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ー本編ーその辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。
第78話 近付く足音
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お昼まで暇だなーと思い、ひさびさに革紐を使ったブレスレットを編み編みしていた。
その間、盗賊ちゃんはじーっと俺の作業をワクワクしながら見ていた。
かわゆい。
めたくそかわゆい。
「手が早いなぁ。そのスタイルのものは作り慣れてるからか?」
「そうだね。実際すごく作りやすいしね~。
革紐はこうやって四つ編みで編んでるだけだし、その間に石を通してるだけだから見た目よりは意外と簡単に編めるんだよ。」
「でもやっぱ、色使いのセンスが良いよなぁ~。
ご主人様が作ってくれたものは全部お気に入りだ。
なんていうか…愛されてるってすごく感じるから。これは…色合い的にオレ用?」
「ん、そうだよー。サイズ調整するから腕出して~?」
はぁ~いっと言って可愛く細い腕を出してきたので、腕に合わせて長さを調節し完成させる。
「わぁ~いっ♪かわいいなぁ~!ありがとなご主人様♪大切にするねっ♪」
「サイズ合わなくなったりしたらまた作り直すから気楽に言えよ~?盗賊ちゃんは成長期だろうしすぐに大きくなるだろうしね。」
こうやって好きな人に作るのってまた楽しいなぁ~…。
この喜ぶ顔がまた可愛くて癒される…。
はぁ…かわゆ…。
「なぁご主人様、今日はどこかでかけるのか~?」
「うんにゃ、あんまり考えてはなかったな。
天気も良いし目的もなくフラフラ歩きまわるのも息抜きにはなりそうだよね。」
「どっか行くなら付き合うぞっ!」
「こういうイチャイチャするのも嫌いじゃ無いけどね~てや~っ」
むぎゅーっと盗賊ちゃんを抱きしめる。
やぁんっ♪と可愛く身悶えるのもまたかわいい…。
「ご主人様…、我慢できなくなったらそれ以上のことしても…良いんだぞ?」
「例えば?」
「脱がせたり…触ったり…?」
とろんとした目でおねだりモードになって来ている…。
これ以上はお互いのためにも良くないな…。
「どうしてもってなったら、考えておくよ…。
ごめんごめん、やりすぎたね。」
「むぅ…。オレは良いのにぃ…。ご主人様がオレのこと大切に思ってくれてるのもわかるけど、オレはご主人様になら割と何されても許せるし嬉しいぞ?」
「一緒にお風呂入るだけでもあんなにドキドキしたからな…。それ以上はもっと心の準備をさせてくれ…。
なんというか…改めてじっくり裸を見て肌に触れて、キスまでしたら…流石に俺もドキドキした。
正直、子どもだと思ってたけどじっくり見るとちゃんと大人になって来ているというか…。
何いってんだ俺…。」
「んふふ~♪これからは毎日堪能させてあげるからなっ?んーっ♪」
ぎゅーっと抱きつかれ軽くキスをされる。
しかし、アレだな。
なんかさっきから2人ほど気配を感じる…。
『はわぁ…。だいけんじゃととーぞく…。すごくラブラブなの…。』
『2人はいつもあんな感じなのよ?微笑ましいわよね~♪あ、気付かれた!もすこし、神気抑えるわよ!』
「おい、2人とも。常に居るのはわかっていたけどぶっちゃけどの辺から見てた?」
「うおぅっ!?龍皇さんに蛟さんっ!?居たのかよ!?あ、守護神みたいなものだから常に居るのか…。」
俺らのツッコミに顔を見合わせる2人。
『きのうのおふろあたりから見てた。』
『んふふ~♪ほーーんと、ラブラブで可愛らしいったらありゃしないんだから♪』
「実体化してなくてもこうやって近くで見られてると思うとたしかに恥ずかしい物はあるな…。」
『だって、居るの意識させたら見せつけてもらえないじゃない?2人のラブラブ具合見るの好きだもの。』
龍ちゃんが実体化して俺の隣に座ってくる。
「まぁ、私もようやくあなたに触れられる肉体を得たんだからもっとあなたに触れたり話したりしても良いんだろうけどね。
本当は私もあなたとラブラブしたいわよ…。ただ、神として人を愛する貴方の邪魔は流石にしたくないの。
逆に、貴方が天命を全うすれば私は嫌でも貴方の側に居れるしね。」
「そっか…寿命…。そう言えば、ご主人様の世界の人間は一般的に何歳まで生きるもんなんだ?」
「平均して80歳かな。早くても60までは生きると思うけども…。」
この世界の人間は成人年齢が早い。
そういうところから考えると、案外短いのかもだな…。
「そっか…。こっちの人間は今までなら長くても60歳だな。一般的には50歳も生きてればもう立派な年寄りだ。
ただ、それは歯科治療の技術や食料的な問題が大きかったっていうのが最近わかってきて、今は80歳くらいまで生きれるようになりつつあるって結果にはなってる。」
「こっちも数百年前までは似たような感じだな。
歯を削ったり引っこ抜いたり、穴を埋めるための技術と、麻酔に関する技術が発展して行ったのと、食材を調理する道具の進化によって様々な栄養価のある食事ができるようになったことから、人の寿命は伸びたと言われてるな。
あとは筋肉を鍛えるためのトレーニング施設や器具が増えたりした事で、肉体を衰えさせなければそれだけ長生きできるようになったって感じかな?」
と言うか80まで生きるようになったなら成人年齢を引き上げ始めても良いんじゃないのかな…。しかし、ついつい色々と考えてはしまうな…。
この子にとってはやっぱり俺はおじさんな年齢だろうし、結局俺の方が早く死ぬかもしれないって言う恐怖は埋められないだろう。
もしかしたら同じタイミングで死ねるなら…なんて一瞬考えたのかもしれない。
そうだな…。結婚とか考えると、無駄にそう言うことまで考えてしまうものだな…。
好きな人と少しでも長く一緒に…。
それが叶えばどれだけ幸せなことか…。
「もう一つ、貴方の愛しい人は気になってる事があるんじゃない?
死んだら、この人はどこへ行ってしまうのだろう…って。
この世界の人たちは、死後は天上界へと至る。
その後何かしらのタイミングで記憶をリセットされ再び地上へ転生する。
だけど、この世界の住人ではない彼はどうなのか?
異世界からこの世界に転生した人間もいるけど、その魂は結局どこに居てどこからやってきたのか…。
そう言う事考えたら不安になっちゃったんだよね?」
「あぁ…。前のボスに会えた時は正直安心した。
死んでも会える可能性があるんだって思ったらさ…。だけど…ご主人様は…この世界の人間じゃない。
もしも、ご主人様が先に死んで…、そのあとオレが死んで…、天上界をいくら探しても会えなかったらって考えたら…!」
ブワッと大粒の涙を流して泣き出す盗賊ちゃん。
こんなに愛してもらえてる事は素直に嬉しいものだけど…、俺の考えすぎるクセが移り始めてるのかもだな…。
「大丈夫。大丈夫だよ。死んだ瞬間俺の世界に引き戻されそうになっても、この世界の神様やら天使長さんにお願いすりゃまぁなんとかなるだろう。もう、自分の世界に帰る気もないしね。
大丈夫。俺はずっと君のそばにいるよ。
安心して?」
なでなでと可愛らしい頭を撫でてやる。
ほんと、こんなにも深く愛してもらえるなんてな。
とても心地良いものだな。
「それにしても、今回起こった事件。
色々と気がかりな点があるよね~。
魔物の力を込めた石で、人間を変質させる…か。
色々と恐ろしい話だね。」
「その力を配り歩いてる売人のような奴がいるってのが一番怖い話だな。
この街に潜んでるって言うなら早めに元を断たないと…。」
すると突然、雷でも落ちたようなズゥゥゥウンッ!!と言う音と衝撃が城に響いた。
「な、なんだ!?研究室あたりの方か?
まさか、俺が預けておいたライトニングクォーツが暴走したのか!?アレは俺以外には力を発現させる事すら叶わないはずだが…。」
「とりあえず急ごうご主人様!まさかとは思うけど、昨日のやつみたいなのがご主人様を狙って城に攻め込んできたのかもしれない…!
ほら、何かしらの業者に紛れて城に侵入して…てのは盗賊でもよくやる手口だし…。」
俺たちは音のした研究室の方へと急ぎ向かう。
案の定、研究室からはもうもうと煙が立ち込めていた。
先に現場に到着していた戦士ちゃん、妹ちゃん、勇者ちゃんが研究室のみんなを避難させてくれていたようだ。
「大賢者様!よくぞご無事で…。
なんとか此方だけは守り通せました。お返し致します。」
「ライトニングクォーツ…、てことはこの状況は俺のこれを使おうとして起こったやつではないと言う事か…。」
「はい…。貴方達が名付けた俗称で言うならば…オーガノイドに侵入されました…。
オーガノイドは貴方のアクセサリーに関する研究資料を盗んでついさっき逃亡を…。
いま、ドラゴスケイルの皆様がその自慢の足で追ってくれています…。」
「もしかして君…怪我してるのか?その状態でよく、守ってくれた。
あとは任せて。ゆっくり休んでいて。」
俺は盗賊ちゃんに彼女の治療をお願いし、俺たちの城に侵入したオーガノイドを勇者ちゃん達と一緒に追うことにした。
「まさか、昨日の今日で城にまで侵入されるなんてな…。敵の目的は俺自身ではなく、俺の力って事なのか…?」
「大賢者の作り出した技術や技を盗もうとする賊…か。これは結構厄介な奴が敵として現れ始めてる気がするぞ!」
\アイヨー!アイヨー!/
『テキヲジョウモンノハシデアシドメスルコトニセイコウ シキュウオウエンモトム』
「よし、でかしたぜオッサンズ!
勇者ちゃん、行くよ!敵は城門の橋だ!」
「わかった!おっさん達がやられる前に急ごう!」
だが、俺は走ると息切れしかねん。
なので、とりあえず変身しておく事にした。
「おぉ!旦那様!早くて助かったぜ!なんとか城門に設置しておいた賊用のトラップで足止めは出来たんだが…。このまま押さえつけとくのは無理そうなんでな。あとは頼むぜ!」
俺達はオッサンズを後ろに下がらせ剣を構える。
「おまたせ賢者。私たちも加勢するよ!」
「はわわっ!敵さんのあの姿…、賢者様が初めてライトニングクォーツの力を使った時にも似ています…。まさか…雷虎の力を纏った鬼人…?」
「雷虎…。なるほど、確かにあの腕とか足はどことなく虎とかの獣に近い見た目だな…。
来るぞみんな!構えて!」
敵が自分を捉えていたワイヤートラップを雷で焼き切り、こっちへ飛んでもない速度で迫ってくる。
「自分と似たような力を敵に回すと、自分の恐ろしさがよくわかるな…!なんつー速さだよ!」
「私たちみたいに心眼のスキルが開眼してなかったら…。」
「まず、この速度に対して攻撃をするのは不可能だな!!ハアァァッ!!」
俺はかわすので精一杯だった敵の動きを2人は見事に見切り、斬撃を加えていく。
勇者ちゃんは勿論だが、戦士ちゃんは確実にその戦闘センスを大幅に磨き上げつつあった。
そして、2人の背後から炎の魔法で加速させた雷を纏った拳を敵めがけて乱打で叩き込む妹ちゃん。
いつの間にそんな技を…。
皆の攻撃は結構効いているようだ。
「よし、久々にこいつ、使ってみるか!」
サソリのアクセのついた水晶を発動させ足にアンクレットを展開させる。
雷の力を一点に集中させ、強力な飛び蹴りをお見舞いしようと飛び上がる。
「喰らいな!雷蛇ァァァァアキイィィィイック!!」
だが、俺の蹴りは敵には届かなかった。
当たる直前で黒いフードを被った何者かが俺の足を受け止めた上に、蹴りの力を相殺して無効化したのだ。
俺はすぐさまその何者かから距離を取る。
「ふう…。危ない危ない。せっかく盗んだ研究資料が奪い返される所でした。
行きますよ。実験的に貴方に託した石まで破壊されては困りますからね。
大賢者様。またお会いしましょう。
次にお会いする時は私たちが作り出した最高傑作でお相手させていただきますので。
貴方の作り出した力の資料、是非とも参考にさせていただきますよ。では、御機嫌よう。」
「待て!」
オーガノイドとその何者かは俺たちの前から転移門のような魔法で姿を消した。
「くそ…逃したか…。そして敵の目的は…やはり俺の作り出した力…って事なのか…?」
「これは…まずい事になってきたかもだ。
大賢者の力は、それこそ国家防衛の要とも言えるレベルの力だし戦争に用いれば国一つ簡単に掌握できるレベルだ。
完全コピーとまでは行かないだろうが、似たようなものを作り出せたとしたら…。まずい事になりそうだな…。」
俺は変身を解除する。
しかし…、敵が雷帝のような力を手に入れてきたら…確かに色々とやばそうだな。
今ならまだ勝てる見込みはあるだろう。
だが、相手がもし俺と完全に同等なレベルの力を行使できるようになったら…?
考えただけでゾッとする…。
堕天使がかつて行ったような事が、別の人間の手で行われる恐れがあるって事だ。
そんなことは…絶対にさせるわけにはいかない!
「ひとまず、魔女さんとギルマスちゃんに報告しよう。全く…休む暇くらいくれよってんだ。」
新たな敵の足音は、一歩一歩確実に近づき始めていたのであった。
その間、盗賊ちゃんはじーっと俺の作業をワクワクしながら見ていた。
かわゆい。
めたくそかわゆい。
「手が早いなぁ。そのスタイルのものは作り慣れてるからか?」
「そうだね。実際すごく作りやすいしね~。
革紐はこうやって四つ編みで編んでるだけだし、その間に石を通してるだけだから見た目よりは意外と簡単に編めるんだよ。」
「でもやっぱ、色使いのセンスが良いよなぁ~。
ご主人様が作ってくれたものは全部お気に入りだ。
なんていうか…愛されてるってすごく感じるから。これは…色合い的にオレ用?」
「ん、そうだよー。サイズ調整するから腕出して~?」
はぁ~いっと言って可愛く細い腕を出してきたので、腕に合わせて長さを調節し完成させる。
「わぁ~いっ♪かわいいなぁ~!ありがとなご主人様♪大切にするねっ♪」
「サイズ合わなくなったりしたらまた作り直すから気楽に言えよ~?盗賊ちゃんは成長期だろうしすぐに大きくなるだろうしね。」
こうやって好きな人に作るのってまた楽しいなぁ~…。
この喜ぶ顔がまた可愛くて癒される…。
はぁ…かわゆ…。
「なぁご主人様、今日はどこかでかけるのか~?」
「うんにゃ、あんまり考えてはなかったな。
天気も良いし目的もなくフラフラ歩きまわるのも息抜きにはなりそうだよね。」
「どっか行くなら付き合うぞっ!」
「こういうイチャイチャするのも嫌いじゃ無いけどね~てや~っ」
むぎゅーっと盗賊ちゃんを抱きしめる。
やぁんっ♪と可愛く身悶えるのもまたかわいい…。
「ご主人様…、我慢できなくなったらそれ以上のことしても…良いんだぞ?」
「例えば?」
「脱がせたり…触ったり…?」
とろんとした目でおねだりモードになって来ている…。
これ以上はお互いのためにも良くないな…。
「どうしてもってなったら、考えておくよ…。
ごめんごめん、やりすぎたね。」
「むぅ…。オレは良いのにぃ…。ご主人様がオレのこと大切に思ってくれてるのもわかるけど、オレはご主人様になら割と何されても許せるし嬉しいぞ?」
「一緒にお風呂入るだけでもあんなにドキドキしたからな…。それ以上はもっと心の準備をさせてくれ…。
なんというか…改めてじっくり裸を見て肌に触れて、キスまでしたら…流石に俺もドキドキした。
正直、子どもだと思ってたけどじっくり見るとちゃんと大人になって来ているというか…。
何いってんだ俺…。」
「んふふ~♪これからは毎日堪能させてあげるからなっ?んーっ♪」
ぎゅーっと抱きつかれ軽くキスをされる。
しかし、アレだな。
なんかさっきから2人ほど気配を感じる…。
『はわぁ…。だいけんじゃととーぞく…。すごくラブラブなの…。』
『2人はいつもあんな感じなのよ?微笑ましいわよね~♪あ、気付かれた!もすこし、神気抑えるわよ!』
「おい、2人とも。常に居るのはわかっていたけどぶっちゃけどの辺から見てた?」
「うおぅっ!?龍皇さんに蛟さんっ!?居たのかよ!?あ、守護神みたいなものだから常に居るのか…。」
俺らのツッコミに顔を見合わせる2人。
『きのうのおふろあたりから見てた。』
『んふふ~♪ほーーんと、ラブラブで可愛らしいったらありゃしないんだから♪』
「実体化してなくてもこうやって近くで見られてると思うとたしかに恥ずかしい物はあるな…。」
『だって、居るの意識させたら見せつけてもらえないじゃない?2人のラブラブ具合見るの好きだもの。』
龍ちゃんが実体化して俺の隣に座ってくる。
「まぁ、私もようやくあなたに触れられる肉体を得たんだからもっとあなたに触れたり話したりしても良いんだろうけどね。
本当は私もあなたとラブラブしたいわよ…。ただ、神として人を愛する貴方の邪魔は流石にしたくないの。
逆に、貴方が天命を全うすれば私は嫌でも貴方の側に居れるしね。」
「そっか…寿命…。そう言えば、ご主人様の世界の人間は一般的に何歳まで生きるもんなんだ?」
「平均して80歳かな。早くても60までは生きると思うけども…。」
この世界の人間は成人年齢が早い。
そういうところから考えると、案外短いのかもだな…。
「そっか…。こっちの人間は今までなら長くても60歳だな。一般的には50歳も生きてればもう立派な年寄りだ。
ただ、それは歯科治療の技術や食料的な問題が大きかったっていうのが最近わかってきて、今は80歳くらいまで生きれるようになりつつあるって結果にはなってる。」
「こっちも数百年前までは似たような感じだな。
歯を削ったり引っこ抜いたり、穴を埋めるための技術と、麻酔に関する技術が発展して行ったのと、食材を調理する道具の進化によって様々な栄養価のある食事ができるようになったことから、人の寿命は伸びたと言われてるな。
あとは筋肉を鍛えるためのトレーニング施設や器具が増えたりした事で、肉体を衰えさせなければそれだけ長生きできるようになったって感じかな?」
と言うか80まで生きるようになったなら成人年齢を引き上げ始めても良いんじゃないのかな…。しかし、ついつい色々と考えてはしまうな…。
この子にとってはやっぱり俺はおじさんな年齢だろうし、結局俺の方が早く死ぬかもしれないって言う恐怖は埋められないだろう。
もしかしたら同じタイミングで死ねるなら…なんて一瞬考えたのかもしれない。
そうだな…。結婚とか考えると、無駄にそう言うことまで考えてしまうものだな…。
好きな人と少しでも長く一緒に…。
それが叶えばどれだけ幸せなことか…。
「もう一つ、貴方の愛しい人は気になってる事があるんじゃない?
死んだら、この人はどこへ行ってしまうのだろう…って。
この世界の人たちは、死後は天上界へと至る。
その後何かしらのタイミングで記憶をリセットされ再び地上へ転生する。
だけど、この世界の住人ではない彼はどうなのか?
異世界からこの世界に転生した人間もいるけど、その魂は結局どこに居てどこからやってきたのか…。
そう言う事考えたら不安になっちゃったんだよね?」
「あぁ…。前のボスに会えた時は正直安心した。
死んでも会える可能性があるんだって思ったらさ…。だけど…ご主人様は…この世界の人間じゃない。
もしも、ご主人様が先に死んで…、そのあとオレが死んで…、天上界をいくら探しても会えなかったらって考えたら…!」
ブワッと大粒の涙を流して泣き出す盗賊ちゃん。
こんなに愛してもらえてる事は素直に嬉しいものだけど…、俺の考えすぎるクセが移り始めてるのかもだな…。
「大丈夫。大丈夫だよ。死んだ瞬間俺の世界に引き戻されそうになっても、この世界の神様やら天使長さんにお願いすりゃまぁなんとかなるだろう。もう、自分の世界に帰る気もないしね。
大丈夫。俺はずっと君のそばにいるよ。
安心して?」
なでなでと可愛らしい頭を撫でてやる。
ほんと、こんなにも深く愛してもらえるなんてな。
とても心地良いものだな。
「それにしても、今回起こった事件。
色々と気がかりな点があるよね~。
魔物の力を込めた石で、人間を変質させる…か。
色々と恐ろしい話だね。」
「その力を配り歩いてる売人のような奴がいるってのが一番怖い話だな。
この街に潜んでるって言うなら早めに元を断たないと…。」
すると突然、雷でも落ちたようなズゥゥゥウンッ!!と言う音と衝撃が城に響いた。
「な、なんだ!?研究室あたりの方か?
まさか、俺が預けておいたライトニングクォーツが暴走したのか!?アレは俺以外には力を発現させる事すら叶わないはずだが…。」
「とりあえず急ごうご主人様!まさかとは思うけど、昨日のやつみたいなのがご主人様を狙って城に攻め込んできたのかもしれない…!
ほら、何かしらの業者に紛れて城に侵入して…てのは盗賊でもよくやる手口だし…。」
俺たちは音のした研究室の方へと急ぎ向かう。
案の定、研究室からはもうもうと煙が立ち込めていた。
先に現場に到着していた戦士ちゃん、妹ちゃん、勇者ちゃんが研究室のみんなを避難させてくれていたようだ。
「大賢者様!よくぞご無事で…。
なんとか此方だけは守り通せました。お返し致します。」
「ライトニングクォーツ…、てことはこの状況は俺のこれを使おうとして起こったやつではないと言う事か…。」
「はい…。貴方達が名付けた俗称で言うならば…オーガノイドに侵入されました…。
オーガノイドは貴方のアクセサリーに関する研究資料を盗んでついさっき逃亡を…。
いま、ドラゴスケイルの皆様がその自慢の足で追ってくれています…。」
「もしかして君…怪我してるのか?その状態でよく、守ってくれた。
あとは任せて。ゆっくり休んでいて。」
俺は盗賊ちゃんに彼女の治療をお願いし、俺たちの城に侵入したオーガノイドを勇者ちゃん達と一緒に追うことにした。
「まさか、昨日の今日で城にまで侵入されるなんてな…。敵の目的は俺自身ではなく、俺の力って事なのか…?」
「大賢者の作り出した技術や技を盗もうとする賊…か。これは結構厄介な奴が敵として現れ始めてる気がするぞ!」
\アイヨー!アイヨー!/
『テキヲジョウモンノハシデアシドメスルコトニセイコウ シキュウオウエンモトム』
「よし、でかしたぜオッサンズ!
勇者ちゃん、行くよ!敵は城門の橋だ!」
「わかった!おっさん達がやられる前に急ごう!」
だが、俺は走ると息切れしかねん。
なので、とりあえず変身しておく事にした。
「おぉ!旦那様!早くて助かったぜ!なんとか城門に設置しておいた賊用のトラップで足止めは出来たんだが…。このまま押さえつけとくのは無理そうなんでな。あとは頼むぜ!」
俺達はオッサンズを後ろに下がらせ剣を構える。
「おまたせ賢者。私たちも加勢するよ!」
「はわわっ!敵さんのあの姿…、賢者様が初めてライトニングクォーツの力を使った時にも似ています…。まさか…雷虎の力を纏った鬼人…?」
「雷虎…。なるほど、確かにあの腕とか足はどことなく虎とかの獣に近い見た目だな…。
来るぞみんな!構えて!」
敵が自分を捉えていたワイヤートラップを雷で焼き切り、こっちへ飛んでもない速度で迫ってくる。
「自分と似たような力を敵に回すと、自分の恐ろしさがよくわかるな…!なんつー速さだよ!」
「私たちみたいに心眼のスキルが開眼してなかったら…。」
「まず、この速度に対して攻撃をするのは不可能だな!!ハアァァッ!!」
俺はかわすので精一杯だった敵の動きを2人は見事に見切り、斬撃を加えていく。
勇者ちゃんは勿論だが、戦士ちゃんは確実にその戦闘センスを大幅に磨き上げつつあった。
そして、2人の背後から炎の魔法で加速させた雷を纏った拳を敵めがけて乱打で叩き込む妹ちゃん。
いつの間にそんな技を…。
皆の攻撃は結構効いているようだ。
「よし、久々にこいつ、使ってみるか!」
サソリのアクセのついた水晶を発動させ足にアンクレットを展開させる。
雷の力を一点に集中させ、強力な飛び蹴りをお見舞いしようと飛び上がる。
「喰らいな!雷蛇ァァァァアキイィィィイック!!」
だが、俺の蹴りは敵には届かなかった。
当たる直前で黒いフードを被った何者かが俺の足を受け止めた上に、蹴りの力を相殺して無効化したのだ。
俺はすぐさまその何者かから距離を取る。
「ふう…。危ない危ない。せっかく盗んだ研究資料が奪い返される所でした。
行きますよ。実験的に貴方に託した石まで破壊されては困りますからね。
大賢者様。またお会いしましょう。
次にお会いする時は私たちが作り出した最高傑作でお相手させていただきますので。
貴方の作り出した力の資料、是非とも参考にさせていただきますよ。では、御機嫌よう。」
「待て!」
オーガノイドとその何者かは俺たちの前から転移門のような魔法で姿を消した。
「くそ…逃したか…。そして敵の目的は…やはり俺の作り出した力…って事なのか…?」
「これは…まずい事になってきたかもだ。
大賢者の力は、それこそ国家防衛の要とも言えるレベルの力だし戦争に用いれば国一つ簡単に掌握できるレベルだ。
完全コピーとまでは行かないだろうが、似たようなものを作り出せたとしたら…。まずい事になりそうだな…。」
俺は変身を解除する。
しかし…、敵が雷帝のような力を手に入れてきたら…確かに色々とやばそうだな。
今ならまだ勝てる見込みはあるだろう。
だが、相手がもし俺と完全に同等なレベルの力を行使できるようになったら…?
考えただけでゾッとする…。
堕天使がかつて行ったような事が、別の人間の手で行われる恐れがあるって事だ。
そんなことは…絶対にさせるわけにはいかない!
「ひとまず、魔女さんとギルマスちゃんに報告しよう。全く…休む暇くらいくれよってんだ。」
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転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
婚約破棄された宰相です。 正直、婚約者も宰相も辞めたかったので丁度よかったです
鍛高譚
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内容紹介
「婚約破棄だ! そして宰相もクビだ!」
王宮の舞踏会で突然そう宣言したのは、女性問題を繰り返す問題王太子ユリウス。
婚約者であり王国宰相でもあるレティシアは、静かに答えた。
「かしこまりました」
――正直、本当に辞めたかったので。
これまで王太子の女性問題の後始末、慰謝料交渉、教会対応、社交界の火消し……
すべて押し付けられていたレティシアは、婚約も宰相職もあっさり辞任。
そしてその瞬間――
王宮が止まった。
料理人が動かない。
書類が処理されない。
伝令がいない。
ついにはトイレの汚物回収まで止まり、王宮は大混乱。
さらに王太子の新たな女性問題が発覚し、教会は激怒。
噂は王都中に広がり、王宮は完全に統治不能に。
そしてついに――
教会・貴族・王家が下した決断は、
「王太子廃嫡」
そして。
「レティシア、女王即位」
婚約破棄して宰相をクビにした結果、
王宮を止めてしまった元王太子の末路とは――?
これは、婚約破棄された宰相が女王になるまでの
完全自業自得ざまぁ物語。
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