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隠しきれないもの
土曜日の朝
しおりを挟む起きたら、隣に春ちゃんが寝てて。
優はもう仕事に行ってて。慌てて、下半身を見たら、しっかりズボンを履いていて。
昨日のことは夢なのかもしれないと思ったけれど、鮮明に思い出した恥ずかしい気持ちに、あたふたしていた。
そしたら、隣で寝ていたはずの春ちゃんが起きて、微睡むように、綺麗な顔で「おはよう」って。
春ちゃん、今日は休みだから、寝てるんだ……。
寝てる春ちゃん、初めて見たかも……そう思って、わたしも2度寝しようと目を閉じかけたとき、春ちゃんがガバッと起き上がった。
「……っあ! いま何時?!」
言いつつ、自分のスマホで時間を確認する。
「んあー、しまった! 咲、起きるよ!準備して!」
「えぇ……なんで」
今日は土曜日。春ちゃんもわたしも学校休みのはずなのに、なんでそんなに急いでいるのか……。
「病院! 優が待ってる」
「なんで……やだよ……」
来週の土曜日って約束だったじゃん……。
わたしは頭から毛布を被ると、布団に潜り込んだ。春ちゃんがその布団を引き剥がす。
「やだー!」
力いっぱい、毛布を自分の方へ引っ張る。
「昨日、優と俺で、咲のお腹の調子を診た。覚えてる?」
覚えているどころか、忘れたくても忘れられない。恥ずかしさがもう一度湧き上がって、顔が赤くなった。
何故か、あそこもむずむずと動き出す。
春ちゃんはバタバタとリビングと部屋を行ったり来たりして、病院へ行く準備を整えた。
「咲、ほら、お着替えして~」
毛布に潜り込むわたしに、春ちゃんが声をかけた。
「やだ。着替えられないの。春ちゃん着替えさせて」
春ちゃんを最大限まで困らせて、病院に行かない作戦を取ろうとした。
「なーに赤ちゃんみたいなこと言ってんの~。怒られるよ、優に……。あと、早乙女先生」
サオトメ先生……。昨日、眠りに落ちる前に薄らと聞いた名前だ。
「早乙女先生は怖いんだぞ…… 俺と優が震え上がるくらいに……」
言いながら、春ちゃんは生唾を飲み込んだ。
いつも、余裕たっぷりの春ちゃんと、冷静で怖いもの無さそうな優が震え上がるって……?
現に、春ちゃんの目が怯えていた。
相当怖いことが想像される。
「遅刻なんてしたら…………」
春ちゃんが、布団の外からそう言って、わたしの想像を掻き立てる。
顔も知らないサオトメ先生が、わたしと春ちゃんにガミガミ怒るのを想像したら、居てもたってもいられなくなった。
無言で毛布から出て、春ちゃんが用意した服に手を伸ばす。
その様子をみて、春ちゃんはにこっとわらった。
「着替えたら、すぐ出るよ」
そう言って春ちゃんは、先に玄関に向かって歩いていった。
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