてお楽しみできるように努力致しますね。」
ぐぬ…。この子はまた一筋縄では行かないような強者だな…。
「とりあえず、結果を聞かせて頂いても?」
「はい。こちらに…。ひとまず、昨日お持ち帰り頂いた鉱石の鑑定結果ですが、石そのものは何処にでもあるようなアメジストでした。」
「アメジスト…。霊力を高める石でもあるが、その反面霊力を宿しやすい石でもあるな…。」
「その通りです。そのため、この石を使って人が化け物になったと言うなら何かしらの魔力や霊力、もしくは呪術を行使されていたと考えさまざまな痕跡を探してみました。
結果としてわかった事は、この石には大賢者様のアクセサリーのように何かしらの魔物の、力の部分を込めた石である事がわかりました。
つまり、大賢者様のように石に込めた魔物の力を無理やり解放してその肉体に押し込め、さらにはその術者を変質させたという事です。
冒険者の方も今朝方目を覚まされたようです。
彼の話によると、ダンジョン内で命の危機に陥った時に何者かにコレを渡されて命を救われたと…しかし、気が付いたら自我を失い暴走していた…。
そういう事だそうです。
モノがモノでしたので彼は、暗がりでコレを渡して来たのは貴方だと思っていた為、油断していたと言っていました。
冒険者たちには通達済みです。
貴方は自分が気を許した親しい方でなければその力を託すこともないし、そもそもこのように石だけを渡すような無粋な事はしないと…。」
「なるほど。通達の件も了解した。確かにまぁ、俺なら余程信頼できる相手にしか渡す事はない。
だがそうなると…誰かが俺の真似をして俺を貶めようとしている?」
「もしくは、貴方自身を殺そうと誘き出すためにこのような凶行に及んでいるか…。
ひとまず、今わかっている範囲の情報はこの程度です。
この石の出所や、誰が渡したかなどはまだ見当はついていません。」
石屋のおっちゃんが風評被害を受けないと良いんだがな…。
それにしたって俺のアクセと同じような仕組みのものを作れるヤツが他にもいるなんてな…。
「大賢者様の作られる作品は制御装置とも言えるフレームがあるからこそ、コレだけの力をしっかりと確実に使えるのです。
そこに加えて大賢者様のスキルが、よりその力を安全に使えるように変質させています。
逆に想像力の欠如しているものが、石にただそのまま魔物の力を込めた物を生成したところでそれはかつての大賢者様のように暴走するような結果しか生み出さないでしょう。
力によっては何かしらの後遺症が残る恐れも…。
ちなみに今回の冒険者は体毛が濃くなる程度で済んだようですが…。
コレが炎の魔神や雷の騎士のような物だったら…、肉体に起こるダメージもまた変わるかもしれませんね…。」
「肉体に起こるダメージか…。ようは、こう言うのだよな?」
俺は胸元を少しはだけて、胸に少し残っている雷が起こす火傷のような跡を見せた。
「これは…、雷に打たれて生存した人の身体に出来る火傷に酷似して…。
今まではこのようなものなかったですよね?」
「そうなんだ。多分、今回の戦いが終わった後にだとは思うんだけど…。原因もわからないし、少し怖くてね…。
また力を使い過ぎて何かなるのも嫌だから…。」
「かしこまりました。研究室の物総出でその副作用についても調べさせてもらいます。
あの、差し支えなければ雷帝の石をお借りしたいのと、その傷について色々と診察させて頂いても?」
「うん…頼むよ。盗賊ちゃんが泣くほどしんぱいしててさ…。」
「惚気ですかそうですか。はぁ…まぁ見た目はさておき、ほんと中身は羨ましいくらい素敵な人ですよね大賢者様は。
私もそう言う男性と恋に落ちて恋愛してみたいものです。話を戻しますが、ひとまず傷については医療チームと魔術研究部の人たちにまず診てもらいましょう。」
とりあえず俺はライトニングクォーツを研究部の彼女に預けた。
そして、それはもうハァハァと息を荒くした魔術研究部と医療チームが俺を取り囲む。
「今つくづくハァハァ言ってる君達が女性で良かったと思ってるよ。」
「私達も始めて肌に触れられる異世界人が異性でたまらなく興奮しております。
失礼ですが、傷に触れさせて頂いても?」
「お願いします。痛みはないのですが、何せ急にこんな傷が出来たもので…。」
魔術研究部の子はちょっと変わった水晶越しに俺の傷を、医療チームの子はそのまま直で傷口の観察と触診を行ってくる。
「魔術サイドの見解を述べますと、確かにこの傷にはとてつもない力を感じます。
魔力ではないですね。恐らくは神気…。
力を使い続けるうちに肉体レベルで馴染んできた事の証なのかも知れません。」
「医療チームとしての見解を述べますと、確かにこの模様自体は雷に打たれた人に出てくる独特の模様と酷似していますが、皮膚の変質具合は日焼けや白斑程度の物ですね。火傷と言うよりは色素が抜けた…って感じですね。
ひとまず、不安になるような要素は特にないと思われます。ただ、この跡が消えるかどうか、今後増えてしまうかどうかはわかりませんね…。」
とりあえず、身体に害のあるものではないってわかっただけでも十分かな。
少しホッとした。
「そうですか、ありがとうございます。
とりあえず害がないとわかっただけでも十分です。」
「ただし、経過観察はした方が良いかもしれません。もし、それが霊障のようなものだったとしたら肉体には何もなくとも貴方の魂自体に傷が付いていると言うおそれもありますから…。」
「魂の傷…か。力の使い過ぎには気をつけないととだな…。
それにまだ傷を見ただけの範囲での見解でしかないしな。
石そのものが持つ力と副作用はまだ俺自身にも未知数だし…。」
人の肉体そのものを雷に変化させ、神の領域にまで至らせる程の驚異的な力。
それをこの鎧により暴走を抑えた上で完全制御し、行使しているのが俺が雷帝モードと呼ぶあの姿。
巷じゃあ【白き閃光の鎧皇(がいおう)】などと呼ばれてるらしい。
「さてと…。石の研究は時間がかかるだろうし、俺は朝飯でも食ってくるよ。
急な依頼で時間を取らせてごめんね。みんなも食事と休養はしっかりと取ってね?」
俺は研究室のみんなにお礼を言って研究室を後にした。
「大賢者様…。見た目は普通ですけど、やはり中身は素敵ですよね。
気遣いができる男性というのは世の中なかなか居ませんよ。」
「女性を道具としてしか見てない男をは本当多いですからね~。あの人はその辺においては史上稀に見る紳士っぷりですよ。
その上、愛妻家ですし…。いやまぁ正確にはまだ妻ではないですが…。
あれだけ愛情たっぷりに愛されてるのを見せつけられると、なかなかに来るものがありますね…。」
「「「尊い…。」」」
自室に戻ると盗賊ちゃんがベッドの上で枕を抱きしめながらまだすやすやと寝ていた。
寝顔を見てるだけで癒される。
とは言え、そろそろ起こして用意された朝ごはんを食べねば…。
朝飯なんてこの世界に来るまでろくに取った事無かったけど、こういう規則正しい生活ってのは案外悪くはないもんだな。
「盗賊ちゃん、そろそろ起きて?朝ごはん食べよ?」
「ん~…。起こす時は…王子様の目覚めのキスがないとやだぁっ…。」
「はいはい…わがままなお姫様だな…。」
俺は軽くキスをして、盗賊ちゃんを抱き寄せる。
「いい加減目は覚めたか?おはよ。」
「んにゃ…おはゆ…。まだねむい…。」
「俺よりは寝てたろう…。ほんと朝は弱いんだなお前は…。ほら、シャキッとしろ。朝飯食いに行くぞ?」
俺は盗賊ちゃんの手を取り食堂へ向かう。
「おや?やっと来たか。おはようダンナ様。しっかし、うちの娘は相変わらず寝起きが悪そうだねぇ…。」
「おはよう、ママさん。今朝もごはんの用意ありがとね。」
俺はママさんやシェフが用意してくれたパンと野菜スープ、スクランブルエッグにボイルしたソーセージと言うホテルのモーニングのような朝食を頂いた。
和食はもちろん嫌いじゃないが、朝飯は洋食派なのだ。
お魚苦手なのよね…。
「いい食べっぷりだねぇ。こう言うモーニングが好きなのかい?」
「うん、結構好きかな。卵料理は特に。ゆで卵とかでも結構好き。」
「そうかいそうかい。食べたいものがある時とマッサージして欲しい時はいつでも良いな。
私の得意なものは主にその二つだからね。」
「慢性的な肩こりだから、マッサージ師が家にいるってのはものすごく嬉しいな…。
これだけでなるべくこの世界にとどまりたい理由になりそうなくらいだよ。」
「そう言えば、その辺気になってたんだけどダンナ様は自分の世界に帰る気はないのかい?
家族もいるだろうし友人も居ただろう?」
元の世界への帰還ねぇ…。全く未練がないわけでもないけど、この楽で贅沢で自由な暮らしを知ったらな…。
労働らしい労働ってのも特別してないし、それなのにこれだけ良い暮らしを出来るならあまり元の世界へ戻る理由もないよな。
毎日働いてもお金は月一回しか貰えず、遊ぶお金はそんなに手元に残らないような世界で生きるよりは、こうやって俺を慕ってくれたり愛してくれる人がいる世界に生きる方がよほど幸せだ。
「友人、居るように見える?
慕ってくれる人はそれなりに居たけど、友人と言える人は特別居なかった。
次第に疎遠になったり、若くして事故で死んだり…。そう言う感じ。
家族仲は悪い訳ではなかったけど、居ないからってどうこうって気もしない。
一人暮らし始めるか迷ってたくらいだったからね。
それに何より、今は可愛くて愛おしい俺の嫁候補が居るんだ。
帰還するにしても、彼女を置いて帰還する気もないよ。」
「そっか…。アンタさ、あまり自分の事語ってくれないから時々1人の女としても母親としても不安になる時があるんだよ。
色々と触れられたくない部分をたくさん持ってそうだなってね。だからこそ、その優しさが生まれたんだろうなとも思うけど…。
アンタ、自分では気付いてないかもだけど、1人になった瞬間にとても寂しそうな顔をするんだよ。
きっと色々と一瞬の間に考え込んでしまうからだろうね。」
まぁ、確かに時々なんの理由もなく無性に寂しくなる時はある。
俺は元々孤独を過ごすのが大嫌いな性格だ。
SNSにどっぷりハマったきっかけも、話し相手が欲しかったからだ。
まぁ作業中とかは逆に1人の方が落ち着くけど…。
それ以外は誰かが側にいると気が楽になる。
「なぁ、ご主人様は…さ。オレが母さんだったら…、いや、母さんと同い年だったら…どうなってた?もっと今以上に惚れてくれてたのか…それこそ本気で結婚のこととかすぐに考えてくれてたのか…。」
「そうだな…。たしかに年が近かったら今よりは悩んでないかもしれない。
ただ、誤解しないでほしいのは俺は君の心は勿論だけど、身体についても容易に傷付けたくないからこそ悩んでるんだよ。
ごめんね、色々と不安にさせて…。」
「あまり焦らず、そして考え過ぎずで良いんだよ。人生なるときはなるようになるもんさ。
今のアタシがこうやってアンタに拾われて、娘と一緒に食卓を囲める日が来たみたいにね。
娘が惚れた男に手料理を振る舞うってのは意外と心が躍るもんだね~。
まぁ、私もアンタのこと割と好きだけどさ。」
盗賊ちゃんがう~っ!と唸りながらママさんを威嚇する。
「心配しなくてもアンタからこの人を取ろうなんて思っちゃいないよ。
アンタの大切な大切なダンナ様だからね。
ほんと、良い人を好きになったね。
私も…ほんとこんな人に愛されてみたかったよ。」
「ママさん…。ありがとう。そう言ってもらえると俺も嬉しいよ。」
「まぁ、ともかくだ。うちの娘をよろしく頼むよ。」
ほんと、同い年とは思えないな…。
その上こんなに大きな娘さんがいるんだから。
「さぁて、肩凝りがどうとか言ってたね?
どれどれ~?おぉ…。この前割としっかりほぐしてやったのにもうこんなになってるのか…。
緊張が緩められない日々が続いていたからだろうね…。ほんと、お疲れ様だよ。
人知れず私たちを守ってくれてありがとうな。」
今回はゴリゴリと力強くマッサージをしてくれるママさん。
本当に心地良いな…。
「母さん…。オレにもマッサージのやり方またおしえてくれよ。オレもご主人様にこんなとろけ顔されてみたいぞっ。」
あまりのマッサージの心地よさに完全に顔が緩みきっていたようだ。
「もちろんだとも。アンタからもしっかりと癒してあげな?これからもずっとね。」
そんなこんなわけで、また新しい一日がはじまっていくのだった。
ドアがノックされ、その向こうから女性の研究員の声がする。
「むぅ…。また女…。ご主人様…変な事してないよな…?」
「するわけないだろう…。お前がこんなに愛おしくてたまらないのに…。」
ドアの向こうから声が再び。
「えっと…お楽しみ中でしたか…。後ほどまたお伺いしますね…。」
「……。何かすいません…。」
それにしても…いくら少女とは言え、はだけた寝間着は結構エロい…。
俺は寝ぼけ眼の盗賊ちゃんの寝間着を整え、俺から引き剥がすとそのままベッドに寝かせた。
この子は朝が弱いらしい。
が、時々寝起きの俺の上に寝ぼけ眼で跨ると言うとんでもない悪い癖を最近覚えてきたので少し頭を抱えている。
着替えるのも面倒だったのでとりあえず話だけ聞いておこうとすぐさま研究室に向かう。
「お待たせ致しました。先程訪ねて来られた方は?」
「私です。おはようございます大賢者様。先程はお楽しみでしたね。」
「そのセリフは君の研究成果か何かかな…?それならば、軽い皮肉のような物だからやめて頂きたい…。」
「勿論、皮肉で申し上げております。
私も良い男を捕まえてお楽しみできるように努力致しますね。」
ぐぬ…。この子はまた一筋縄では行かないような強者だな…。
「とりあえず、結果を聞かせて頂いても?」
「はい。こちらに…。ひとまず、昨日お持ち帰り頂いた鉱石の鑑定結果ですが、石そのものは何処にでもあるようなアメジストでした。」
「アメジスト…。霊力を高める石でもあるが、その反面霊力を宿しやすい石でもあるな…。」
「その通りです。そのため、この石を使って人が化け物になったと言うなら何かしらの魔力や霊力、もしくは呪術を行使されていたと考えさまざまな痕跡を探してみました。
結果としてわかった事は、この石には大賢者様のアクセサリーのように何かしらの魔物の、力の部分を込めた石である事がわかりました。
つまり、大賢者様のように石に込めた魔物の力を無理やり解放してその肉体に押し込め、さらにはその術者を変質させたという事です。
冒険者の方も今朝方目を覚まされたようです。
彼の話によると、ダンジョン内で命の危機に陥った時に何者かにコレを渡されて命を救われたと…しかし、気が付いたら自我を失い暴走していた…。
そういう事だそうです。
モノがモノでしたので彼は、暗がりでコレを渡して来たのは貴方だと思っていた為、油断していたと言っていました。
冒険者たちには通達済みです。
貴方は自分が気を許した親しい方でなければその力を託すこともないし、そもそもこのように石だけを渡すような無粋な事はしないと…。」
「なるほど。通達の件も了解した。確かにまぁ、俺なら余程信頼できる相手にしか渡す事はない。
だがそうなると…誰かが俺の真似をして俺を貶めようとしている?」
「もしくは、貴方自身を殺そうと誘き出すためにこのような凶行に及んでいるか…。
ひとまず、今わかっている範囲の情報はこの程度です。
この石の出所や、誰が渡したかなどはまだ見当はついていません。」
石屋のおっちゃんが風評被害を受けないと良いんだがな…。
それにしたって俺のアクセと同じような仕組みのものを作れるヤツが他にもいるなんてな…。
「大賢者様の作られる作品は制御装置とも言えるフレームがあるからこそ、コレだけの力をしっかりと確実に使えるのです。
そこに加えて大賢者様のスキルが、よりその力を安全に使えるように変質させています。
逆に想像力の欠如しているものが、石にただそのまま魔物の力を込めた物を生成したところでそれはかつての大賢者様のように暴走するような結果しか生み出さないでしょう。
力によっては何かしらの後遺症が残る恐れも…。
ちなみに今回の冒険者は体毛が濃くなる程度で済んだようですが…。
コレが炎の魔神や雷の騎士のような物だったら…、肉体に起こるダメージもまた変わるかもしれませんね…。」
「肉体に起こるダメージか…。ようは、こう言うのだよな?」
俺は胸元を少しはだけて、胸に少し残っている雷が起こす火傷のような跡を見せた。
「これは…、雷に打たれて生存した人の身体に出来る火傷に酷似して…。
今まではこのようなものなかったですよね?」
「そうなんだ。多分、今回の戦いが終わった後にだとは思うんだけど…。原因もわからないし、少し怖くてね…。
また力を使い過ぎて何かなるのも嫌だから…。」
「かしこまりました。研究室の物総出でその副作用についても調べさせてもらいます。
あの、差し支えなければ雷帝の石をお借りしたいのと、その傷について色々と診察させて頂いても?」
「うん…頼むよ。盗賊ちゃんが泣くほどしんぱいしててさ…。」
「惚気ですかそうですか。はぁ…まぁ見た目はさておき、ほんと中身は羨ましいくらい素敵な人ですよね大賢者様は。
私もそう言う男性と恋に落ちて恋愛してみたいものです。話を戻しますが、ひとまず傷については医療チームと魔術研究部の人たちにまず診てもらいましょう。」
とりあえず俺はライトニングクォーツを研究部の彼女に預けた。
そして、それはもうハァハァと息を荒くした魔術研究部と医療チームが俺を取り囲む。
「今つくづくハァハァ言ってる君達が女性で良かったと思ってるよ。」
「私達も始めて肌に触れられる異世界人が異性でたまらなく興奮しております。
失礼ですが、傷に触れさせて頂いても?」
「お願いします。痛みはないのですが、何せ急にこんな傷が出来たもので…。」
魔術研究部の子はちょっと変わった水晶越しに俺の傷を、医療チームの子はそのまま直で傷口の観察と触診を行ってくる。
「魔術サイドの見解を述べますと、確かにこの傷にはとてつもない力を感じます。
魔力ではないですね。恐らくは神気…。
力を使い続けるうちに肉体レベルで馴染んできた事の証なのかも知れません。」
「医療チームとしての見解を述べますと、確かにこの模様自体は雷に打たれた人に出てくる独特の模様と酷似していますが、皮膚の変質具合は日焼けや白斑程度の物ですね。火傷と言うよりは色素が抜けた…って感じですね。
ひとまず、不安になるような要素は特にないと思われます。ただ、この跡が消えるかどうか、今後増えてしまうかどうかはわかりませんね…。」
とりあえず、身体に害のあるものではないってわかっただけでも十分かな。
少しホッとした。
「そうですか、ありがとうございます。
とりあえず害がないとわかっただけでも十分です。」
「ただし、経過観察はした方が良いかもしれません。もし、それが霊障のようなものだったとしたら肉体には何もなくとも貴方の魂自体に傷が付いていると言うおそれもありますから…。」
「魂の傷…か。力の使い過ぎには気をつけないととだな…。
それにまだ傷を見ただけの範囲での見解でしかないしな。
石そのものが持つ力と副作用はまだ俺自身にも未知数だし…。」
人の肉体そのものを雷に変化させ、神の領域にまで至らせる程の驚異的な力。
それをこの鎧により暴走を抑えた上で完全制御し、行使しているのが俺が雷帝モードと呼ぶあの姿。
巷じゃあ【白き閃光の鎧皇(がいおう)】などと呼ばれてるらしい。
「さてと…。石の研究は時間がかかるだろうし、俺は朝飯でも食ってくるよ。
急な依頼で時間を取らせてごめんね。みんなも食事と休養はしっかりと取ってね?」
俺は研究室のみんなにお礼を言って研究室を後にした。
「大賢者様…。見た目は普通ですけど、やはり中身は素敵ですよね。
気遣いができる男性というのは世の中なかなか居ませんよ。」
「女性を道具としてしか見てない男をは本当多いですからね~。あの人はその辺においては史上稀に見る紳士っぷりですよ。
その上、愛妻家ですし…。いやまぁ正確にはまだ妻ではないですが…。
あれだけ愛情たっぷりに愛されてるのを見せつけられると、なかなかに来るものがありますね…。」
「「「尊い…。」」」
自室に戻ると盗賊ちゃんがベッドの上で枕を抱きしめながらまだすやすやと寝ていた。
寝顔を見てるだけで癒される。
とは言え、そろそろ起こして用意された朝ごはんを食べねば…。
朝飯なんてこの世界に来るまでろくに取った事無かったけど、こういう規則正しい生活ってのは案外悪くはないもんだな。
「盗賊ちゃん、そろそろ起きて?朝ごはん食べよ?」
「ん~…。起こす時は…王子様の目覚めのキスがないとやだぁっ…。」
「はいはい…わがままなお姫様だな…。」
俺は軽くキスをして、盗賊ちゃんを抱き寄せる。
「いい加減目は覚めたか?おはよ。」
「んにゃ…おはゆ…。まだねむい…。」
「俺よりは寝てたろう…。ほんと朝は弱いんだなお前は…。ほら、シャキッとしろ。朝飯食いに行くぞ?」
俺は盗賊ちゃんの手を取り食堂へ向かう。
「おや?やっと来たか。おはようダンナ様。しっかし、うちの娘は相変わらず寝起きが悪そうだねぇ…。」
「おはよう、ママさん。今朝もごはんの用意ありがとね。」
俺はママさんやシェフが用意してくれたパンと野菜スープ、スクランブルエッグにボイルしたソーセージと言うホテルのモーニングのような朝食を頂いた。
和食はもちろん嫌いじゃないが、朝飯は洋食派なのだ。
お魚苦手なのよね…。
「いい食べっぷりだねぇ。こう言うモーニングが好きなのかい?」
「うん、結構好きかな。卵料理は特に。ゆで卵とかでも結構好き。」
「そうかいそうかい。食べたいものがある時とマッサージして欲しい時はいつでも良いな。
私の得意なものは主にその二つだからね。」
「慢性的な肩こりだから、マッサージ師が家にいるってのはものすごく嬉しいな…。
これだけでなるべくこの世界にとどまりたい理由になりそうなくらいだよ。」
「そう言えば、その辺気になってたんだけどダンナ様は自分の世界に帰る気はないのかい?
家族もいるだろうし友人も居ただろう?」
元の世界への帰還ねぇ…。全く未練がないわけでもないけど、この楽で贅沢で自由な暮らしを知ったらな…。
労働らしい労働ってのも特別してないし、それなのにこれだけ良い暮らしを出来るならあまり元の世界へ戻る理由もないよな。
毎日働いてもお金は月一回しか貰えず、遊ぶお金はそんなに手元に残らないような世界で生きるよりは、こうやって俺を慕ってくれたり愛してくれる人がいる世界に生きる方がよほど幸せだ。
「友人、居るように見える?
慕ってくれる人はそれなりに居たけど、友人と言える人は特別居なかった。
次第に疎遠になったり、若くして事故で死んだり…。そう言う感じ。
家族仲は悪い訳ではなかったけど、居ないからってどうこうって気もしない。
一人暮らし始めるか迷ってたくらいだったからね。
それに何より、今は可愛くて愛おしい俺の嫁候補が居るんだ。
帰還するにしても、彼女を置いて帰還する気もないよ。」
「そっか…。アンタさ、あまり自分の事語ってくれないから時々1人の女としても母親としても不安になる時があるんだよ。
色々と触れられたくない部分をたくさん持ってそうだなってね。だからこそ、その優しさが生まれたんだろうなとも思うけど…。
アンタ、自分では気付いてないかもだけど、1人になった瞬間にとても寂しそうな顔をするんだよ。
きっと色々と一瞬の間に考え込んでしまうからだろうね。」
まぁ、確かに時々なんの理由もなく無性に寂しくなる時はある。
俺は元々孤独を過ごすのが大嫌いな性格だ。
SNSにどっぷりハマったきっかけも、話し相手が欲しかったからだ。
まぁ作業中とかは逆に1人の方が落ち着くけど…。
それ以外は誰かが側にいると気が楽になる。
「なぁ、ご主人様は…さ。オレが母さんだったら…、いや、母さんと同い年だったら…どうなってた?もっと今以上に惚れてくれてたのか…それこそ本気で結婚のこととかすぐに考えてくれてたのか…。」
「そうだな…。たしかに年が近かったら今よりは悩んでないかもしれない。
ただ、誤解しないでほしいのは俺は君の心は勿論だけど、身体についても容易に傷付けたくないからこそ悩んでるんだよ。
ごめんね、色々と不安にさせて…。」
「あまり焦らず、そして考え過ぎずで良いんだよ。人生なるときはなるようになるもんさ。
今のアタシがこうやってアンタに拾われて、娘と一緒に食卓を囲める日が来たみたいにね。
娘が惚れた男に手料理を振る舞うってのは意外と心が躍るもんだね~。
まぁ、私もアンタのこと割と好きだけどさ。」
盗賊ちゃんがう~っ!と唸りながらママさんを威嚇する。
「心配しなくてもアンタからこの人を取ろうなんて思っちゃいないよ。
アンタの大切な大切なダンナ様だからね。
ほんと、良い人を好きになったね。
私も…ほんとこんな人に愛されてみたかったよ。」
「ママさん…。ありがとう。そう言ってもらえると俺も嬉しいよ。」
「まぁ、ともかくだ。うちの娘をよろしく頼むよ。」
ほんと、同い年とは思えないな…。
その上こんなに大きな娘さんがいるんだから。
「さぁて、肩凝りがどうとか言ってたね?
どれどれ~?おぉ…。この前割としっかりほぐしてやったのにもうこんなになってるのか…。
緊張が緩められない日々が続いていたからだろうね…。ほんと、お疲れ様だよ。
人知れず私たちを守ってくれてありがとうな。」
今回はゴリゴリと力強くマッサージをしてくれるママさん。
本当に心地良いな…。
「母さん…。オレにもマッサージのやり方またおしえてくれよ。オレもご主人様にこんなとろけ顔されてみたいぞっ。」
あまりのマッサージの心地よさに完全に顔が緩みきっていたようだ。
「もちろんだとも。アンタからもしっかりと癒してあげな?これからもずっとね。」
そんなこんなわけで、また新しい一日がはじまっていくのだった。
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内容紹介
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